第16話 予定外

「莉緒ちゃん、今日はもうあがっていいよ」

 職場復帰した真木さんが、溜まっていた仕事を片付けて、一息ついたところで声がかかった。

「はい、あれ、でも夕方から」

「あー、今日の打ち合わせ、明日になった。なんか主催者が乗る飛行機、天候のせいで飛ばなくて、明日になった」

「わかりました」

「今日はほんとに助かった、溜まってた仕事、なんとかさばけたのは、莉緒ちゃんのおかげ」

「そんな…」

「あっ、あと神原様と西園様の衣装打ち合わせストップかかったから」

「えっ、ストップですか?」

 驚いて、思わず椅子から立ち上がってしまった。

「西園様の方から、オーダーの打ち合わせは神原様の予定を聞いてからにしたいってことだったんだけど」

「…はい」

「今日、西園様から、打ち合わせは見合わせたいって」

「…」

「多分だけど、新郎は結婚に乗り気じゃないのかもね」

「でもホテルを決めたのは神原様側で」

「うん、お父様でしょ…よくあるのよ。いわゆるお家同士の結びつきの結婚。力のある人が決めてくから、周りは後からになっちゃうパターン」

「…そうなんですか」

「マネージャーが乗り気だから、あれだけど、無くなる可能性もあるから、そのつもりで」

「はい」

「莉緒ちゃんが見た感じ、どうだった?」

「…お似合いでした……」

「そうか〜まぁ、どちらにしろ一度、連絡取ろうとは思ってるけど」

 真木さんは、そう言うと、帰り支度を始めた。

 

 私服に着替えて、ダウンを着込むと首にマフラーをぐるぐるに巻いた。ホテルの裏の通用口からでると、冷たい風に首をすくめながら、大きな通りまでの道を足早に歩いた。めずらしく早い時間に退社したからか、大通りを歩くカップルを目にする。街はイルミネーション目当てな人たちで賑わっていた。


「…私のせいなんてこと…ないよね…」

 

 あの時見たまぶしい二人の姿と、真木さんの話が気になって、点滅し始めた信号に気づかず横断歩道を渡ろうとした時、左腕を誰かにつかまれた。



 


 


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