第4話 演習後半戦
注意:各グループの生徒は名称の簡略化のために名前の先頭にアルファベットを付けています。(例:Aグループの男子生徒→A男子生徒)
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琥珀の会話を聞いていた真奈は琥珀に提案をしてきた。
真奈「琥珀さん、今からでも協力しませんか?」
琥珀「天坊に協力するなら構わんぞ」
真奈「分かりました、美紀も協力してくれる?」
美紀「うん、真奈がそう言うなら協力する」
真奈に続いて、美穂とあかりも真奈たちに同調した。
美穂「琥珀さん、私たちもよろしいですか?」
あかり「そろそろ限界なんですの、助けてくださる?」
琥珀「お主たちはまず天坊に謝ることから始めるんじゃな」
美穂「分かりましたわ」
あかり「はい・・・」
美穂とあかりは天也のもとに向かった。
それから琥珀は雄斗のことも誘った。
琥珀「雄斗はこっちのチームに来ないのか?」
雄斗「やっぱり俺はパスするわ、海斗のやつを抑えないといけないからな」
琥珀「それは残念じゃ」
これで天也の元に6人のメンバーが集結した。
美結は離れてしまったメンバーに怒っていた。
美結「別にいいわよ、勝手にしなさい!」
美結「私達だけで拠点を作って見せるわ」
それから1週間が経過し、天也達の拠点はさらに大きくなっていた。
やはり人手が増えたことで作業スピードが上がったからだろう。
さらに建物を石垣で覆いながら草をかぶせて視認性を下げたり、拠点付近に落とし穴や木製のトラップなどを設置した。
おかげで中隊規模の部隊が問題なく戦えるほどの立派な拠点に仕上がっている。
一方美結たちはようやく一軒建物を建てたものの、建物は粗末な木の板一枚でできたハリボテな上に、土嚢もバリケードもないため無防備な状態だった。
あきらかに拠点の完成度に差があるため美結は焦っている。
美結「なんで!こうもうまくいかないのよ!」
美結は悔しさのあまり、地面に物を投げつけた。
美結「この日のために遅くまで起きて勉強もしてたのに・・・」
美結は素行にやや問題があるものの、天性の努力家でもあった。
美結の現在の成績は学年2位であり、天也が入学しなければ学年1位をとるのは美結の方だった。
美結は幼い頃から厳しい両親に育てられ、あらゆる分野の1位を目指してきた。
それなのにぱっと出てきた庶民に負けたなどと言われれば一家の恥となってしまう。
天也に対する態度が単なる八つ当たりであることは、美結自身が一番わかっていた。
それでも秋葉家の一人娘として、負けるわけにはいかなかった。
美結「絶対にまけられないわ!」
美結は残された3人を説得し、拠点制作を急いだ。
そして演習も折り返し地点となり、ついに射撃演習が始まった。
美結たちの拠点は、天也たちの建てた拠点には及ばないまでも、葉っぱで視認性を下げ、粘土で自然の地形を再現するなど実用性に優れた立派な拠点となっていた。
美結たちは森で2週間という長い期間を過ごしたこともあり、すっかりサバイバル技術も身についている。
美結「あんたたち、あいつらはどうしてるかしら?」
海斗「1週間前から拠点が一切変わってねぇし、中で遊んでんじゃねぇか?」
雄斗「とりあえず俺たちはこの拠点を起点に、他のグループを倒していくか」
美結「そうね、天也たちにはせいぜいおとりになってもらうわ」
射撃演習が始まる時間となり、合図の信号弾が放たれた。
すると一斉に生徒たちが動き出し、激しい銃撃戦が行われた。
美結たちCグループにも数人の生徒達が来ており、天也達が建てた拠点が真っ先に狙われた。
やはり大きな拠点であるため、小規模な拠点よりも見つかりやすいという弱点があったからだろう。
生徒達が拠点の外壁付近に近づくと、一人の生徒が叫んだ。
「トラップにかかったの!助けて!」
どうやら一人の女子生徒がロープの罠にかかり、空中につるされていた。
すぐに仲間がロープをほどこうとしたが、解くのに夢中で茂みに隠れていた琥珀の存在に気付かなかった。
「覚悟するのじゃ!」
「ひ!」
琥珀は訓練用の木刀を生徒達に向けて振りかぶった。
あまりの勢いに生徒たちは地面に座り込み、腰を抜かしている。
今回の演習で使われている、武装には、特殊なセンサーがついており、攻撃を当てられた体の部位によって点数が変わる。
