第2話 相絶の美

お昼休みになると毎日のように、部活の勧誘が来るわけだが、さて、私はどうしようか。

運動は不得意。なので、文化部になるのだが、少しここで思い出語りでもしようか。


私は絵を描くことがコンプレックスだった。

毎週水曜日。母親が自宅で開いている絵画教室に参加していた。

幼馴染とそのお姉さん、そして私の妹の4人で描いてた。

私は別に凡人だった。

その空間にいる私以外の人間が天才だった。

『天才』って言葉が凶器になるのは知ってる。だけどそう言わせてよ。

幼馴染の家庭は芸術系じゃなかった。なんで逆じゃなかったんだろう、そっちの方がしっくりくるだろうにと思った。

小学4年生ぐらいの頃、絵がぱったり描けなくなった。

休み時間に自由帳に落書きするようなこともできなくなった。

何が美しいとされているのかわからないのに、水曜日に広がるスケッチブックは、私以外確かに美しかった。

そのまま中学生になった。文化部は吹奏楽部、科学部、そして美術部しかなかった。

美術部じゃない文化部に仮入部した。

科学部の副部長、サクラ先輩は教えてくれた。科学には答えがある、と。

まだ人間が知らないものもあるけれど、答えは世界ができた瞬間、いやできる前から永遠にそこにある。

優しいと思った。

他人も、自分も、誰の評価も必要としない美しさ、根拠のある、絶対的な美しさだと思った。


科学は私を遠くに連れ出してくれた。

そして遠くから見た絵は、驚いたことに案外悪くなかった。


それでもやっぱり、美術部に入るのは怖くて、私は、文芸部と科学部の仮入部に行くのだ。

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