人間不信のVTuber

復活配信

さあ、始めようか。復活配信。

私だけの特徴であり強み。原点にして頂点。それが長時間配信。長い時間リスナーを楽しませるのは難しいし、同接数が不安定になるのはどうしようもない。

……でもそれは一般的なVの話。

私は違う。企画や台本なんてない。全力で楽しむだけ、それが今までの私。そしてこれからも、そうしていく。私が楽しまなきゃリスナーだって楽しめない！

スマホを手に取り公式アカウントで告知をする。あと数分で始めるつもりだけど形だけ一応。その告知は瞬く間に拡散され、ものの数分で10万いいねを獲得。

みんなが待ってる。私と楽しみたいんだ。今行くよ、私の遊び相手たち！

手馴れた操作で配信画面を立ち上げBGMを流しOPアニメーションを流す。待機人数がぐんぐんと増えていく。

「ちょちょちょ！急にどしたの！？配信すんの！？」

「……水を差さないでくれます？今から配信なんで静かにしててください」

何やらわーきゃー喚いている陽菜を無視してヘッドホンを装着。

最終確認。

アバターの動き。BGM。背景。音質。不都合は無し。よし、行こう。

「みんな！久しぶりー！！！」

：待ってたぞ！！

：急に配信するって聞いて飛んできた！

：仕事中やけど関係ない！

：良かった！復帰してくれてありがとぉ！

「みんなありがとぉ！あと仕事はしよっか」

「てことで！白夜 雪、完全復帰をここに宣言します！色んな人を心配させちゃってごめん。メンタル的にはまだ本調子じゃないけどみんなと一緒に元気になるから安心してね」

：まじでよかったぁぁぁぁ！

：ホンマに社長暗殺計画立てるとこやったわ

：……え？もう立ってるでしょ

：草。社長大ピンチすぎ

：当然だろ

「はいはい！皆悪口言わないのー！私だって社長なんて大嫌いだし口も聞きたくないけど、ここ自体は気に入ってるからさ〜」

：おま、言うw

：所属ライバーから嫌いと言われる社長

：遅れたー！マジで復活してる！良かった！

「いいね、どんどん同接増えてる。今日こそは皆最後まで着いてきてよー？」

：よっしゃ望むとこや

：徹夜ルート確定wでもお供するで！

：うちも最後まで！

「よっしゃ、てことで第1回！本音で大暴露！私の気持ちのコーナー！」

：なんか新企画きたぁぁw

：この流れは社長貶す流れではw

：配信で堂々と社長の悪口言うV初めて見たw

「みんなお察しの通り！まずは社長に対する本音を大暴露！

まず第一印象！おっさん。仕事出来そう。

現在の印象！約束守らないし、空気読めないし、許せない！大っ嫌いだし気に食わないけど、Vライバーとして雇ってくれてることには感謝！」

：ぶっちゃけたな

：おっさんwww

：私も嫌いだー！

「共感してくれてて何よりだよー！」

配信で、こんなに堂々と悪口を言うのははばかられるけど、向こうが悪いんだし、このくらい目を瞑ってもらわないと困る。

私は約束を破られて、傷つけられたんだ。

なら私はリスナーの力を借りて仕返しをするだけだ。

「さてさて、盛り上がってきたところ申し訳ないけどここからは大事なお話。そして報告」

：うわ、声のトーンが……

：え、引退とかやめてよ……？

：このタイミングの報告は怖いって

：やめてくれよぉ？まじで！

「ふふ、ごめんごめん。活動は続けるし辞めたりしないよ」

：まじでよかった！

：なら、なんの報告だ？

：企業変えるとか？

「じゃー報告から！

今日をもちまして私は…………

コラボを解禁します！！！」

：……は？

：え？

：まじ？

：うそ！

：夢にまで見たライバーとの絡みが！？

「社長になんか言われたとか関係なく、このお休みしてる1週間の間に、コラボしたいって自分で思える相手を見つけちゃったから、その人とコラボするために解禁するよ！まだ考えては無いけど他の人ともいずれ？」

これは、本音だ。配信が好きなんだって気づかせてくれた。1週間だけだけど、気にかけて、慰めて、寄り添ってくれた。陽菜とコラボがしたいって思ったんだ。

だから、コラボを解禁する。

さて、次は…………私の過去のお話だ。