第2話 やっぱり式神といえばのじゃのじゃ言う狐お姉さんが鉄板ではなく思いつかなかっただけです、すいません
今作の式神はゲットだぜ方式を採用しています。式神の同意語としては使い魔あたりになります。要は霊力とかで操作するのではなく、妖怪とか幽霊を捕まえて扱うモノを式神と呼びます。簡単に言えばポッケなモンスターとか某ウォッチのトモダチみたいなモノ。なお、本来の式神としてはどっちも間違ってないみたい。陰陽師の命令で自在に動く霊的存在のことらしい。
いつまで経っても炎が俺を焼くことはなかった。恐る恐る目を開く、最初に映ったのはやはり炎。全てを焼き尽くすかに思えるそれはしかし光の防壁に阻まれ、その先へ進むことはない。困惑する俺をフワリと温かいモノが覆った。
「ここまでじゃな。流石に此奴は未覚醒のお主には荷が重い。ここからはワシに任せるがよい。契約者」
頭に一瞬重みが加わり、そして離れる。……撫でられた。俺の前に現れたのは一人の女性。一体何者なのかと思いつつ、既におおよその察しはついていた。なぜならその女性の腰のあたりからは立派な尾が生えていたからだ。その数4本、更に言えばおそらくは狐の尾。ドン・ギツネさんのものにそっくりだ。明らかに服を貫通しているそれがゆらゆらと誘うように揺れている。
思わず尻尾持ちキャラの服どうなってんだ問題について真剣な考察()を始めようと脳内で議会の開催準備が進む俺の前で狐のお姉さん──お狐様が手を振るった。凄まじい暴風が吹き荒れる。光の防壁が消え、炎は掻き消え、俺の脳内議会は開催前に吹き飛んだ。視界が開けた先に佇む、ファイヤぬらり鬼、もとい鬼とお狐様はしばし睨み合う。
「……貴様、何者だ。只者ではないようだが」
「ただの式神じゃ」
「そこの小僧にお前が従っているとでも言うのか」
「その通り」
「バカな!そのような
「人の
ま、人ではないんじゃけど、とお狐様はこぼし、どこからか取り出した──慣例に則って言えばおそらくは、いややめておこう──お祓い棒を突きつけた。お祓い棒、確か巫女さんの装備であったはずだが。なるほど、そのつもりで見てみれば服も紅白の巫女服のように見える。俺の式神であると宣う彼女はどうやら巫女系お狐様であったようだ。
「よくもかわいい主を焼こうとしてくれおったな!あまつさえゴミなどと!お主の力量は今把握した!八つ裂きにしてくれる!」
「……容赦はせんぞ」
そして始まる人外決戦。動体視力は鍛えているがそれでも目で追うのがやっとである。お祓い棒を振り回し、やたらめったらに鬼を叩きまくるお狐様。俺はいつの間にやらあれの主にされて契約も済んでしまっているらしい。しかしおかしいな全く覚えがない。式神は部長にもらったモノだし、俺が用意したわけではない。てっきり部長特製のお守りを貸してくれたモノだとばかり思っていた。部長が怪しい。部長は俺に一体何をしたんだ?血とか採られてないよな……?しょっちゅう採られてたわちくしょう。
部長が俺に怪しい儀式を施していたのかどうかというのは置いといて、助かったのだから良しとしよう。正確にはまだ助かっていないのだが。視線を上げればまだまだ戦いは続いている。しかし、目が慣れてきた。何やら高度な心理戦でも行っているのか殴る!と見せかけて〜というようなフェイントが多い気がする。ちょっと注意しないとな。俺は銃を取り出し、鬼に狙いを定める。
この銃は学校採用の正式モデル……だったモノだ。改造部の連中に魔改造を施され、怪しい機能を付けられたこいつを俺は単に銃と呼んでいる。もちろん基本スペックも超弩級。弾速は通常の拳銃で音速を超えるらしいがこいつはその数倍、どこぞのスナイパーライフルをギリ超える程だという。銃については詳しくないがなんか強そうだからそのままにしている。そんな銃と言えば本物の人外には避けられるのが鉄則だが、さて、こいつには果たして効くのだろうか。それでも何もしないよりは足掻いたほうがいい。まあお狐様は余裕たっぷりなので余計なお世話かもしれないが……今。
弾丸が放たれ、飛び回る鬼の脳天に命中する。なんだ銃弾程度を避けられないとはバケモノの風上にもおけぬ。真のバケモノとはたとえ、空中だろうがキモい動きで銃弾を回避し、仮に当たっても身動ぎ一つしないモノだ。どうやらこの鬼は真のバケモノではないらしい。魔改造された銃弾に当たり、簡単にバランスを崩した。その隙にお狐様が襲いかかる。
「ぐぬ……!」
「はっはぁ!ナイス援護じゃ契約者!」
お狐様のお祓い棒が鬼の胸を貫いた。だらりと力を失って倒れる鬼。しかし血は流れず、その代わりに鬼の傷口からは赤い粒子が溢れ出す。奴の命の
「あ?こやつめ……!契約者!あとそこの!撃ちまくれ!」
お狐様が叫ぶ。突如として始まったハイスピードアクションについていけずポカーンとしていた2人も意識を取り戻した。
「銀弾使え!」
出し惜しみは無しだ。俺もさっきから嫌な予感しかしない。二人に一歩先んじて銀弾を込め終え、再び銃を構えた俺の眼前に、鬼の手のひらがあった。
「──ぁえ?」
熱い、熱い、アツいアツいアツいアツいアツいアツい!!!痛い、痛い、痛い、イタイ、イタイ、イタイ、イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイ!!!!!!!!
「う、がアアアアアァァァ!!!!」
「契約者!!!」
自身にまだ叫ぶ元気があることに驚いた。俺の腹を貫いた鬼の腕が引き抜かれ、自分が前のめりに倒れたことをかろうじて認識する。激痛に顔が歪み、イノチが流れ出す感覚がする。──寒い。最後に見えたのはこちらに手を伸ばすお狐様。聞こえたのは背後からのどちゃりと湿った音。──まさかヒカルか?それとも神崎さん?あるいは花舞さん?三人は無事なのか?──その思考を最後に俺の意識は途絶えた。体の感覚はもうほとんどしなかった。
とりあえずお腹抜いてもらいましたが意味はありません。急に覚醒させたくなったからとりあえず抜きました。お狐様が弱い訳ではなく、演出上の都合です。テンプレ大好きザムライです。キャラが定まらないのが最近の悩みです。ちなみにドン・ギツネさんと寺生まれのTさんカッコカリはこれを書いている間に唐突に生まれた新キャラになります。ご期待ください。
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