第9話 はじめてのゼミ

 通常、研究室が決まり、最初のゼミが行われるのは大体3年生の2~3月くらい。そこから3年生が集められて研究室の説明や卒業間際の4年生から実験の引継ぎなどが行われる。


 それに対して森田研の最初のゼミは3年生の9月後半から。他の研究室と比べて約半年前倒しして行われる。圧倒的に早いため他の3年生に聞くと「もうゼミなの?」とびっくりされることになる。


 確かに早い。それと、半年早いということは「自分の時間がとられる」というのも半年早くなると言えるかもしれない。ゼミは週1回開かれるため、バイトや部活。友達と遊ぶなどのことが当然出来なくなる。他の研究室を選べばこの時期はまだ自由に自分の好きなことが出来るのだから。


 そこに関して私は時に不満は無かった。他の研究室に行けばまだ遊べるとかそういうことも感じなかった。もちろんゼミに行くのはメンドクサイと思わなかったわけではない。


 とにもかくにも森田研への合格者が集められゼミが行われることになった。


 合格者の合計は13名。教室に集められたメンバーはどこか見たことがあるような無いようなそんなメンツ。その中には彼も当然居た。初めましての人たちが一か所に集められた空間は何とも言えない感じがする。椅子に座ってじっと森田先生を待っていた。


 そして10分後くらいに森田先生が教室にやってくると早速ゼミが始まった。


「歴史」


 と聞くと身構えてしまうかもしれないが話はそこからじゃないと今後やる全ての意味が繋がってこなくなる。


 森田研は今年で出来て10年。今いる4年生は森田研10期生。そして今度研究室に入る私たちは森田研11期生になる。森田研究室は元々先に別の先生が開いていた研究室を引き継いだ形となっている。そして森田先生は元々大きな企業に勤めており、様々な縁があってここに来たとのことだった。


 現在、森田研に在籍している学生は博士課程3名、修士課程5名。そして4年生が13名、私達3年生が14名の合計35名。


 これが多いのか少ないのかは私には判断できない。何せ他を知らない。でも多分何となく多い方なのだろうというイメージだけは持っていた。


 そしてこれは全く知らなかったことなのだけれど森田先生は年齢的に退官、一般企業で言えば定年退職の時期が近づいていてそれが再来年とのこと。つまり私たちの後に入ってくる森田研12期生と共に大学を卒業となる。

 

やがて話は脱線と小話を挟みつつも私たちが今後やっていく実験班と実験内容について変わっていった。歴史の話の中で出てきたが先生は元々企業人であり、技術者である。そのため大学で行っている研究内容も先生がやっていた内容に関係していた。


 その実験内容は・・・と言ってその内容をつらつら書いたところで専門的過ぎて多分、全く分からないと思うのでイメージの話をすると、例えるなら研究室で行われている研究が「自動車」だったとすると、ある実験班は「エンジン」そしてある実験班は「ブレーキ」のような形になっている。


 隣の実験班は自分と全く違うことをしているというわけではなく、結局一つの同じものを部分で分けて実験をしていることになる。班は通常2人1組で行われ、卒論も2人で書くことになるが、内容によっては1人で全部行うこともある。


 実験内容に関しての細かい歴史や内容を少しだけ話し終えたところでゼミの予定時刻が来てしまった。


 今後決めなければならないのは自分がやりたい実験班の希望を出すこと。そのために必要な話を先生が順次していくという感じでゼミは今後も進行していくということらしい。


 そしてもう1つ、ゼミで重要なことを決めなければならないことがこの後待っていた。

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