第4話 幼女令嬢VS盗賊
複数人との戦闘、ありがとうございます!
複数体の敵は経験済み。
相手が魔獣だから。
通常は突っ込んだり、爪で攻撃してくるなど。
他には、姑息な罠や外敵。
外敵から守るために身に付けた特殊能力で相手を倒す。
意外にも模した動物の習性を色濃く受け継いでいる場合もある。
あまり知性を待たない魔物の戦闘パターンは決まっている。
しかし、対人戦の場合はスムーズにはいかない。
まず、武器を持つ。剣や斧は勿論。この世界では複数の魔法を掛け合わせた攻撃もしてくる。
集団で一人をボコボコにする。
自分が有利な場所へ相手を誘い、戦闘不能にする。
更に、そこに知識も加わる。叡智の知識や卑劣な知識も。
色々、語ったけど、私が言いたいことは。
複数人との戦闘は、美味しい経験値になること。
自分がどれだけの力量なのか把握もできる。
仮に負けても、逃げきれば改善案を考えれる。
次がある。
身体強化魔法をかけたことで、アリサの足の速さは格段に上がっている。
迫るアリサに盗賊の一人は杖からナイフに持ち替えていた。
この世界での魔法使いの戦闘は大きく分けて二つのパターンがある。
一つ目は、攻撃魔法を放つ。
当然のことだけど、もっともシンプルな戦法。
二つ目は、武器に魔法を付与し、攻撃を仕掛ける。
二つの戦法では、大多数の人間が一つ目を活用する。
最もらしい理由は、敵との距離にある。
一つ目は、魔法は近距離と遠距離で使い分けで放てる。
敵との距離が離れていても、威力とスピードが加わった攻撃魔法に対応も間に合わないし、受けるダメージも大きい。
隙を突かれても敵に攻められても、魔法詠唱が早い術者なら、返り討ちできる。
二つ目の武器に魔法を付与させ、攻撃をする戦法は、ほぼ接近しないと効果が発動しない。
なら、弓はどうなのか。所持している矢の本数は無限ではない。有限だ。
矢がなくなれば、弓はお飾り武器になる。精々、弓本体で殴るくらい。
結局は接近しないといけない。
だから、この世界は。
接近して攻撃を仕掛けるより、遠距離で魔法攻撃を放てば解決するで戦術が固定化されている。
もしも、敵が近づけば、護身用の武器で対処するしかない。
わたし? 私は勿論、一択だよ。
「さようなら!」
肉薄し、盗賊の顎にアッパーをかました。身体強化魔法で強化されている拳と威力を上げるためにちゃんとした構えで打ったことで、盗賊の一人は垂直に吹っ飛んでいった。
頭から地面に刺さった。これで、戦闘不能。次ッ!
火魔法が飛んでくる。火の玉が迫る。ステップで回避。そのまま、足に力を入れ、前へ跳ぶ。
着地と同時に、盗賊の腹部に右ストレートパンチ!
くの字になった盗賊は仰向けで倒れ込む。足を払い、バランスが崩れた身体に下向きでパンチを放つ。倒された盗賊の腹部には打ち込まれた拳の痕がついていた。
盗賊なら接近戦も得意かも、と想定はしていた。
でも、実際はアリサへの対応が遅い。本当に近接に慣れていないと考えられる。
どうせ、今まで商人の馬車も遠距離から魔法攻撃して終わりだったのだろう。実際に、的確に急所に魔法を放つ命中率はいい。回避しなければ、私の体は丸焦げになっていたし......
私の突撃に戸惑いしかない残党。
間合いを詰め、全てを拳一つで殴り飛ばした。
身体強化魔法を解除した。少し、疲れた。
今は三時間くらい身体強化魔法を掛けても大丈夫。
目標は毎日、全力で掛け続けても問題ない身体と圧倒的魔力量。
事態を解決できた喜びはある。だが、拳攻撃だけでは太刀打ちできない。
「終わったようね」
後ろから師匠の声が聞こえた。
「本当に、貴女......魔法使い?」
師匠はかわいそうなものを見るように私を見ていた。
「私、まだ成長期ですから!」
「成長期......?」
胸を張る私を凝視する師匠。
なぜ、首を傾げる? どうして哀れな顔をする??
「ま、貴女はまだ十歳にもなっていないし。これからだよね!」
私だって、いつかは師匠以上のダイナマイトボディーを手に入れるんだから!!
そう、誓い私は師匠の家へ歩き出した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
アリサの後ろ姿をセシリアは黙って見ていた。
表情は心配と悲しみに満ちていた。
アリサの師匠として一年が経過した。
初めは、なんて身勝手な貴族令嬢なんだと思った。
こんな暗い過去しかない女に毎日、会いに来た。
『私の魔法の師匠になってください』、頼み込んだ。
一度、扉を透過してアリサを見た事がある。
大きな野望を抱いている雰囲気。
でも、瞳は違った。
何かに怯えていた眼をしていた。
多分、本人は意識していない。無意識なのだろう。
絶望に直面しないよう、幼い身体を酷使し続けている女の子。
危うかった。
豪快な戦闘は終わった。結果はアリサの圧勝。
非常に元気いっぱいな顔。一仕事を終えたアリサはセシリアのもとへ戻ってくる。
セシリアは決めたのだ。
だから、アリサを弟子にした。
生き延びる術を教えるために......
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