第4章
第22話 どくどく独壇
「あれが、ドラゴンかぁ………カッケーけどこぇぇなマジで」
陣から少し離れて、カホウリンとドラゴンを眺める。
生で、ドラゴンを見たら、そのデカさと俊敏に動く迫力で、両足がプルプルするオレ。
「そう。恐ろしいわ………」
生唾を飲むカホウリン。
恐怖が、よみがえる。
「オレ、ってか騎士団長はアレに踏み潰されたんだな。そりゃあ死ぬわ」
そう言って、剣を見る。
「………」
騎士団長は、なにも言わない。
「シカトかよ、騎士団長」
苦笑いする。
「変ね。なんでしゃべらなくなったのかしら」
首を、かしげるカホウリン。
「ドラゴンの………血を」
グミちゃんが来て、なにかモゾモゾ言っている。
「グミちゃん、なにか言った?」
聞き返すと、
「じゅるり。いえ、こっちのことだから気にしないで」
なんだ?
ドラゴンを、食べたいのかな?
「そ………そうなんだね」
「それはそうと、こっちにドラゴンが来たら、ワタシが倒してイイ?」
ドラゴンを、倒したいと言うグミちゃん。
「うん。それはイイけど、なにか別のことを考えてないよね?」
あんなの食べて、大丈夫か?
「いいえ、全然!」
否定するグミちゃん。
「うん、気のせいならイイんだけど」
まぁ、止めないよ。
「騎士団長、ここでしたか」
屈強そうな男が、話しかけてくる。
「えーと」
だれだ?
「総大将、どうしまして?」
カホウリンが、助けてくれる。
「今が、絶好の機会かもしれませんぞ」
戦場を、指差す総大将。
「えっ? なにが!?」
ドラゴンですが、なにか。
「つまり、騎士団長を先頭に一気に敵の総大将バーンズを取るのです」
今、攻めこむべきと言う総大将。
「えっ、でもドラゴンに喰われるかも知れないんだよ?」
敵味方、みさかいなく食べているドラゴン。
今は、やめた方が。
「………ずいぶんと、怖じ気づいてしまわれたようですな」
騎士団長が、やられたと知っているから残念がる総大将。
「なんだと!?」
なんか、バカにしてるのか?
「われが、恐れおののくほど尊敬していた騎士団長ケンタクロシストは、どこに行ってしまったのだ!!!」
大声で、愛をさけぶ総大将。
「え………ぁ」
重いって。
「ちんも、この通り」
和平に前向きな国王が、頭を下げる。
「えっ! やめてください」
国王に、そうやられると断りにくいよ。
「ケンタクロシストさま、やりましょう」
カホウリンが、目を輝かせてオレを見る。
「えーッ! カホウリンまで!!」
うわ、マジでか。
「さあ、行くのです!」
国王が、戦場を指差す。
「もー、こうなったらどーにでもなーれー」
馬に股がり、剣を抜く。
「さあ、突撃だ!」
総大将が、右手を上げる。
「オレに続けぇー」
馬を、走らせる。
「オーーッ!!」
その頃
「ドラゴンを倒す方法はないのか?」
バーンズ総大将は、悩んでいる。
「バーンズ総大将。ドラゴンを倒すには、ドラゴンハンターを呼ぶしかありません」
兵士が、そう答えると、
「それでは、至急呼んでくるように───」
と、バーンズ総大将が言いかけるが、
「補給路が、断たれていて無理です!」
呼び出すことが出来ないと言う兵士。
「むぅ………なんとか、この状況を打開して、娘を救う案はないのか!!」
テーブルを、叩くバーンズ総大将。
「心苦しいですが、相手の要求を飲むか、バーンズ総大将のご子息の命を犠牲にして戦い続けるか………」
うつむく兵士。
「しかし、降参などと言えばルギア゛国王がなんと言うか………」
頭を、かかえるバーンズ総大将。
「そう、ですよね………」
その頃
「遅いッ………娘が、このような目にあっているのに、なぜ何の反応もないのだ?」
アムナベル女王が、連絡が来ないとイラ立っている。
「おかしいですね」
兵士が、答える。
「おい、お前!」
ブランカ・バーンズを、見下ろすアムナベル女王。
「………」
アムナベル女王を見ないブランカ・バーンズ。
「鳴きわめくなり、悲鳴を出すなりしてみろ!」
ブランカ・バーンズの頭を、つつくアムナベル女王。
「………」
無反応のブランカ・バーンズ。
「おい、ブランカ・バーンズのケツをひんむいで、ムチで打て」
兵士に、指示するアムナベル女王。
「よろしいので? 大切な人質を───」
「うるさい。さっさとやれ」
早くやるように言うアムナベル女王。
「はいッ」
ブランカ・バーンズのズボンと下着をずり下ろす兵士。
「やめろ」
ブランカ・バーンズが、反応する。
「命令ですので」
ムチを振る兵士。
パチッ
「ひぁ」
少女のような声を出すブランカ・バーンズ。
