第3話 シャーペン
先輩の名前は、
鼻筋は通っていて、唇は薄く、睫毛が長くて、少し女性的な雰囲気。
ひとり静かに参考書をめくり、ノートに書きこむ姿が凛としていて、いつの間にか彼をこっそり見つめるようになってしまった。
いつか、こっちを見てくれないかな。
なんて、念じるように思いながら。
もし目が合っても、おそらく恥ずかしくて目をそらすことしかできないのだろうけど。
冷房の効いた図書室。さっきまでじっとりと背中を伝っていた汗がひんやりと冷えてきて、気持ちいい。
宿題、するかな。
筆箱からシャーペンを取り出し、ノートを開くと。
ブルブルっと、ポケットの携帯が震えた。
彼から目をそらし、ポケットの携帯に目を落として、メッセージの確認をしたときだった。
机に腕が当たって、コロコロっとシャーペンが机の上から、勢いよく転げ落ちた。そのシャーペンは、三村先輩の足元へ転がっていったのだ。
わ、どうしよ。慌てた表情を浮かべた私に気付いたのか、三村先輩がシャーペンを拾い上げ、こちらを見上げた。
「君の?」
はじめて聞く、先輩の声。
思った以上に低くて、通るその声に、ドキリと胸が高鳴った。
「あ、ハイ。すみません」
席を立ちあがって、私のシャーペンを拾った先輩が近寄ってきた。
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