信じたい
「もう……まだ配信中ですよ?」
私に抱きついてきた陽菜は肩を震わせて泣いていた。胸元に顔を寄せて静かに泣いている。
「なんで陽菜が泣いてるんですか?」
「だって、だって……そんなに悲しい過去があるなんて、知らなくて……それに、雪ちゃんだって泣きそうじゃん」
「ふふ、気のせい……ですよ」
強がりを言ってみても涙は止まることを知らない。流れ落ちていく涙がよりいっそう悲しみを思い出させる。思わず陽菜を抱きしめ返す。
「私は……私は、最初、なんだコイツって思ってました。……人の心にずかずか入ってくるし、距離近いし。でも、誰よりも優しくて、暖かくて、ちょっと強引で。そんな貴女を信じてみたいって思っちゃいました。……怖いです。怖くて怖くて、震えが止まりません。でも信じたい。叶うなら……陽菜の隣に居たい。一緒に配信したり、一緒に寝たりお話したり。……でも、私はまだまだ怖がりでどうしても信じられなくなります……だから、私をこんな風にした責任……取ってください。陽菜の事を心から信用させてください」
「……うん、うん!約束する!絶対に裏切らないし、そばに居る。むしろ、雪ちゃんが……いや、雪が離れようとしても絶対に離さないから。言葉だけじゃなくて行動でもバンバン示していくから!だから……
一緒に頑張ろ?」
陽菜となら、頑張れる。
陽菜となら、信じ合える。そう願って私はより一層抱きしめる力を強くした。
:あれ……配信してるよな?画面が見えん
:スマホがびちゃびちゃなった
:やめろって!誰か玉ねぎ切ってるだろ!涙がとまんねーって!
:本当に雪ちゃんはよく頑張った……
:あおあお、絶対に幸せにしてあげて……!
:感動で前見えん
:こんな純愛百合初めて見た
:尊すぎる……
:泣ける百合会場はここですか?
「あー、配信また忘れてた……最近多いなぁ」
「良いじゃん、私達の絆が全リスナーに見せつけれたんだし」
「良くは無いですけど……みんな今の忘れてーー!」
:すまない……録画済みだ
:え?切り抜き動画上がっておりますけど
:永久保存版なんだよなぁ
:こんな神回忘れる方が無理難題
:尊いなぁ……純愛だよ。
「……陽菜のせいです」
「えぇ〜別にいいじゃーん!むしろもっとサービスしとこ?」
「え?」
サービス?何をするつもりだろう。リスナーに対してのサービスだよね?
なんて考え込んでいるとスっと顔が近寄ってくる。考える間もなく唇を奪われる。
……うっそでしょ
しかも軽いキスで済ませる気は無いみたいで舌を差し込んでくる。陽菜とのキスは別に嫌いじゃ無いし、拒む理由はあんまりないんだけど、今は配信中だ。
肩をペシペシ叩くとやっと開放される。
「……変態、すけべ、変質者!」
:何があったw
:少しの間急に静かに……
:朗報・ナニかがあった模様。
:長文失礼します。私は音声解析を生業としているのですがさっきの空白の時間の音声を勝手ながら解析させて頂きました。すると、本当に僅かではありましたがリップ音のような音とくぐもった声、詳しく言うと、吐息のような漏れ出た声といった感じですね。それと僅かながら水音も確認できました。これらと更にアバターの動きを加味すると……『キス』をしていたのでは……と愚考致します。後で解析動画上げます。長文失礼しました。
:草。でもナイスすぎる
「………………」
「………………」
なにコレ。え?なにこれ!意味わかんない!どんなタイプの変態だよ!解析するのはヤバすぎなんだけど!てかバラされたんだけど!?
もーー!意味わかんない!
:沈黙は肯定って言葉知ってます?
:2人して絶句。これは信憑性が増しますねぇ
:え?ガチなん?
:おやおやおやー?おっかしいぞー?そんな関係にはならないって言ってませんでしたっけ?
:ありがとうございます。最高です
「いや!違うんだって!してない!してないから!後、そういう関係でもないからぁぁぁ!」
「……むぅ」
不満そうにするな!
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どうも。暴走天使アリスです。
今回の話で第一部が終了となります。次のお話からは第二部になりますが……構成を考えるためのお時間を少しいただきます故、次回の更新までしばらく間が開きます!多分!
よければ……いいね、フォロー、コメントお願いします!励みになります!コメントも全部返します!
では、また次回お会いしましょー
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