「おい!」
兵士を、怒鳴りつけるアムナベル女王。
「はッ!」
ビクッとなる兵士。
「なーに軽く叩いている?」
つめ寄るアムナベル女王。
「はぃ………」
ペチッ
「ああっ」
「おい貴様」
また、兵士を怒るアムナベル女王。
「はいッ」
背筋を、伸ばす兵士。
「やる気あるのか?」
兵士を、つんつんするアムナベル女王。
「あっ、あります」
冷や汗をかく兵士。
「だったら、もっとちゃんとやらんか!」
大声を出したアムナベル女王が、よろつく。
それを、トゥフェルが抱きかかえる。
「すごい熱だ。これはッ」
トゥフェルが、アムナベル女王の服をめくると、わき腹の全体的に青くなり、弓矢の傷口は、壊死している。
「ひぃッ! 申し訳ござんせん」
ムチを、大きく振る兵士。
バシーン
「あーん」
その頃
「おい、なんだあれは!!」
望遠鏡を、のぞいていた兵士が叫ぶ。
「てっ、敵襲!」
騎馬隊が、迫って来ているのに気付くのが遅れた兵士。
「ワーーー」
「ドラゴンに、見つかりませんように。ドラゴンに、見つかりませんように~」
祈り続けるオレ。
「ケンタクロシストさま、なにしてるのですか?」
大声で、つぶやくオレに声をかけるカホウリン。
「いや今、ドラゴンに見つかったらヤバいじゃん!」
喰われるとか、コワすぎ。
「そんなこと言っている場合じゃないですよ。敵の本陣は、目の前です」
集中するように言うカホウリン。
「うわ。バーンズ総大将って強いの?」
ぶつかり合いたくはないが。
「それはもう」
苦笑いするカホウリン。
「ひぃ………聞くんじゃなかった」
「でも、戦場ではなにが起こるかわかりませ
ん」
勝つ可能性もあると言うカホウリン。
「うん。死ぬなよカホウリン」
支えてくれるカホウリンを気にする。
「えっ、いきなりなんですか?」
ビックリするカホウリン。
「ちょっと、言ってみたかった」
「そうですか。ケンタクロシストさまも」
「あぁ。やってやるさ」
目前に、敵がいる。
「バーンズ総大将。どうしましょう?」
ザンシュガルの兵士が、うろたえる。
「うーん………弓矢を射るな。切ってきたら対処せよ」
バーンズ総大将は、悩みながら答える。
「はいッ」
「ここは、通さぬ!」
剣を構える敵の兵士。
「はーーーぃいッ」
オレは、剣を横に振る。
ズバーン
敵の腕に当たって切れる。
「お見事です騎士団長!」
バドムーンが、ほめてくれる。
「ああ。体が、動きをおぼえているみたいだ」
思ったように、スムーズに反応する。
「ケンタクロシストさま、油断しないで」
カホウリンが、気をつけるように言う。
「おう!」
「ハッ!」
剣と剣が交わる。
ガギーン
つばぜり合い。
「ッツ。この野郎!」
剣で押し退け、
ズバーッ
「バーンズ総大将。かなり押されています!」
兵士が、報告する。
「押し返せ!」
「ハッ」
兵士が、走って行くのを見ながら、
「進むことも出来ぬ。戻ることも出来ぬ」
苦悩するバーンズ総大将。
「ずいぶんと、お困りのようね」
スーッと、女性があらわれる。
「誰だ貴様!」
また、ラヴカシールのようなのが出てきて困惑するバーンズ総大将。
「わたくしの名は、サフィス。あなたに助言してさしあげます」
女神サフィスが、突然そう言うので、
「なんだ? 聞くだけ聞いてやろう」
いぶかしがるバーンズ総大将。
「相手方の騎士団長と、カードゲームで勝負してください。そうしてくれるなら、ドラゴン2頭を、退治してさしあげます」
条件を出すサフィス。
「ほう。お前がドラゴンを退治できたら、そうすると約束しよう」
「では、契約成立っと」
ニコッと笑うサフィス。
「で、貴様はなにもの………いない」
バーンズ総大将が、目をこする。
「さてと」
ドラゴンの、進行方向にスッと立つサフィス。
ズバン
ズバン
ビャビャビャビャー
ものすごい舞いを魅せるサフィス。
「ギャアーーー」
全身にキズを負って1頭のドラゴンが倒れる。
「さっ、あともう1頭ね」
肩を、コキコキするサフィス。
「なんと、一撃………」
バーンズ総大将は、口を大きく開けた。
「おい!! サフィス!!!」
空にうかぶサフィスの背後から声がする。
「あら、ラヴカシールじゃない」
つまらなそうに、ふり返るサフィス。
「わてのかわいいドラゴンに、なにさらすんじヤゴラ」
大事にしている双子のドラゴンを傷つけられて、怒るラヴカシール。
「ごめんなさいね。ちょうどドラゴンが、おさんぽしてたからカードにしようと思って~」
カード作りに、熱心なサフィス。
「ゴルア、食事中だっつーの」
