第47話 お父さんの謝罪
「俺は、仕事だから命令されればどこでも行くよ。でも莉緒はどうする?」
勇太が私の意見を尊重しようと意見を聞いてくれる。北海道に転勤は怖いけれど、真木さんの気持ちを聞いた今、自分を試してみたいと思っている自分に気づく。
「莉緒ちゃん、自分に正直にね」
おばあちゃんが優しく微笑むとおじいちゃんが同じく優しく頷いてくれる。勇太の眼差しの向こうに力なく座っているお父さんが見えた。
「わ…私、北海道で頑張ってみたいです。産休の間だけでも自分を試してみたいです」
「決まりだ。良かった、莉緒ちゃんが決心してくれて。勇太も自分の仕事もだが莉緒ちゃんを助けてあげるんだぞ」
「わかってるよ、俺のほうが助けられる方かもだけど」
「そうね、勇太のことだから、すぐに莉緒ちゃんに甘えそうね」
「それはそれでいいんじゃないか?仲がいいのが1番だよ」
1人蚊帳の外のお父さんが黙ったままで私達を見ている。
「勇太は北海道の仕事が終わったら、戻ってくるんですよね?」
「そうだな、それはそうしたいがお前がまた勇太の結婚話を勝手に進めるようなら、ずっと北海道支社になるかもしれんな」
「お父さん!勇太は跡取りでこの会社の跡を継いでもらわないと」
「親父、俺は跡継ぐことは考えてないよ。むしろ優秀な人がいるなら、その人が継ぐほうが会社のためになるんじゃないかと思ってる」
思いも寄らない勇太の言葉にショックを受けたのか、落胆の表情を見せるお父さんを見ておじいちゃんが声をかける。
「私は、お前が会社のことを1番に考えてくれていたから跡を譲ったんだ。贔屓目でも何でもなく優秀な跡取りとしてな」
「父さん…」
「勇太が優秀だと思えば、社長にすればいい。ただそこに息子だからという理由は必要ない。父親としての愛情を間違ってはいけないよ」
「親父、俺仕事頑張るよ。莉緒のためにも、応援してくれるじいちゃんやばあちゃん、期待してくれる親父や母さんのためにもね」
「勇太…」
「だけど、莉緒のことは別だから、今度何かあったら…」
「わかってる…」
社長席に座っていたお父さんが私と勇太の前に立った。
「勇太、莉緒さん……すまなかった」
深々と下げた頭がお父さんの心を映していて、ぐっと込み上げてくるものがある。勇太も驚いてるのか言葉がでない。
「莉緒ちゃん、こんな謝罪で莉緒ちゃんに許してもらおうとは思ってない…だけど勇太との未来を選んでくれるなら、こんなやつでも勇太の親なんだ」
「はい」
「これからをみてやってほしい…何かあっても私達がちゃんと見張っているから大丈夫。安心して勇太と2人で仕事を頑張るんだよ」
おじいちゃんの言葉に2人で大きく頷いて、私とおばあちゃんは社長室を後にした。
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