第23話

香織と涼介は、嶋田啓介の告白により医療ミスが意図的であったことを確認した。次に、彼がなぜそのような行動に出たのか、その背後にある理由を探ることにした。彼らは、さらに病院内の調査を続け、過去の記録を調べることに決めた。


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嶋田の告白後、香織と涼介は彼のオフィスに残された資料を徹底的に調査した。ファイルキャビネットの奥には、過去の手術記録や薬剤の使用履歴が保存されていた。彼らは慎重にそれらの資料を調べ始めた。


「涼介、このファイルを見て。過去にも薬剤の取り違えがあったようだ。」香織が指摘した。


「確かに。しかも、それらの記録が不自然に隠蔽されている。これは嶋田が過去にも同様のミスを繰り返していた可能性が高い。」涼介は資料を見ながら答えた。


二人は嶋田の過去の行動を詳しく調べるために、さらに多くの証拠を集めることにした。次に目をつけたのは、嶋田と長い付き合いのある古株の医師、斎藤誠(さいとう まこと)だった。


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斎藤医師は、病院の創立当初から働いているベテラン医師であり、嶋田との関係も深かった。香織と涼介は、斎藤に接触し、嶋田の過去について話を聞くことにした。


「斎藤先生、お忙しいところすみません。私たちは三田村・藤田探偵事務所の三田村香織と藤田涼介です。嶋田部長に関する調査を行っています。」香織が挨拶した。


「どうぞ、お座りください。何かお力になれることがあれば。」斎藤は穏やかな笑顔で迎え入れた。


「嶋田部長の過去の行動について、お聞きしたいのです。特に、過去に医療ミスや薬剤の取り違えがあったことについてご存知でしょうか?」涼介が尋ねた。


斎藤は一瞬、表情を曇らせた後、深いため息をついた。「実は、嶋田君とは長い付き合いです。彼は非常に優秀な医師ですが、過去にいくつかの問題がありました。」


「問題とは具体的にどういうものでしょうか?」香織がさらに問い詰めた。


「彼は一度、重要な手術で重大なミスを犯しました。そのミスを隠すために、記録を改ざんしたことがあるのです。その時は大きな問題にはなりませんでしたが、それが彼の行動に影響を与えたのかもしれません。」斎藤は重い声で語った。


「そのミスについて、もう少し詳しく教えていただけますか?」涼介が促した。


「その手術では、患者に対して誤った薬剤が投与され、結果的に患者の命を危険に晒してしまいました。嶋田君はその事実を隠すために、薬剤の記録を改ざんし、責任を逃れようとしたのです。」斎藤は悲しげに言った。


「つまり、今回の美咲さんの件も同様の行動だったということですね。」香織が確認した。


「そうです。彼は過去の過ちを繰り返してしまったのです。」斎藤は深いため息をついた。


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斎藤医師の証言により、嶋田啓介の行動の背後には過去のミスが影響していることが明らかになった。香織と涼介は、さらに証拠を集め、嶋田の行動を公にするための準備を進めた。


「次に、私たちは病院の上層部にこの証拠を提出しなければなりません。彼らが対応しない場合、法的措置も視野に入れる必要があります。」涼介が言った。


「そうですね。私たちは石川隆さんと美咲さんのために、真実を明らかにしなければなりません。」香織も決意を新たにした。


二人は集めた証拠と斎藤医師の証言をまとめ、病院の理事会に提出する準備を整えた。嶋田啓介の行動が明らかにされることで、病院全体が再び信頼を取り戻すための一歩を踏み出すことになるだろう。


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そして、理事会の席上、香織と涼介は全ての証拠を提示した。緊張が走る中、彼らのプレゼンテーションは静かに始まった。


「私たちが集めた証拠は、嶋田部長が過去に重大な医療ミスを隠蔽し、それが今回の石川美咲さんの死につながったことを示しています。」香織が力強く語った。


「これらの証拠に基づき、嶋田部長の行動を徹底的に調査し、責任を追及することを求めます。」涼介が続けた。


理事会のメンバーたちは真剣な表情で証拠を確認し、議論を重ねた。やがて、病院の理事長が立ち上がり、静かに口を開いた。


「三田村さん、藤田さん、あなた方の調査に感謝します。我々はこの問題を重く受け止め、適切な対処を行います。嶋田部長には法的責任を追及し、病院全体として再発防止策を講じることを約束します。」


香織と涼介は静かにうなずき、石川美咲の無念を晴らすための第一歩が踏み出されたことを感じた。彼らの努力が実を結び、病院は再び信頼を取り戻すための道を歩み始めた。


「これで美咲さんの魂も少しは安らかになるでしょう。」香織は静かに呟いた。


「そうですね。次の一歩は、病院全体が再発防止策をしっかりと実行することです。」涼介も同意した。


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香織と涼介は、石川隆に報告するために病院を後にした。彼らの心には、美咲の無念を晴らしたという達成感と、再発防止への強い意志が宿っていた。


「香織、涼介、本当にありがとう。美咲の無念を晴らすことができた。」石川隆は涙を浮かべながら感謝の意を伝えた。


「これからも、真実を追い求め続けます。美咲さんのような犠牲者が二度と出ないように。」香織は力強く答えた。


「私たちは常にあなたの味方です。」涼介も同意し、笑顔を見せた。


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香織と涼介の調査はまだ終わらない。次なる真実を追い求めるために、二人は新たな一歩を踏み出した。真実を追い求める彼らの旅は、まだ続いていく。

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