第33話 お嬢様は病に侵されたい
「闇の時代は終焉を迎えた。我が眷属よ、今宵も共に深淵を探求しようではないか」
えー、緊急事態です。なんかヤバい人がいます。
どこかで見たことあるような金髪をツインテールにして、黒いゴスロリドレスを纏った不審者です。オマケに眼帯まで装備して意味不明の言語を口走っています。......現場からは以上です。どうしてこうなった。
ちなみに今宵とか言っているが、今は朝10時だ。どうした優等生。
「......美雨だよな?」
「クク......それは仮の名。我が眷属には、特別に
「あ、ウチそういうの間に合ってるんで」
面倒くさいのでそのまま家の中に引っ込もうとしたら、ガシッと腕を掴まれてしまった。チラッと背後を見れば、涙目で頬を膨らませている金髪美少女の姿。
「......なんで無視するの?」
無視はしてないぞ?ただ相手にしてないだけだ。ていうか素に戻ってるじゃねえか。
「とりあえず中入れよ。暑いだろ?」
俺たちがいるのは、我が家の玄関先。イタい格好の少女がイタい言動をしているところをご近所さんに見られたら大変だ。
「お、美雨ちゃんいらっしゃい。外は暑かったでしょ」
「これはこれは、眷属の兄君ではないか。今宵もまた眷属との戯れに興じることにしたのだ」
「ゆっくりしていきなよ。毎日のように来てるみたいだし、大変だったら泊まっていってもいいんだよ?」
「えっ!泊まっ!?............な、なるほど、 それが『ヴレーソ』の選択ならば従うのも吝かではない」
兄貴ィ!?え、ちょっと待って?なんで普通に会話してるの?兄貴までソッチ側の人間だったの?知りたくなかったよ、その情報......。
しかも聞き間違いじゃなければ泊まりって言った?相手は涼じゃないんだよ?男の2人暮らしに女子高生泊めるのはアウトだよ!なんか訳の分からない単語まで出てきたし、頭が痛い......。
原因はおそらく俺が貸したラノベだろう。主人公が厨二っぽい言動してるし、闇夜に紛れて暗躍する話だから今宵も......とかたしか言っていた気がする。
で、話だけじゃなくてキャラにもハマってしまったと。昨日は用事があって会わなかったからその間に色々調べたのだろう。優等生だから覚えるのは得意なんだろうが、なんてとこに活用してやがるんだ。
「クク......魔力の高まりを感じる。これこそが、強者のみに許された至高のひととき」
ベッドの上では、グラスに注がれた
「で、いつまで続けるんだ?その設定」
「設定ではない!これはヴレーソの選択なのだ。まったく、そんなことでは眷属失格だぞ」
「さっきも言ってたけど、そのヴレーソってなんだよ。あと勝手に眷属にすな」
「ヴレーソはヴレーソだ。そして汝と我は魂の共鳴によって繋がれた者同士。決して逃れることなど出来ぬ」
「あっそ。だけどそれじゃ一緒に遊びには行けないな。あー、残念だなー」
「ふぇ!?それはやだ!外ではちゃんとするから!」
感情が揺さぶられると素が出てしまうとはまだまだ未熟だな。しかも若干幼児化してない?反動なの?
「外で
「うぅ......わかったぁ」
「ちなみにその眼帯の下は何かあるのか?」
「こ、これは強大すぎる力を封印するための魔法具であって......」
「つまりただの飾りか。てっきりカラコン入れてオッドアイとかやってるのかと思ったわ」
「か、カラコンはちょっと怖くて......」
「あー、それは分かるかも。目に異物いれるようなもんだしな。ま、美雨は元々碧眼で綺麗だしそのままでいいだろ」
「......こ、これ無い方がいい?」
「そうだなー。眼帯無いほうが美雨の綺麗な目が見えるんだけどなー」
その格好をやめてくれるならと適当に返事をすると、美雨はやや乱暴に眼帯をはずそうとして......髪に絡まった。
「玲央ぉ」
「あー、ほら少しじっとしてろ。まったく、慣れないことをやろうとするからだ。......ほれ、取れたぞ」
取れたのはいいが、顔を上げた美雨と至近距離で見つめ合ってしまう。綺麗なのは目だけじゃない。まつ毛は長いし鼻や口は小さいしでまさに人形みたいだ。思わず吸い込まれてしまいそう——って何考えてんだ。あぶねえ。
「クク......よくやったぞ眷属よ。......魔力が解放されて世界がよく見える。これが夜明けか。このティレインの力を見せてくれよう」
あ、まだそれやるんだ。ただ眼帯取っただけで大げさな。
そのティレインってのが真名ってやつなのかな。美雨......ビューティレイン......いや、まさかな。
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【お知らせ】この度、☆100&PV1万を突破致しました~!
いつもお読みいただいてる皆様に感謝です。
これを記念して、近況ノートのほうにSSを掲載致しましたので、興味ある方はそちらもお読みいただければと思います。
これからも『わさポン』を宜しくお願い致します(o*。_。)oペコッ
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