温度増していく、この夏

松武直弥

第1話 はじまり。

 本当に暑い夏だった。


 梅雨も明けたのだろうか。

 連日続いていたうっとおしい雨も終わりを告げ、太陽の光がさんさんと降り注ぐ。


 キーンコーンカーンコーン。

 無機質なチャイムが学校中に鳴り響く。


「ねぇ。茜、聞いてる?」

 窓からぼんやり校庭を見つめていた私に、隣の席の友人が肩をつついてきた。


「ん?ごめん、なに?」

 友人の由衣のほうへ振り返る。


 もう、とほっぺをふくらませる彼女はコロコロ表情が変わる。

 素直で愛らしく表裏のない性格の彼女に、私はいつも癒されていた。


「今日の放課後、どうする?どこかへ寄って帰る?」

「うーん。そうだね…」

 私は由衣の質問に曖昧な返事をしつつ、再び校庭に目を落とした。


「ごめん、由衣。今日はちょっと残るわ」

「えぇー。最近、付き合い悪いぞ」


 ごめん、ごめんと両手を合わせて、リュックを背負って教室を出た。


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