第15話 後悔
東京では数えるほどしか見られない雪も、北海道では誰も気にも止めず、足早に通り過ぎるだけ。飲んでなければ凍えていたかも知れない…そんなことを考えながら高木のとこに戻ると誰かと電話中だった。
「まだ仕事中だから、また後でかける」
あわてて電話を切る高木をからかうように声をかけた。
「彼女?気にしないで、ゆっくり話せば良かったのに」
「彼女じゃないです、幼馴染で…」
「ふーん」
「そんなことより、この後どうします?ホテル帰りますか?」
「うーん、そうだな、高木さえ良ければ、もう一軒行くか?」
「いいんですか!行きたいです!」
「どこ行くかなー、泊まってるホテルにバーがあったよな。帰りが楽だし、そこにするか?」
「はい、タクシー呼びますね」
本降りの雪の中、呼んだタクシーでホテルに戻った。
雪が振り始めたせいか、ホテルのバーも宿泊客で賑わっていた。カウンターに並んで座ると、外の寒さから解放されて肩の力が抜けた。頼んだお酒に口をつけると、冷えた体がカッと熱くなった。
「幼馴染って、恋愛感情はないの?」
「あー、もう神原さん鋭いな〜。俺は…まぁそうなんですけど…なんか怖くて、もし振られても離れるのが想像できなくて…告白できないんです」
「うかうかしてると取られるぞ」
痛いところを突かれたのか、グラスの氷を指でつついてる
「そうなんです…なんか会社の同期と仲良くて、知らないヤツの話されるたび、モヤモヤするんです」
「独り占めしたいのも、今の関係が壊れるのが怖くて言えないのもどっちもわかるよ」
「…近くにいすぎるんですよね、それに安心しちゃってて」
「わかるわ、俺もそうだったから」
「白波さんですか?」
「でも誰かのものになって、高木はそれでいいの?」
「えっ…」
「後悔しない?」
「うっ…」
「気持ちは言わないと伝わらないから」
「…はい、俺頑張ってみます。神原さんはどうするんですか?」
「…そうだな…どうにかしないとだよな…後悔は、もうしたくないから」
彼女が俺の前から姿を消したのは、どうしてか考えて…結婚したって聞いた時、どうしようもない嫉妬と後悔にさいなまれた。忙しくて会えないと言われた時、様子がおかしいことに気づいていれば…会社をやめた理由を聞いた今、あの時の後悔が彼女のことを守りきれなかった自分を責め続けていた。
飛行機の便を早めて、1日早く東京に帰った。高木と空港で別れて、足早に向かったのは、彼女の勤めてるホテルだった。
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