第49話 会いたいと思ってるのは

 莉緒が北海道に飛び立ってから、仕事をなんとか片付けて北海道へ行くタイミングを伺っていた。いざ行こうとすると問題が起こって、思った通りに事が運ばず、会えない日が2週間を超えて、やっと飛行機に乗ることができた。


 親父が許してくれたことが二人にとっては大きな事で、だからといって全部が上手くいくとは思ってない。距離感は昔と同じに戻ったような気がするけど、告白した後、ちゃんとした言葉をもらってないからか少しのことで不安がよぎる。

「勇太?どうしたの?」

「いや、なんでもない。引き継ぎは上手くいってる?」

「うん、今日、全部終わった」

「お腹大きいから大変なんじゃない?」

「うん、最後の日は挨拶だけだから、ゆっくり来てもらって、ランチ会しようって」

「あっ、明日の会議次第でそっちに行けるか決まるんだ」

「勇太こそ忙しいね」

 そんな会話をした翌日、なんとか行けることになって、すぐ飛行機の予約を取った。週末で忙しいのはわかってるけど、夜だけでも会えたらいいと思って飛行機の便をラインすると了解!のかわいいスタンプが返ってきた。

 

 北海道行きの最終便は、観光客とビジネスマンが入り混じって不思議な感じだった。到着ロビーについてスマホを見ると"行くつもりだったんだけど、トラブルで遅れたから終わったらホテルに行くね"とメッセージが入ってた。本当なら莉緒の勤めてるホテルに泊まりたかったが会社の規定の予算からはオーバーしてるので、毎回会社がとる駅から近いビジネスホテルを予約した。リムジンバスに乗ったことを莉緒に返信して目を瞑るとホッとしたのか眠気が襲ってきた。


 周りのにぎやかな声とアナウンスでバスがついたことに気づいた。急いで降りると荷物を取ってホテルへ向かう。昨日降った雪が道の端に寄せられてる。だけど今降っている雪が朝まで降れば、また雪かきをしないといけないんだろう。雪国に住んだことがないけど、1日降っただけでも大混乱する東京のことを考えると雪国で生活する人のパワーは尊敬に値する。莉緒のホテルも何人かで交代しながら毎朝雪かきをするらしい。最初は雪の重みで雪かきスコップが持ち上がらなかったが今では慣れて筋肉もついたよと笑ってた。北海道に慣れていく莉緒に少しの寂しさを感じるのはそこに自分がいないからだろう。


 ホテルのチェックインを済ませ、部屋に荷物を置いて、近くのコンビニに買い物に出ようと一階に降りるとロビーに莉緒が立っていた。




 



 



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