第7話 決意
前に、メールの交換をしようとして、時間がなくて、交換できなかった事があった。あれから、7か月以上、経ったが、その気持ちの変化はあったのか? ……
貫一は思った。
……でも、彼女は、俺の事を、嫌いではないはずだ……
貫一は、こずえと、交換できる可能性は、一般の女性よりは、高く感じた。
来週、バレンタインデーが、あるから、そこら辺で、動きがあるかもしれない……。
何の変化もなかったら、今後の進退を考えねばならない……。
貫一は、多くのものを手に入れるため、大きな岐路に立たされていた。
馬鹿、馬鹿と言われ、臭い、臭いといわれ、抗うことが出来ず、死線をさまよった、人間とは、思えないほど、気力が満ちている。
貫一は思った。
……本当は、小説の読める女性が、欲しかったが、そんな、贅沢は、言ってはいられない、これが、最後のチャンスだ……
だが、苦難の末、一山を超えたようで、貫一の人生の視界が広がった、今は、絶好のフィールドにいる。
全ての運は、この時の為にある。
貫一は、ギャンブルをしないが、自称、人生のギャンブラーである。
……俺は、このチャンスに、打って、でる……
彼の存在を賭けた戦いは、今まさに、始まろうとしていた。
講演会まで、あと、2週間を切った。その日の朝は、少し寒かった。
こずえとの交際は、多分大丈夫だと思っていたが、普通の女性と、ちょっと違っていて、そこに一抹の不安を感じていた。
そこで、貫一は、工程を3分割して、こずえとの相性を良くすることにした。
1工程 よく話をする。
2工程 プレゼントをする。
3工程 メルアドを聞く……。
やがて、貫一は、計画通り、こずえと、よく話をすることになった。
今日もこずえとの会話は、楽しそうに始まった。
「今日は、何をするのかな?」
「パンよ、パン」
「僕は、カップラーメンを食べて、おなか、パンパン……」
「やだー」
すると、こずえは饒舌になった。
「ねえ、私って、良く頑張っているでしょ!」
「うん、うん、そうね、分かる、頑張っているよね」
結構しょうもない話で、話を盛り上げた。
ところが、マサルと純二が、その子と会話しようとすると、「それなら、こうするといい」と言うので、こずえは、彼らに何も言えず、皆で、黙り込んでしまう……。
貫一は思った。
……学習の甲斐があった……
彼らの醜態を、見ながら、第一段階の成功に、貫一の胸は高まった。
貫一は、次の段階に移った……。
貫一は思った。
…・・・よし、次はプレゼントだ……
貫一は、古巣のビィーのお店に行き、幸福の種から作ったと言う、3百円の人形のお守りであるキーホルダーを、複数個購入した。
キーホルダーは、始めは、本部の作業場にいる女性達に、あげることにした。
二人が貰って、一人が辞退した。
二人が、貰ったことで、レパートリーが少なくなって、買い足す前に、貫一は、第三段階に進んでしまった。
「こずえさん、メルアド、交換しない?」
「どうしよう」
そう言って、職員のところに逃げて行って、男性職員に「どうすればいいのか?」聞いていた。
そんなに、こずえは、自分の決定権を失っているのか?
貫一の欲しい人は、ある程度、協調性があって、主体性のある女性である。
確かに、貫一は、こずえと、交際することが出来ず、表面的には挫折して、スッテップ・アップ出来ずに失敗したが、結局、その判断は直ぐ出さず、後程することにした。
女性との交際が、中々、前に進まないことに、苛立ちを覚えていた。ただ、話が続くので、昔より恋が実る可能性が、膨らんでいた。
後は、切掛けだけだ。
後、1週間経つと、例の講演会がある。
貫一は、思った。
……行ったところで、何も変わらないことは分かっているのだが、……
ゲームだから、涙が出るはずも、ないのだけれど、何故か、非常に悲しい…・・・。
貫一は、思った。
……私の人生は、何だったのか? ……
昔は、身を切るような、苦しみを味わい、泣き、泣きしながら、先へ、さきへと、前に、進んでいた。
色々な事を乗り越えてきた……。
それなのに、周りでは、自分を潰そう(泣かそう)とする人間が、貫一の周りに、集まってくる。貫一が、足掻いて、そいつ等を倒すと、もっと強力な、もっと醜悪な猛者が、自分に、向かってくる。
貫一は、思った。
……どこで、人生間違えたのかなぁ……
少なくとも3,4人を倒し、その人達の人生を狂わせてしまった。
もう、そんな生き方をしたくない……。
では、どうしたらよいのだろうか?
そこで、彼の心は、水面に移る鏡のように、無駄なものをはぎ取り、心を研ぎ澄ませ、自分の将来を思い描いた……。
貫一は、そこで心を考案した。
……これからは、改心して「愛に生きる」人生がいいなぁ……
愛とは何か? それは、「些細な幸せ」…・・・では、生きる事とは、何か? その「些細な幸せ」を、「育てる」事……。
まだ、降るのか?
ひらひらと、湿った雪が舞った。
これは、春を呼ぶ雪だ……。
どうせ、消えゆく運命ならば、「今の幸せを」どこまで、育てられるか? 墓場のじっちゃんに、見せてやろう…。
貫一は、硬く決意した。
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