第11話 お嬢様と親友は計画したい



 涼たちに美雨との関係が知られても、学校では何が変わるということもない。

 美雨はお嬢様の仮面を被って人に囲まれ、俺たちとの関わりなど無い。

 これが日常......のはずなんだけどなぁ。




 

「玲央!明日遊園地行こうぜ!」

「......は?そんなの麗香と行って来いよ」

 

 昼休み、涼の唐突な誘いに頭がおかしくなってしまったのかと思ってしまう。悪いが俺にはソッチの気はないからな。

 

「もちろん麗香も行くけど、楠と4人でダブルデートしようぜ!」

「えぇ......なんだよダブルデートって。つかお前部活は?」

「明日は1日オフなんだよ。創立記念日だからな」

 

 たしかに明日は金曜日だが創立記念日ということで休みだ。ただそれと部活が休みになるのに因果関係があるのかは疑問だ。 

  

「楠にはもう麗香が話したらしいから今週末な!」

 

 マジかよ。涼にも俺の拒否権ははく奪されてしまったらしい。

 ていうかサラっとダブルデートとか言っているけど、俺と美雨は付き合ってないって言ったはずだ。

 はぁ。しかし3人の中で決まってしまったなら抵抗しても無駄か。まぁ美雨の仮面を知った涼たちが一緒なら俺の負担も減るかな。なんて甘いことを考えていた。


 

「......なぁ、涼。お前、今のあいつ見ても羨ましいと思うか?」

「ん-?そうだなぁ。こうして見ると玲央の言うことも分かるかも。学校とは別人みたいだったけどあっちのが自然というか。麗香と買い物した後も楽しそうに笑ってたし。でもそれを見抜いてたなんてさすが玲央だよな~。ずいぶんと懐いてるみたいだしお似合いだぞ」

「そういうんじゃねえよ」


 俺が気づけたのは、関わりをもつより前からあいつを見ていたからだ。

 あいつがだから。そういう意味では取り囲んでいるあいつらと同じともいえる。ただしそこに含まれる感情は逆だろうが。

 そのせいで仮面に気付いてしまったなんて、まったく皮肉なもんだ。


 

 



 

『明日の遊園地楽しみね!』

 

 夜には美雨から待ちきれない感いっぱいのメッセージが来た。このメッセージひとつとっても、学校での楠美雨と同一人物だとは信じがたいものだ。

 ていうか友達はともかくとして、連絡先を知ってる奴くらいはいんのかな。そしたらメッセージでまで媚びを売ってくるのだろうか、なんて考えて苦笑してしまう。

 

『あんま興奮すると寝れなくなるぞ』

『善処するわ!』

 

 まぁ言っても無駄だろうなぁ。まるで遠足前日の小学生だ。

 遊園地は水族館より体力使うしちゃんと寝ておかないと大変なんだが......俺が。


『あ、それと明日はスカートタイプの服はやめておけよ』 

『大丈夫よ!このあいだ麗香と一緒に買った服があるわ!』


 あー、そういや一緒に服見たんだっけか。麗香の奴、まさかあん時から企んでいたのか?

 余計な気を回しやがって。おかげで3週連続で出かけるハメになっちまった。これではデートと言われても否定しきれない。

 麗香のことも下の名前で呼んでるし急に仲良くなったなぁ。麗香のほうからグイグイいったのは間違いないんだろうが、どうやって取り入ったのだろうか。

 そういえば今更だが、あの時服屋に入る前に美雨が俺を見たのは麗香と2人になるのが不安だったのかな。麗香は普段涼や俺と一緒にいるから美雨には近づかないし、ほぼ初対面だってことすっかり忘れてたわ。


 ま、これでようやく美雨にも友達が出来て俺もお役御免に——なるわけないんだよなぁ。あの麗香が俺を巻き込まないはずがない。

 涼に言った通り、美雨がである以上付き合うことは無いが情が湧き始めてるのも事実だ。あの仮面を見ていると、昔の兄貴をどうしても重ねてしまう。

 深入りするのは良くないと思いながらも放っておけない。そんなモヤモヤを抱えながら眠りについた。



 

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