もう一度
朝起きて、寝ぼけ眼で視線を上にあげる。そこにはグッスリと眠る陽菜が居て、安心感を覚える。
寝ている間に私を置いてどこかに行ってしまうのではないか……私を見捨てて消えてしまうのではないか。
そんか考えが頭から離れず、顔を見る度に安心する。あ〜あ。こんなはずじゃ無かったのに。深く関わるつもりなんて毛頭なくて、ましてや陽菜が居なきゃどうしようもなくなるなんて思ってもみなかった。
陽菜が寝ている間が1番安心する。意識が無ければ何処かに行くことも、私を裏切ることも、絶対にありえない。
ずっと、寝ててくれれば良いのに。ベットの上に縛り付けて、一生私の抱き枕として……
……なんかやばい方向に考えがシフトしてしまったので一旦リセットする。
何考えてるんだ、私。本当にどうしちゃったんだろう。
落ち着こうともう一度見上げると陽菜と目がぱっちり合った。
「おはよ、雪ちゃん」
「えっと、おはようございます……」
よく分からないけどまるで聖女のような慈悲深そーな笑みで私を撫でる。
「ねぇ、今日出掛けよっか」
その言葉に思わずビクッと反応する。
外に……出る? やだなぁ。そんな気分じゃないのに。
「まあ、拒否権は無いけどね。どうしても外に出なくないなら……私、もう来ないよ?」
「っ!……なんでですか?」
「あぁ……もう、そんな泣きそうな目で見ないで〜。見捨てるとかそういうのじゃないから」
「じゃあ……なんでっ!」
思わず語気が強まる。もう来ないなんて……そんなの……
「雪ちゃんがね、辛そうにしてると私も辛いの。笑ってて欲しいの。だからさ、一緒に乗り越えようよ。ね?」
「でも……んぅっ……!?」
そんな言葉信じられない。そう言おうとした口は言葉を紡ぐことが出来なかった。
一瞬、何が起きたのか分からなかった。陽菜の顔が目の前まで近づいてきて、唇に柔らかくて、温かい感触がした。
……キスをされた。
そう理解し、パニックに陥る
そんな私の頬を両手で包み込んで強制的に目を合わせられる。
「ふふ。口答え禁止。次からまたそういう事言おうとしたら今みたいにするから。後、言葉で言っても信用出来ないだろうから、行動で示していくから。よろしく」
「……は、はひ」
正直、頭がパンクして思考が上手くまとまらなかった。
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「ね〜こっち向いてよー。無視しないでってばー機嫌直して?ね?」
「…………」
陽菜を無視して立ち上がる。伸びをしながら考える。
よくよく考えたら、私は急にキスされた訳だ。ファーストキスでも無ければキスが嫌いな訳でもない。だからといって勝手にキスしてくるのは如何なものだろうか。そう気づいた私は盛大にむくれていた。
……でもキスされた時は、とても遺憾ではあるが、心地良かった。不快感なんて存在しなくて、ネガティブな考えも無くなって。
ただただ、安心感と幸福感があった。
いちばん近くに陽菜を感じられて今までのどんなキスよりも深く繋がっている気がした。
物理的には触れただけなのに、どうしてなのだろうか。
「……もう1回」
「え?なに?」
その時のことを思い出していると、自然と口に出てしまった。
なんで私は恋人でもなんでもない人にキスを強請ってるんだ!?……怖い怖い。自分の考えと行動が一致して無さすぎて恐怖である。
それでも、私は止まらなかった。
「キス……もう1回して」
「……え?マジで言ってる?自分からお強請りしてくるのは反則じゃない?え、ヤバ、私止めらんないよ?全然やっちゃうよ?むしろもっと過激になるけど。舌とか全然入れますけど?だって、そっちから言ってきたんだもんね……流石に予想外過ぎなんだけど。私の事好きってこと?……いや、まだないな。流石にそこまで行ってないな。心の奥底で私に惚れてたとしてもまだ自覚するはずもないし……てことは無意識的に私のことを求めてるってこと?嘘、最高すぎんか?やば、ヨダレ出てきた。もはやキスだけじゃなくてその先まで良いよってことでは?そうだよね、きっとそうだよね。マジかぁー、濡れてきたわ。めっちゃムラムラする。これはもうやるしかなくない?陽菜さん遠慮しないよ?バチバチに攻めちゃうよ?ガチキスするよ?股ドンしてグリグリしちゃうよ?私のテクが火吹くよ」
……え、何この人。なんか早口でボソボソ言ってて聞き取れないけど雰囲気がなんか……ヤバいんだけど?どんどん獣みたいなオーラ放ってない?目がギラギラしてるよ?少しずつ近づいてくるの怖いんだけど。
思わず後ずさると壁にぶつかる。
気づけば陽菜もベットから降りて立っていてこちらに歩みを進めてくる。
そのまま私の前まで来ると足の間に膝を差し込んでくる。さらに両手を私の方に置き逃げ場を奪う。
……なにこれ。え?え?これってあれだよね?股ドン?そこまでする?そんなにシチュエーション作るの?ちょっとチュッってするだけで良くないかな?
頭が疑問符でいっぱいになっていると陽菜が顔を近づけてくる。
あ、キスされる。
咄嗟に目をとじる。
「んんぅ……ん……?んにゅ…!?」
え、ちょ、なんで舌入れるの!?そこまでしてって言ってない!思わず目を開けるとこちらを見つめながら舌を絡ませてくる陽菜。抗議の意思を伝えようと背中をバシバシ叩くと肩に置かれていた手が離れ、私の両手首を持って壁に押付けて来るではありませんか。抵抗するなってこと?なにそれこわい。
手が使えないので体をよじると陽菜の足の位置が上がってきて股の部分をグリグリしだした。
いやいやいや!!何してんの!?マジで!なんか、エッチな事する流れになってるよ?なんで!?ここまで情状的なキスされると思わなかったんだけど!キスのためのシチュエーションだよね?そうだよね!?
「んー!んんぅ!……んぁ……」
「ふふ…んぅ……かわい」
誰か……誰でもいいから!この変態を止めて!助けてーー!!
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