第5話:愛のないハグとチューはいらない。
俺を救済するために人間界に留まったリボンちゃん。
救済ってことだから俺と一緒に生活することも天使の務めらしい。
独身男の家へのお泊りに制約はないみたいだ。
だからその夜はリボンちゃんは俺のアパートに泊まった。
六畳一間・・・お互い別の部屋で寝るなんて贅沢は無理。
女の子なんか泊めたこともない俺の部屋・・・夜中中リボンちゃんの
ことが気になって俺は眠れるわけがなかった。
天使とは言え生の新鮮な女子がいるんだぞ、俺の部屋に。
俺は眠れなかったけどリボンちゃんはスヤスヤ寝息を立てて寝ていた。
無防備で緊張感のない子だよ、まったく・・・俺がヤリチンだったら
泣いてエボンリルに帰らなくちゃいけなくなるぞ。
なことを考えてるうちに、いつの間には俺も寝ていた。
「圭ちゃん・・・朝だよ〜・・・お〜き〜て〜」
「う〜圭ちゃんなんて馴れ馴れしく起こすやつは誰だよ」
「あ、リボンちゃん・・・」
だから朝はリボンちゃんの甘い猫なで声で僕は起こされたわけで、
なんかずっと俺んちにいる子みたいだな。
そんな俺の彼女みたいな起こし方されたら下半身だけ元気になりそう。
朝からテンションあげて興奮してどうすんだよ、俺。
しかもリボンちゃんは僕が喜んだり幸せって思うようなことが救済に繋がる
って思い込んでる節がある。
だから、なにかあるごとにリボンちゃんは俺の彼女でもないのにハグしたがる。
・・・まあ、ハグはないよりはあったほうがいい。
悪い気はしないし・・・リボンちゃんにハグされると気持ちがいいからね。
でも、そこにリボンちゃんの愛はない・・・リボンちゃんは義務感でハグして
くれてるだけ・・・できればそこに愛が欲しい。
チューはさすがにまだ抵抗があるのか、おでこかほっぺにしかしてくれない。
リボンちゃんは俺に奉仕すれば救済につながって早くエボンリルに帰れる
って思ってるからだろ?
それって、ただ気持ちが空回りしてるだけだよリボンちゃん。
「今日は大学へ行くから、家でおとなしくしててね」
「私、ついてったほうがいいんじゃないの?」
「いやいや、大学について来られちゃ困るし・・・」
「なんで?」
「リボンちゃんが来たら他の生徒の注目の的だよ、そしたら、あの子は
誰だってことになっちゃうだろ?」
「じゃ〜紹介しなきゃいけなくなるし、なんて言えばいいんだよ」
「この子は実はエボンリルってところから俺を救済にやって来た天使だって
言うのか?」
「誰も信じないし・・・俺がイカれ男のレッテル貼られるだけだよ」
「本当のこと言わなきゃいいじゃない」
「たとえば親戚の子とか・・・そうだイトコってことにしとけばいいよ」
「イトコねえ・・・嘘くさ〜」
「なんでイトコをわざわざ大学まで連れていく理由があるの?」
「絶対、誰も信じないよ」
「そうなの?・・・友達とのコミュニケーションって難しいね」
「じゃ〜圭ちゃんがお勉強してる最中、様子を知りたいから時々話し
かけてもいい?」
「は?・・・なに言ってんの?」
「私テレパシーも使えるから離れていてもお話できるんだよ」
「まじで?・・・天使ってそんなXメンみたいなこともできるわけ?」
「うん・・・だからスマホとかいらないの」
「へ〜便利だね・・・けど・・・それでも講義中はまずいよ」
「集中できないし・・・」
「え〜それじゃ、私ヒマすぎちゃう」
「あっ、そうだ、圭介ちゃんもしかして通学中に事故にでもあって車とかの
巻き添え食って死んじゃったら、そしたら私エボンリルに帰れなくなるでしょ?」
「心配だからやっぱりついて行く」
「私、圭ちゃんの少し先の未来だって予知できちゃうし・・・」
「あ、危ないって思ったら事故回避できるからね」
「なんでもできちゃう子だね、リボンちゃん・・・感心」
「天使って言うよりもう超能力者じゃん」
「お任せ・・・そのくらいできないと困ってる人救済できないもん」
「あのさ、俺が事故に遭遇することなんか心配してたらキリがないでしょ」
「家から一歩も出られないよ?」
「家の中にいたって、どんなアクシデントに見舞われるかもしれないじゃん」
「階段踏み外して下まで落っこちで頭打って死んじゃう場合だってあるし・・」
「・・・リボンちゃん・・・救済天使なんだよね」
「回避って言ったけどリボンちゃんって守護天使も兼任してるの?」
「うう〜ん、私、救済専門の天使だよ」
「守護天使じゃないけど・・・私の親友に「「バレッタ」って子が治癒天使
やってる」
「私たちは地下天使だから・・・アンダーエンジェルとも呼ばれてるの」
「地下アイドルみたいに言うんだね」
「あのさ、俺にかまって過保護すぎるのも逆効果になるよ、ほどほどに
しないと・・・」
「迷惑なの?」
「迷惑とかそう言うんじゃなくて・・・義務感で優しくしてくれても嬉しく
ないって言ってるの」
「義務感?・・・優しくすることがいけないことなの?」
「リボンちゃんには俺の心理なんて分かんないかもしれないけど、愛情も
ないのに無理して優しくされたら、かえって切なくなるよ」
「愛情?・・・私の愛が欲しいの?」
「当たり前だろ?・・・ほんとの優しさや思いやりって愛情の上に成り立ってる
もんだろ? 」
「愛のない、ハグやチューはいらないよ」
つづく。
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