第3話 ロッカー

文芸部の仮入部は、期間中毎日やっているらしい。よほど部員に困っているのだろう。きっと盛り上げも凄い違いない。

仮入部予定表を見た時のそんな感想には、もはや懐かしさまである。

「あ、こんにちは。今日は部長がいません…」

金髪。ヘッドホン。全然喋らん。

こっわ。この先輩こっわ。

「あ、このロッカーの中には過去の部誌が詰まってるよ」

ベコベコのロッカーをベコベコと叩く。

「学生運動の時にバリケードに使われたロッカーらしくて、裏に『田中先生出てけ』って書いてあるんだよね」

…田中ぁ。

何ももてなされない、ロッカーの自慢だけされた前代未聞の仮入部。


その日に私は入部届に名前を書くことになる。

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