第3話 太古世界
一番上の一枚は、緑の山々がいくつもいくつも、地平線へと折り重なっていて、その先で夕日が柔らかなオレンジに輝き、夕日の前で紫のちぎれ雲が追いかけっこをしている。
一枚目の絵を一番下に回して、二番目の絵を眺める。折り重なる木々で薄暗いが、登り方面の奥は明るい絵。
二枚目の絵を一番下に回して、三枚目の絵を眺める。牧田は「二枚目の絵の登り方面に歩いて行った先です」と説明する。広い平地の絵だ。自転車でもないと平地を横断縦断するのは、骨が折れる程だ。平地の大部分を大きな池が占めている。池を挟んで反対側には、さらなる高い山がそびえる。絵の視点からして、さらに数百メートル程の高さはある。また、山の麓には石でできた二階建ての建物も有る。
三枚目の絵を一番下に回して、四枚目の絵を見る。牧田は、「三枚目の絵に有った池を覗き込んだ絵です」と説明する。水面には水草や大きな葉は浮かんでいる。透明な水中に、大きな黒い魚や派手な色をした魚がうごめいているのを見通せる。釣り糸を垂らせば、すぐにかかりそうな程、人口密度ならぬ魚口密度は高い。
四枚目を後ろに回して、五枚目を見る。牧田は、「何気なく見上げた空です」と言う。澄んで青い。夜になると、星空は綺麗だろう。空の絵の中に、先程の山も入っている。山頂はよく尖っている。あの尖りは自然の作用でできたのか?誰かの手で意図的に作ったように見える。そう思うと、先程の絵の池周囲にも人為的なものを感じる箇所が有った。池の魚の数だって自然のものとは思えない程に多すぎた。
五枚目の絵を一番下にして、六枚目の絵を見る。牧田は「三枚目の絵に有った石でできた建物に入った絵です」と説明する。玄関をくぐってすぐの様子だろうか?漠然とではあるが古い時代の建物だと感じられる。機械等で作ったものとは思えないことやら電化製品等も置いて無いこと等のせいだろう。
六枚目の絵を後ろに回して七枚目の絵を見る。瞬間、俺の心に衝撃が走る。薄暗い部屋の中央に、小さめのゴリラが横たわっているのだ。ゴリラの横に容器に使用していると思われる土器が倒れて液体が流れでて、床に小さな水たまりができている。俺は思った、液体はおそらく毒物であって、かわいそうに人間の建物に迷い込んだゴリラはたまたま残っていた毒物を誤って飲んでしまったのだろう、と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます