第2話 琥珀との出会い
三大名家はそれぞれ各地方に勢力を持っている。
天也の生まれた
そして天野家の他に京都に本拠地を持ち、関西地方を支配している
そして広島を本拠地とし中国・四国地方を支配している
天也は天道家が運営している兵士の養成所である天道学園で講師をしていた義父の拓郎の伝手を借りて、最先端の兵士養成所である天道学園に入学することが出来た。
本来天道学園は貴族や有力な士族の子供が通う学園なのだが、入学試験をほぼ満点で突破した能力に免じて天也は入学を許されたのである。
天也が入学して早数か月、天也はいまだに学園に馴染めていなかった。
やはり貴族たちから見ると、天也が黒木家に養子として引き取られた庶民であるという認識は受け入れられていないようだ。
天也は誰かとペアを組む必要のある授業のために、クラスの人たちに声をかけていた。
だが帰ってくる返事はどれも心無いものだ。
天也がある女生徒に話しかければ、睨みつけられる。
天也「良ければペアを組んでいただけませんか?」
女子生徒「庶民と組むわけないでしょ?他をあたりなさい」
またペアを組みそこねた男子生徒には、舌打ちをされた。
天也「僕と組んで・・」
男子生徒「ちっ!・・・近づくな庶民の分際で」
天也は成果が出ないことに、困り果てていた。
天也「まずいな・・・このままじゃ進級できないんだけど」
ペアを組む授業は5組のペアを一つのグループとして、1か月にわたってクラス合同で軍事演習を行う授業だ。
この授業は必須科目であるため、このままペアを組めずにいると進級に必要な単位が足りずに留年となってしまう。
このクラスは合計で41人と、どうしても一人余ってしまう。
今回天也はその残された一人として選ばれてしまった。
それから時間が経ち、授業の参加締め切りの日まで残り数日となった。
天也は最後の頼みの綱である義父の拓郎を訪ねていた。
拓郎は普段数学を教えていてこの授業の担当ではないのだが、この学園の卒業生というのもありそこそこ顔が広い。
天也「なんとかならない?」
拓郎「そうだな・・・」
拓郎はしばらく考え込むと、何かを思いついたようだった。
拓郎「そうだ!戦術オートマタと組むのはどうかな?」
天也「戦術オートマタ?」
拓郎「そう、この学園には戦術オートマタを教育するための施設があるんだよね」
拓郎「天也が受ける授業はこの学園の生徒であればだれでもいいんでしょ?」
天也「特に規定はないね」
天也がそう言うと拓郎は立ち上がり、天也をある校舎へ案内した。
中に入るとそこには武装した少女たちが、教室内で談笑している。
拓郎はたまたま近くを通りかかった赤髪の少女に話しかけた。
少女をよく見ると背中にはサブマシンガンを背負っている。
拓郎「ねぇ君、
少女「黒木先生ですか、松野先生はさっき授業が終わったので、今は職員室にいると思いますよ」
少女に言われた通り、職員室に向かうと黒髪で長身のきれいな女性がパソコンで何かを作成していた。
女性が机に置いていた名札には
拓郎「松野先生、今大丈夫?」
松野「黒木せぇんせ~い、助けてくださ~い」
松野「全然、授業資料が作り終わらないんですよぉ」
拓郎「今は仕事中だよ?生徒の前でその砕けた口調は松野先生のイメージが崩れるんじゃ・・・」
松野は天也の姿を確認すると、人が変わったように態度を変えた。
どうやら先ほどの態度が素のようで、今はキリっとした態度をしている。
松野「黒木先生、今日はどうされましたか?」
拓郎「松野先生が受け持っている生徒を一人貸してほしいんだけどいいかな」
松野「戦術オートマタを貸すとなると、月家が攻めてきたんですか?」
拓郎「違うよ、軍事科に軍事演習の授業があるでしょ?」
松野「ペアを組んで実践的な訓練を行う授業ですね」
すると拓郎は天也を自分の前に出して紹介した。
拓郎「おっと、紹介し忘れたけどこの子はうちの息子の天也だよ」
松野「息子さん?黒木先生の家系は女性しか生まれないのでは・・・」
拓郎「養子だよ養子、ちょっと事情があってうちの養子になったんだ」
松野「なるほど、それで天也さんがどうかされましたか?」
拓郎「それがね、この学園って貴族の子が多いでしょ?」
拓郎「そしたら、天也と組んでくれる人が居なくてね」
松野「あぁ、なんとなく理解しました」
松野は一度パソコンを閉じて、立ち上がった。
松野「付いてきてください」