怒りに、顔を歪めるラヴカシール。
「あら~、イイわねカードに」
図柄を、考えるサフィス。
「殺す」
怒りが、爆発するラヴカシール。
腐れ縁に、終止符を打つべく、
「あらら、悪魔のあなたには、わたくしに指一本ふれることは───」
そう、言いかけたサフィスだが、
ズバン
ラヴカシールの突き出した槍が、サフィスの腹をえぐり、血が吹き出す。
「指なんか、ふれなくてイイんだよ。槍が当たれば!」
槍を、引き抜くラヴカシール。
「グフッ。そんな攻撃で、わたくしを倒せるとでも?」
口から、血を吹き出すサフィス。
だが、すでに傷口はキレイになおっている。
「チッ。バケモノが」
苦虫を、かみ潰した顔をするラヴカシール。
「血………ドラゴンの血」
倒れたドラゴンに駆け寄るグミちゃん。
「げっ。グミまでいるのかよ。厄介だな」
吐き捨てるように言うラヴカシール。
空から、一直線に飛びかかる。
「待ちなさい!」
追いかけるサフィス。
「オラア! わてのドラゴンで、なにしてやがる」
槍を、構えるラヴカシール。
「これで、魔導書に書かれたモノがそろった。ドラゴンの血、蛇行剣………」
魔導書を、確認していて聞いていないグミちゃん。
「聞いてんのか!? なぬ」
ピカーーーッ
魔導書が光り、魔法陣があらわれる。
「わ、どう、なって、あ」
空間の歪みに吸い込まれるグミちゃん。
「なんだ!?」
すごい風が、巻きおこる。
ヒュン
「………は?」
ラヴカシールの目の前で、ひずみに消えるグミちゃん。
「ラヴカシール! よそ見している場合!?」
つっこむサフィス。
「クッ! お願いだ! もう1頭は」
助けるように言うラヴカシール。
「もうやったわ」
ラヴカシールが、グミちゃんに気をとられているうちに、もう1頭も倒したサフィス。
「クッ………何匹も大事なドラゴンを、おぼえてろーッ」
無数のコウモリになって消えていくラヴカシール。
「ふぅ、それじゃあカードに」
その頃
「お前が、バーンズ総大将だな」
ようやく敵の本陣に乗り込んだぞ!
「いかにも。ケンタクロシストよ、カードゲームで勝敗を決めようではないか」
いきなり、カードゲームしようと持ちかけるバーンズ総大将。
「えっ、そうなの?」
なんだ? いきなりそんな。
「ケンタクロシスト~。新しいカードよ~」
サフィスが、飛んでくる。
そして、カードを投げると、
「うあッ、アチチできたてだな」
受け取ったら、アツアツだ。
「いざ、勝負!」
バトルは、進んでいき。
「オレのターン。ドロー。………きた」
「いよいよね」
「………を墓地にトラッシュ。ツインブロアドラゴン召喚。ゴーシュート」
できたてホヤホヤの、カードを出すオレ。
「炎の坑窟レベル9うぎゃあああ゛」
『バーンズ戦闘不能』
バーンズ総大将は、完全に伸びてしまった。
「やったぁーッ」
ついにやったぞ。
「おめでとうケンタクロシスト」
跳びはねるカホウリン。
「ありがとうカホウリン」
「これで、戦争は終結ですな」
バドムーンが、感慨深く言う。
「よかった」
「………おれの娘の命だけは、助けてくれないか?」
バーンズ総大将が、娘の命乞いをする。
「なんだそれエラそうに」
ハッキンサワーが、バーンズ総大将の頭を小突く。
「まぁ、詳しく聞こう」
なんのことか、わからないとね。
「あの丘に、人質にとられているんだ!」
丘を、指差すバーンズ総大将。
「それじゃ行ってみるか」
「止まれ!」
馬で向かうと、兵士に止められるが、
「トゥフェル! なんだ一体?」
ハッキンサワーが、そこにいる人物に気付く。
「ハッキンサワー! 女王が!」
トゥフェルが、女王をヒザまくらしている。
「状態が、よくないな。なにがあった?」
ハッキンサワーが、女王の様子を見ると虫の息だ。
「詳しくは後だ」
「………ハッキンサワーか」
か細い声を出す女王。
「女王!」
「勝てたか?」
「勝ちました。勝ちましたぞ!」
「そうか………」
「女王!女王!!」
その後
「ワーーー」
王都レギルスを、パレードが進む。
馬上で、ランビル国王が手を振る。
「ベーナード卿の野望を、打ち破れてよかったですね」
カホウリンも、馬上でうれしそうだ。
「そうだな」
『ちょっと持ち上げてくれ。もっとよく見せてくれよケン』
おわり
転生したら騎士団長だった典~最強の剣士になったのに、勝敗はカードゲームって、剣で決着つけようぜ~ なばば☆ @bananabanana1E
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