第4話 意外な一面

「はい」


 ペンを渡すとき、手が一瞬触れた。

 たまたまなんだろうけど、意識しすぎた私の体温が、また少し上がる。


「あ、ありがとうございます。」

 目を合わすこともままならない。お礼くらい、目を見て言いたいのに。


「最近、よく来てるよね。いつもこの席で」

 ……!?

 先輩からの思わぬ一言に、私は思わず目を見開いて見上げた。


 ニヤッといたずらっぽい表情。

 さっきまでの勉強していた姿とは別人のような、おどけた表情を浮かべて私を見下ろす。


「あれ、気付いてないと思ってた?」

 私が口をパクパクさせて言葉に詰まっていると、更に嬉しそうに先輩はこう続けた。


「またね、赤澤さん」

「え、は!?」

 なんで私の名前を知ってるの!

 と、大声を出して叫びたかったが、他の生徒たちの目線を感じたので、口を閉ざした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る