その後松野に付いていくと、戦術オートマタのいるクラスに案内された。
教室の扉の上にあったクラスの札には6ーEクラスと書かれている。
そこには4~5人ほどの少女たちがいて、全員が武装をしている。
松野「この子たちは比較的人間と能力が変わらないので、授業に出ても問題ないと思います」
天也は少女達を見ていると、一人だけ端の方で本を読んでいる少女がいた。
天也は少女に近づき、自己紹介をした。
天也「僕は黒木天也っていうんだ、君の名前を教えてくれるかな?」
少女はぱたんと本を閉じて、独特な口調で話し出した。
琥珀「わしは琥珀という名じゃ、わしのような型落ちより他の戦術オートマタを選ぶがよい」
天也「型落ち?」
琥珀「わしの武装を見れば分かるわい」
琥珀の足元には桜の模様が描かれたさやに納まった刀と金属製の弓が置かれている。
琥珀「わしは大昔の武器しか扱えん型落ちの戦術オートマタじゃ」
琥珀「そこにおる奴らは、ちゃんとした銃を扱える」
琥珀「わしよりもそやつらのほうが天也の役に立つわい」
琥珀がそう言うと、後ろから松野が近づいてきた。
松野「琥珀さんですか、その子は身体能力に優れていますが銃を扱えません」
松野「琥珀さんが優秀なのもあり卒業までの筆記の単位は取れていますが、出撃をしたときにもらえる単位が無くて1年留年しているんです。」
松野「どうも刀と弓では役に立たないと、誰も琥珀さんを要請してくれないんですよね」
松野が言うには、戦術オートマタは卒業のために何回か出撃する必要があるらしい。
この出撃は戦術オートマタとしての適性を図るもので、免許でいう仮免のような扱いである。
そのため後方での支援砲撃や、前線の兵士への物資の運搬など裏方の仕事が主な業務である。
通常出撃要請は現場の兵士たちが出しているが、琥珀はこれまで一度も呼ばれなかったそうだ。
松野「琥珀さんは現在13歳で、本来ならばとっくに初等部を卒業している年齢です」
松野「単位は足りているので、これから出撃任務をいくつかこなしていけば今年中に卒業できます」
松野「私としても琥珀さんは優秀なオートマタだと思っているので、実力が認められれば良いなと思っているのですが・・・」
琥珀「松野先生の言う通りじゃ、わしのことなど放っておけ」
琥珀は強がっていながらもとても悲しげな表情をしていた。
きっとこれまで周りの人たちから避けられ、一人孤独に生きてきたのかもしれない。
天也は琥珀の姿を天野家にいたときの自分の姿と重ねていた。
天也も天野家では孤立していて、母の美咲だけが心の支えだった。
あの時は姉の由良や黒木家の人たちがいたからこそ、こうして立ち直ることが出来た。
もしも母が助かる希望が無ければ、今の琥珀のようになっていたのかもしれない。
さらに天也は幼い頃に母と交わしたある約束を思い出していた。
ーーーーーーーー
これは天也が5歳の頃の記憶だ。
当時から天也への風当たりは強く、天也は母の美咲と一緒に屋敷の離れにあった部屋で暮らしていた。
天也は狭い部屋でよく美咲と一緒の部屋で寝ていた。
そんなある日、眠る前に美咲は天也とある約束をしたのだ。
美咲「天也は将来困っている人がいたら、必ず助けてあげなさい」
天也「なんで?」
美咲「いつの日かその行いが自分に返ってくるからよ」
美咲「お母さんも昔、戦争で親を失って困ってる子供を助けたことがあるの」
美咲「そしたらその子が偶然天野家のご子息様だったから、その子が当主になった
時に雇ってもらえたわ」
天也「それってお父さんのこと?」
美咲「ふふ、そうねあの人は戦争で家族を失って身寄りがなかった私を救ってくれたわ」
美咲「だから天也も、困ってる人を見つけたら必ず助けなさい」
天也「うん!」
ーーーーーーーーーー
天也は琥珀に向かって手を差し出した。
琥珀は突然差し出された手に驚いている。
天也「型落ちとか関係ない、僕は琥珀と組みたいんだ!」
琥珀「じゃがわしは足手まといにしかならんぞ?」
天也「そんなことないよ、琥珀が接近戦をしてくれるなら、これほど頼もしいものはないからね」
琥珀「そうか・・・」
すると琥珀は天也の手を握った。
天也にとってその時の琥珀の表情は今でも忘れられない。
これが天也と琥珀の最初の出会いだった。
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