第8話 講演会

 明日、問題の「講演会」がある。

 その為に、部屋の掃除をして、少し執筆をした。

 貫一は、基本的にごはんを作らないので、コンビニの買い物で、ごはんを済ませる。多分、栄養は、偏っている……。


 あらゆる思いを巡らせた事で、今では、少し体調が良くない、何も考えられず、頭の中が、色々攪拌されて、飽和状態だ……。

 貫一の出来ることは、明日の「講演会」に、神経を研ぎ澄ませて、そこで、語られる「世の中」を感じる事だった……。


 彼は、そこで、何を感じるのだろうか?

 ただ、今、雨雲を呼ぶ凪の風が吹く……。

 貫一は、眠りについた。


 やがて、一晩過ぎると、曇りがちな朝が来た……。


 今日は、待ちに待った講演会の日である。

 貫一は、原チャリを走らせ、講演会の会場を目指した。

 路面は、濡れて、滑りやすい……。

 

 貫一は、そこに、何を求めているのだろうか? 

 貫一は、知っている。

 ……精神障碍者を取り巻く環境を、良くする為の活動、つまり、取り巻いている一般の人達への、精神障碍者の啓発と言う、感じなんだろう……。


 現状を語ることによって、精神障碍者の現実を知って、その上で、多くの人達が、結びついて、そこから、行動に繋げる。そう、キャッチ&アクションなんて言いますか!


 貫一は、会場に着いた。

 それは、講演会開演、2時間前の事だった入り口のパネルを見ると、3階の大会議室で、行われることが分かった。

 時間まで、適当に暇を潰していた。


 近くの青果の量販店から買った、ジュースを飲むと、財布には、25円しか残っていなかった。

 時間が押してくると、スタッフと思われる人たちが、会場の設営を始めた。

 貫一は、その様子を見ていた。


 受付台を用意している、知的な女性に目を付けて、メモに書いた、アメブロのコードを、渡すことにした。


 「優しそうな人ですね」

 そういって、近づいた。

 その女性は、「フフ」とほほ笑んだ。

 貫一は、かなりの確率で、そうなることを予見していたが、実際、その通りになると、嬉しくなった。


 「私、アメブロをやっているんです、良かったら……」

 そういって、女性に、メモしておいたコードを渡した。

 女性は、微笑みながら受け取った。


 貫一は、掲げた目的の3分の1を、達成した。

 受付が始まり、多くの人達が、会場の中に入ってきた。

 司会の人が、会場での決まりについて話し始めた。


 やがて、時間が来ると、会場の入り口のドアが閉められ、講演が始まった。

 「ぱるの庭」と言う施設の話だったのだが、年間に200万の運営費かかかり、今年で、7年目という事だ。

 ざっくり、6年間で1、200万円つぎ込んでいるという話だ……。関係機関の連携も、充実していて、情熱もありそうな、様子だった。

 何で、そこまで、出来るのか?

 それを、聴衆の一人が代表に聞くと、「メンバーの些細な変化が、喜びとなって、続けてよかったと思うんです」と、言った。


 貫一は、何か、分かったような、分からないような不思議な気持ちになった。

 

 そして、「法人には、しない、手作りの作業所にしたい」という、副理事長が、運営を一手に引き受け、今では、彼女の替えが効かないらしい……。

 

 大丈夫なのか? 「持続可能な社会の実現」という、観点からみると、不味いのではと、貫一は、思った。

 でも、情報収集が目的なので、敢えて判断はしないことにした……。


 第一部が終わって、休憩の時間になった。

 資料に目を通して、「暮らしやすい地域づくり」と言う話をするようだった。

 前列に座って、気づかなかったが、振り返って見ると、60名位の人数が入っていた。


 やがて、新潟医療福祉大学の先生が、壇に立ち、第2部が始まった。

 精神障碍者の受け止め方に、今は、理解が進んだのか? と思ったら、そうでなく、理解があるはずの、看護の人達の中にあっても、昔の悪癖(不理解)が、まだ、まだ、あると言う……。


 更に、これからは、精神障碍者の仕組み作りを、皆で(色々な立場の人達と共に)、考えて、手を取り合って、作っていかないとダメだと、いう……。

疑応答の時間が設けられ、色々な話を聞いた。

 ある人が、「精神障碍者の人達には、望む教育が受けられない」と言って、訴える人がいた。


 貫一も発言した。

 「情報弱者である精神障碍者は、どこで、私の欲しいPCの機能を学べるのか? 私は、E―メールや、ZOOmや、情報の圧縮や解凍、等々、色々なアプリの使い方が分からない……」といって、先生に、訴えた。


 貫一はぼやいた。

「コンテンツは、結構、あるんだが……」


 すると、色々な人が、そのことについて、解決策を、出してきた、「ぱるの庭」に行けば、誰かが教えてくれるとか、社協に行けばいい等と、色々な意見があった。


 そこで貫一は、誰かが言った、PCのウエブで検索すると、使いたい機能を調べられるという話を聞いた……。

 これを、やってみて、もし、分からなかったら、その時は、社協に連絡して、教えて貰おうという、二段構えを考えた……。

 これで、目的の3分の2が解決した? ……。


 だが、全ての目的が、果たされたわけではなかった。

 最後の3分の1は、作りためた小説の、1~4の作品を、偉い人に、渡す事だったが、結局、それは、出来なかった。

 やがて、講演会が終わった。


 貫一は追われるように家路を急いだ。

 途中、原付バイクの走行中に、雲間の間から、太陽の強い日差しが、差し込んできた。


 それは、貫一の人生に、希望をもたらす、光の様に、思えた。


 次の日から、貫一は、いつもの日常に戻った。

 今回の出来事で、貫一は、この手の筆記のパターンを、一つ覚えた。


だが、貫一は、集中して執筆に取り組んだことよって、疲労してしまい、貫一は、暫くの間、執筆は、休むことにした……。



  達成結果


     1  執筆         八〇%

    2 彼女を見つける     三〇%

       3   財政健全化      九五%

       4 体調の維持       七五%

       




                        




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