第2話 悲しみ

 そんな、貫一には、思い続けた、ある思いがあった。

 それは、彼女と共に、数人の友達と、仲良く生きて行くこと……。

 しかし、貫一にとって、それは、とても、難しい事だった。

 真に友達と、言えるのは、ここの裕司と、中央区にいる及川一馬と、チャラ男の清だけだった。

 彼らとは、電話で、時々やり取りする以外は、余り深い関係を持つことはなかった。彼女は、見つからなかったので、貫一は、女性についての特有の心理の勉強を していた。


 貫一は、不安で、不安でたまらなかった。

 何が不安なのか、分からないまま、時が過ぎていった。


 そういった生活の中で、貫一は、内部障害の便通障害のために、お通じの記録を、取らなくてはならなかった。やがて、その記録の脇にメモ書きを加えるようになっていた。


 そんな、ある日、その記録を見返して、過去の自分が、思っていた事が、断片的に分かる事に気づいた。


 そこで、40枚綴りの大学ノート買って、本格的に、記録を付け始めた。

 それと同時に、座右の銘のノートを作り、何日もかけて、ページを埋めていった。パソコンがあったので、そこにある、PCのエクセルを使って計算して、それを、ノートに書き写して、毎日のお金の動きを、睨んでいた。


 なんで、こんなことをするのか、分からないのだが、時間があったので、暇つぶしの為に、やっているような、所があった。


 貫一は、感じている。

 ……人生は、ゲームなのさぁ……

 だから、勝ちゲーム(自分の思いを達する事)を実現するには、まず、世の中のルールを、知らねばならなかった……。

 そこで、硬い本を読んで、学習していた。


 でも、貫一は、その事で、頭でっかちになっていたようだ。貫一の周りには、こんな事をする人間はいなかった。皆、生まれたままの、純粋な心を持っていた。


 それなのに、貫一には、人間関係を計算する癖がある。

 及川は、別として、裕司と、清は、とても純粋で、一緒にいると癒される。職員が辞めると、男涙を流して、彼らを惜しんでいる。貫一には、それが、出来なかった。


 ある日、喫煙所で、職員の太郎さんと、裕司が話していた。

 「あっ、あっ、愛がないと、生きていけないんです」

 職員の太郎さんは、面白がって、「そうか、そうか」と、頷いたのを不思議な思いで、見ていたことを覚えている。

 その話を聞いて、貫一は、裕司が、「愛」の塊の様にみえた。そんな人間が、何で、こんな所にいるのか? 貫一には、分からなかった。


 及川も、中央区で、グループホームに入って、作業所に通っているという……。

 あれだけ、能力があるなら、貫一より2才上なのに、20代の美人の彼女と、交際する力があるなら、直ぐに、一般就労できるじゃないか? 世の中って、そんなに厳しいのか?


 貫一は、世の中に出る為に、頑張ってきた経緯があるので、働く能力があるのに、それを、発揮しない様子に、違和感があった。彼らに不寛容な、世の中に対する不満を感じた。

 やがて、それについて、考えなくなっていった。


 人の思いは、様々だ……。

 そう思うようになったのは、かなり、最近の事である……。


 だが、貫一は、その事について、漠然とした不安があった。

 ……世の中って、そんなに、不寛容なのか? それを、知るために、もっと、積極的に、世の中に関われないのか? ……

 貫一は、そう、考えていた。

 しかし、そこに、出口が見つからず、悶々としていた。

 ……何かあるはずだ……

 そう考えて、万が一の保険の為に、文筆活動を続けていた。


 でも、貫一の文筆活動は、最初は、面白がって書いていたが、次第に、義務化して、最終的には、筆を止めることになった。

 何故なら、発表の場が、無いからだ……。誰も、面白いと言ってくれないからだ……。


 後ろ髪惹かれる状態が、1か月を過ぎるころ、貫一は思った。

 ……最近、書いていないな、ちょっと、書いてみようか……

 そう、思うようになった。どうも、貫一には、これらの不安を癒すために、文章を、書く癖があるようだ……。


 話は、逸れたが、ここで、貫一がしなければならないのは、目的を達成するために、上位の目標や、下位の目標を、設定する作業を、目的から逆算する事だった。


 貫一は、ニュースソースとして、区報を収集していて、その中で、気になった、行事を、チェックしていた。

 令和5年2月の26日に、精神障碍者の講演会があることを知った。

 そこで、それを、スケジュールに落として、それに合わせて、もろもろの目標を、いくつか設定することにした。


 上位の目標は、4つあって、一つ目が、小説の執筆件、2つ目が、彼女との出会いの件で、3つ目が、財政の健全化で、4つ目が、不測の事態に備えることであった。マイルストーンが、決まっているので、当面しなければならない、下位の目標は、案外、簡単に立てられる。


 1つ目の執筆は、休日を使って、少しずつ書いていく……。

 2つ目が、彼女との出会いであるが、当面は、女性の心理の勉強にあてる……。

 3つ目の財政は、帳簿を見ながら、節約して、2か月で1万円を、捻出する……。

 4つ目は、メンタルを整えて、問題が起こっても、徹夜に耐えられる余禄を残すこと……。


 後は、達成期限を決めて、期限まで日記を書く、期限が来たら、その目標に対する行動を、評価することだ。でも、目標に向かっている途中で、問題が起こることがある。

 その時は、問題を、3から10分割して、更に知識を取り入れ、トライして、ひとつずつ、乗り越えていくのである。

 貫一は、目標に向かっているときは、雑念に縛られる事は、余りなかった……。

 そこに、不安は、余り感じなかった。

 ある事象に、フォーカスする……。


 貫一は、そのことを思った。

 ……これは、ゲームなのさ……

 貫一は、少し悲しそうな顔をした……。

 その悲しみは、貫一が、これらの能力を使い、もっと、大きな仕事をして、大金を動かす、サラリーマンに、なりたかった? からなのかもしれない……。


















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