第3話 暗黒黒炎竜さんは復讐する。
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大体誰かには突っ込まれるので説明しておきたいのですが、ユニコーンを題材したのは某宇宙世紀とは関係なく、ユニコーンは最強の霊獣とも言われていて、作品のテーマに合っていたからです。
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「エラー、エラー、システムの汚染を検知。直ちに初期化プログラムを……」
「お前は要らん。削除だ」
喚き散らす人工精霊を排除して、俺は全神経を集中する。
まだよくわかっていないが。
この白い騎士は、一角獣──ユニコーンを模した騎士だ。
凄まじい魔力を内側から引き出していて、その力で放った砲術が、俺の黒炎結界を貫通する威力を出したらしい。
いやなんだこれ。
たった500年で進歩しすぎじゃない?
これ何体いるの? ねぇ?
「まあ、ともかく、今は──」
俺に痛い思いをさせたあの四騎に復讐しなければ気が済まない。
なぜなら。
俺が、最強最悪、凶悪で邪悪な黒炎竜!
レーヴァニル・ドラグニル様だからだ!
「霊基掌握……。聖素換源オーバフロー……。重力削位……。出力160%」
俺の瞳の虹彩が、竜形態のそれのように細まるのを感じる。
魔力を放出したことで人化が解けて、牙などがそそり立ち唇が引き裂かれる。
「いけぇ!」
ぐおぉぉぉぉぉんと。
白い機体が雷光をまとわせ加速した。
うっひょー!
ドラゴン形態よりもずっと早い!!
『なんだ!?』
『ヴィヴィナ!? 何をして──』
『いや、違う! 敵性個体だ! 各自臨戦態勢で──』
あれ?
もう追いついたのか。
まあ柄にもなく本気出しちゃったからな。
なんか余った予備出力を使って重力操作もしたし。
武器使用は、プロテクトが硬くて突破できなかったけど──。
たぶん、こいつなら素手でも機動力と出力で、なんとかなる。
『なんだあの動き──!』
『砲術照準が間に合わねぇ!』
『各員、自動補正に頼るな! 手動照準に切り替えろ!』
隊長さんらしき人は、少し冷静だね。
でもそれって、めたら打ちってことだよね?
まずは一人。
『ヨハエル!』
『こいつ素手で……!』
なんか
手を抜くとまるで鮮血のように舞い散る。
あははは。
墜落する姿はざまぁないね。
地面に叩きつけられて折角の姿もぐしゃぐしゃだ。
触ったからわかるけど、乗り手を霊核として動いているんだね。
乗り手が死んだら、その魔導加護も失うんだ。
『うわああああああ!』
『こいつこいつこいつ!』
『カストル、エイハン、よく狙って打て!』
そうだよそうだよ。
じゃないと危ないからねぇ。
ほらまた一人死んだぁ!
『エイハン!』
『う、あああ。隊長! 俺は何と戦っているんですか!?』
いやいや? それ俺が一番聞きたいことなんだけど。
『くっ!』
隊長さんは、やっぱり一番冷静な様子だ。
『カストル! 俺が奴の動きを止める! 俺ごと奴を打てぇ!』
小脇に抱えたランスを持ち上げると、俺にむかって正面から突進してくる。
くふ。
じゃあ受け止めてあげる。
ランスの穂先を避けながら、俺は隊長さんの騎士を受け止める。
『カストル! 今だぁ!』
『隊長ぉぉぉぉ!』
でもごめんね。
そのチャンネル、
俺はカストルさんが砲撃を放つ前に、隊長さんの機体をカストルさんの方にむかって蹴り飛ばした。
『クソ野郎ぉぉぉぉぉ!?』
『隊長っ、う、うわあああああああ!?』
チャージした魔力のキャンセルは間に合わないねぇ。
自分自身で隊長さんを撃った感触はどうだい? カストルさん?
『お前はなんだ!? 一体!?』
『答えてやるよ』
『!?』
俺様はレーヴァニル・ドラグニル。
この世界で最強最悪。凶悪で邪悪な黒炎竜様さ!
とりあえず仕返しできて満足したけど……。
まじで
とにかく、もう追いかけられるのも御免だ。
この白騎士もかなり無茶させちゃったし、連戦はきつい。
他のに見つかる前に、巣穴に戻ろう。
白騎士ももちろんお持ち帰りする。
……
…………
………………
巣穴に持ち帰って、色々と調べた結果。
まあ大まかな仕組みがわかった……のと。
やっぱり一番の収穫は、アーカイブを見つけたことかな。
何のためにあるのかはよくわからないけど、この騎士の正体、それから所属している国。
そういうのについてまとめてある。
なんだろうね、外交用のマニュアルなのかな? 取り扱い説明書ではなさそうだけど。
まあ、今は国はどうでもいい。
この騎士の正体だ。
ユニコーンナイト。
そうだね。これはユニコーンの霊基を真似た、人造巨兵だ。
なんでユニコーンなのかも書いてある。
ユニコーンは各国で神聖な獣とされ、勇敢で獰猛。
そして、世界最強の霊獣だ。
おいおい。
そこはドラゴンだろう。と言いたいが、まあ人間たちの言いたいことはわかる。
500年前は、その癒しの能力ばかりで有名だけど、ユニコーンは実はとても強力なんだ。
処女以外には近づかないし、不用意に近づけば一瞬で串刺しも在りうる。
ほら、草食動物だから大人しいけど、怒ったら手がつけられないタイプ。
処女をつれていけばわりとあっさり捕まえられるお馬鹿さんで、確か当時は保護動物だったけど、そのせいで実は内側にある膨大な霊力はあまり知られていなかったんだよね。
癒しの力なんて、能力の一部なんだ。
代々神聖視されてきたユニコーンは、人間たちのテーマ、正義の象徴として扱いやすかったんだろうな。
自分たちの守護者として、一角獣をテーマに取り扱ったと。
でまあ……あとは……人間の智慧に脱帽するしかない。
様々な魔導技術を複合させて、この巨兵を完成させたんだ。
いやいや。
いやいやいやいや?
まずいぞ、ドラゴン。
これ普通に勝てなくね?
俺は自分の体を貫いた痛みで痛感した。
もはや、ドラゴンの地位は安泰ではないのだと。
だがそれは、俺様が世界で最強最悪で凶悪で邪悪な黒炎竜様という事実を崩せるわけじゃないとも理解した。
あくまで人間たちは、このユニコーンナイトなる兵器の力に頼っているだけだ。
それなら人間より優れた俺様が使えば、もちろん強い。
はてさてどうするか。
俺の脳裏に浮かんだ選択肢は3つ。
1つ。他の竜に連絡を取る。
俺以外の同族を頼って、そいつらと相談して現状どうしているか聞こう。
だがこれは次の理由で却下した。
俺には友達がいないからだ。
だって世界で最強最悪だ。
最強っていうのは、孤独なのだ。
2つ。人里に降りてユニコーンナイトの技術を盗もう。
これは一応、中々いいのではないか?
っていうかユニコーンである必要あるのか?
ドラゴンナイトじゃいけないのか?
そこらへんはまだわからない。
三つ目の選択肢を考えよう。
3つ。どこか辺境に引きこもって隠れ住む。
却下。
俺様は最強最悪で凶悪で邪悪な黒炎竜様だぞ。
なぜ他種族から逃げ隠れしないといけない。
うん。
悩むまでもないではないか。
人間から技術を盗もう。
行こうではないか。
人間たちの国へ。
そして五年後──
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