第2話 図書室の先輩

 階段をかけあがって、4階の図書室へと向かう。

 ガラッと勢いよく扉を開けると、「静かに」と言わんばかりの冷たい視線を浴びた。


 しまったと思ったときには時すでに遅し。そろそろっと、扉を閉めた。


 茜は、キョロキョロと室内を見渡す。分厚い参考書を開いて黙々と勉強している、眼鏡をかけたひとつ年上の男子の姿が見える。


 邪魔をしてはいけない。その表情が見える、机をふたつはさんだ席にそっと座った。

 リュックから、教科書を出す。そっとその姿を教科書ごしに見つめた。


 ちょっと神経質にも見えるその顔立ちは、よく見ると整っている。


 まったく勉強なんてする気のない私は、隠れてその先輩の姿を見つめるのが日課となっていた。


 もちろん、声をかける勇気なんて、ないのだけれど。


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