琥珀は木刀を振りかぶるのをやめて、一番得点の高い首にちょこんとあてた。
琥珀「なさけないのう・・・」
琥珀は少しかわいそうになり、拠点に来た生徒たちを返すことにした。
すると近くの茂みから天也が出てきた。
天也「よかったの?逃がしても」
天也「このまま何度も攻撃すれば、得点を稼げそうだけど」
琥珀「戦意を失ったものを、追い詰める必要はないわい」
琥珀「もう一度、茂みからチャンスを待つとするかのう」
琥珀の動きを美結たちは、こっそり見ていた。
美結「うそでしょ?一瞬で4人も撃退しちゃったわ」
雄斗「やっぱり刀使いでも戦術オートマタは強いもんだ」
美結「それもあるけど、なによりすごいのは隠密技術よ」
美結「琥珀はともかく、天也に至っては気配すらなかったわ」
雄斗「もしかすると実戦経験があるのかもしれないな」
美結が拠点に戻ると美結の取り巻きをしていた少女が話しかけてきた。
彼女は桜といって、代々美結の家に使えるメイドの一族の一人だった。
桜「お嬢様ご無事でしたか?」
美結「えぇ、特に奇襲を受けることもなかったわ」
美結「桜はカモフラージュ用の装備は出来たの?」
桜「はい、お嬢様の要望通り、装備を葉っぱなどで覆いました」
美結「上出来だわ、さすがは優秀なメイドね」
桜「ありがとうございます」
美結「この装備で他の奴らの拠点を攻めるわよ」
美結たちは日が沈むと同時に、暗闇の中に消えてしまった。
一方天也達は一度目の襲撃から、2度ほど襲撃を受けたが天也と琥珀が協力して、順調に撃退していた。
琥珀「大漁、大漁!まるで網にかかった魚じゃのう」
天也「油断しないでよ琥珀、銃撃演習もまだ初日なんだから」
それから2日、3日と経ってくると、他の生徒たちが罠に慣れてきてしまい、初日ほどはポイントを稼げなくなっていた。
A男子生徒「あっちに行ったぞ!」
A男子生徒2「あの庶民だけは逃がしたらダメだ!」
やがて天也と琥珀は拠点まで追い詰められると、事前に準備していたプランBを実行した。
天也「真奈さんお願いします」
真奈「分かりました、美紀行こう?」
美紀「了解」
真奈と美紀は拠点で密かに作っていた、ある乗り物を動かした。
A男子生徒「なんだあれ!?なにを作ったんだ!?」
A男子生徒2「あれは戦車だ!逃げろ!」
男子生徒の言う通り、目の前には戦車が動いていた。
この戦車は1週間拠点に引きこもって完成させた木製の戦車で、動力は手押しである。
二人がかりでようやく動かせる代物だが、それでも大半の攻撃から身を守れる。
戦車を動かす担当は美穂とあかりで真奈と美紀は中から銃撃をする担当であった。
真奈と美紀は装甲の隙間から外にいる生徒たちを次々と撃っていった。
その後一通り撃退し終えると、拠点の中に帰っていった。
すると中から汗だくとなった、4人が出てきた。
真奈「この中本当に暑い・・・」
美紀「お風呂入りたい」
美穂「ぜぇぜぇ、終わりましたの・・・?」
あかり「そのようですわね・・・」
すると琥珀が4人にお風呂の準備が出来たことを伝えた。
琥珀「お疲れ様じゃ、風呂を沸かしてやったから入るがよい」
真奈「お風呂があるんですか!?」
琥珀「あるぞ?」
真奈「材料とかは・・・」
琥珀「この前戦車を作った時に出来た失敗作があったじゃろ?」
真奈「あぁ、あれですか・・・」
実は今の戦車は2代目であり、1代目の戦車は箱のサイズを大きくしすぎてしまったせいで、あまりにも遅い戦車が出来てしまった。
これでは演習で使い物にならないと、戦車の処分に困っていたのである。
琥珀「あれを天坊とわしで浴槽に改造したんじゃ」
真奈「なるほど・・・」
琥珀「ではゆくぞ!」
真奈「はい!」
琥珀は真奈の手を引きお風呂場に向かった。
お風呂場では女子5人でくつろいでいた。
浴槽は全員が入れるほど広く、真奈たちはよくこんな大きな戦車を作ったものだと感心していた。
すると真奈が琥珀に話しかけてきた。
真奈「琥珀さんと天也さんはどこで知り合ったんですか?」
琥珀「実は天也とはここ最近知り合った仲なんじゃ」
真奈「そうなんですか?ずいぶんと仲がいいので、てっきりお二人は親密な関係だと思いました。」
琥珀「真奈にはわしの過去を話してもいいかのう」
琥珀は真奈に自分の過去について話し出した。
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