第5話 私、攻撃魔法が使えません

「師匠......。引越ししましょうよ」


 心底嫌そうな表情を出しているセシリア師匠。


「嫌よ。折角の安住の地を放棄するなんて」


「盗賊が見つけられるなら、いずれ魔導騎士団が来ますよ」


 そっぽを向く師匠。


「幻覚魔法や隠蔽魔法も掛けるしかないか」


 ぶつぶつ、言ってる。あの状態になったら、こちらの声は聞こえない。


 先ほどの戦闘を思い返すアリサ。


 私が盗賊に突撃戦法を取った。

 明確な理由がある。


 この世界は魔法こそが一番と考えられている。


 逆にそれ以外は疎かになっている。


 身体の鍛錬。剣術、柔道、空手などの武道が発展していない。


 発展していない、イコール最善の手。


 確実に相手に攻撃が当たる。


 あとは、私の魔法適性が大問題。


 魔法適性は生まれ持ったもの。

 火魔法に強い者がいれば、防御魔法に特化している者もいる。

 守りに徹した魔法使いであっても、多少攻撃魔法もできる。

 少し、不得意ってだけなイメージ。


 しかし、私には攻撃魔法が使えない。不得意とかではない。

 。初級魔法すら扱えないのが私の現状。


 魔法使いとしては致命的な欠陥品。

 ましてや私は貴族。本来なら、こんな欠陥品は捨てられる。

 捨てられていないのは、から。





 私は、回復魔法が最も得意だった。二番目は付与魔法の適正があった。三番目は身体強化魔法。


 師匠との魔法訓練で発覚した事実。

 両親からは報告を受けていない。

 

 きっと、来るべき時に直接言われる。

 なので、私は隠している————自分の魔法適性を。


 自分は勿論、他人の傷も一瞬で治す事ができる能力を持っていた。

 師匠の話では、世界で回復魔法に長けている魔法使いは私以外にしかいないとか。その何某さんは、行方不明とも説明を師匠から受けた。


「アリサの場合は、あらゆる生物以外も治すことができる」


 師匠は魔道具を壊し、私に渡した。

 手に包む。私が回復魔法を使う時、光り輝く銀色を帯びた白色が出る。


 壊れた魔道具は、再形成される。


 テーブルには壊れる以前に戻った。


 師匠はランプ型の魔道具に魔力を注ぐ。

 光が灯る。正常に稼働している証拠。


「形だけ治ったではなく、ちゃんと機能してるわね」


 デメリットは存在する。

 魔法を放出できないので、遠くにいる人は、近づかないといけない。


 でも、大丈夫。私の脳細胞を最大限に発揮した。







⭐︎⭐︎⭐︎

のアリサは後衛職なはずなのにな〜


アリサは自分の回復魔法が異常な力を持っていると家族に秘密にしている。

親もまた、アリサが持つ回復魔法をアリサ本人に言っていない。


セシリアは何となく察知しているが公言はしない。いや、できないだろう。


アリサ視点では、使えるようになれば家族の、人々の役に立つと考えている。

根が魔法少女として民衆を助けていた人だし〜

家族を驚かそう、と思惑している純粋な考え。

サプライズなイメージ。


でも、親視点では......全く考えが違う。

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