第33話 謝罪してくれた人
莉緒のとなりで目覚めるたび、つないだ手が離れてないことを確認する。もっと早くこうしておけば、彼女をちゃんと守っていれば、彼女をこんなにも傷つけることはなかった…どう謝っても許されないことをした事実だけが後悔だけが残る。知らないうちに強く握っていた手が握り返された。
「莉緒、起きた?」
「…うん」
「少し飲める?」
「うん」
ベッドサイドに置いてあった飲み物をコップに入れて渡す。
「…おいし」
「汗かいたから着替えないと、こればあちゃんのパジャマ、サイズはいけると思うよ」
「…ありがと」
「着替え手伝おうか?」
「何言ってんの、もう」
「文句言えたら大丈夫だな、食べるもの持ってくるよ」
食事を終えると勇太が薬を持ってきてくれた。
「ありがとう…私、帰るね。」
「まだ無理だよ」
「でも熱も下ったと思うし」
おもむろに私のおでこに手をあてて
「まだだな〜もう少し下がらないと無理」
「でも、頭もすっきりしたし、平気だよ」
勇太との無駄な戦いをしてると、扉がノックされた。
「勇太いいか?」
「うん」
「莉緒ちゃん、大丈夫かい?」
昔あった時と変わらず優しい眼差しのおじいちゃんが声をかけてくれた。
「はい、もう大丈夫です。ご迷惑おかけして…」
「莉緒ちゃん、すまなかった」
ベッドサイドに立って、頭を下げるおじいちゃんに驚きが隠せなかった。
「えっ…」
「勇太に聞いた。息子のしたことで莉緒ちゃんに辛い思いをさせてしまって、本当にすまなかった」
「じいちゃん…」
「勇太が莉緒ちゃんを連れてお見舞いに来た時、ただただ嬉しかった。だから食事にも来てもらった…それがいけなかったんだな」
「そんな…」
「勇太もすまなかった。莉緒ちゃんと別れたらしいのはお前の母さんから聞いていたんだが…理由までは…」
「母さんは知らなかったと思うよ、別れたのを知って驚いてたから…」
「とにかく、元に戻そう、全てを」
「それは…無理です」
「莉緒…?」
「私も勇太さんの隣にいる自分を夢を見ていたことがあります。だから、勇太のお父さんに別れてほしいと言われても納得できませんでした。結果的に身を引いたのは自分で、決めたのは私です」
「そうしないといけない状況に追い込まれたからだろ」
「…離れてから、知ったこともあるの…勇太のお家のこと…お父さんの言う言葉の意味を目の当たりにして…不釣り合い…だったんだなって」
「莉緒」
「それは違うよ莉緒ちゃん。あのバカが言った不釣り合いは気にしなくていい」
「でも…」
「勇太と莉緒ちゃんはお互いを想いあってて、それがすべてなんだよ。釣り合うという意味ではちゃんと釣り合ってる」
「じいちゃん…ありがとう」
「息子の育て方を間違えた私に全ての責任がある。」
「これからのことは私に任せてほしい」
「……」
「勇太も莉緒ちゃんも笑えるようにするから」
すぐに答えることができない私に笑って"ゆっくり休んで"と言っておじいちゃんは部屋を出ていった。
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