第22話
香織と涼介は、病院内での調査を進める中で、複数の証言や不自然な記録の痕跡から、医療ミスが意図的に行われた可能性に気づき始めた。次のステップは、さらに詳細な証拠を集めることだった。
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ある日、香織と涼介は、手術当日に立ち会った看護師の中村由美(なかむら ゆみ)に話を聞くことにした。彼女は当日の状況について、より詳しく知っている人物の一人だった。
「中村さん、手術当日に何か不審な点に気づいたことはありませんでしたか?」香織が優しく尋ねた。
「正直に言いますと、手術当日は非常に緊張感がありました。でも、薬剤の取り扱いに関しては、何か違和感を覚えていました。」中村はためらいながら答えた。
「具体的にどのような違和感を覚えたのですか?」涼介が続けて尋ねた。
「嶋田部長が薬剤を準備しているところを見たとき、彼が普段とは違う手順を踏んでいたのを目撃しました。それが何かおかしいと感じましたが、当時は深く考えませんでした。」中村は思い出すように言った。
「それは重要な情報です。もう少し詳しく教えていただけますか?」香織が促した。
「嶋田部長は、薬剤を取り扱う際に一度部屋を出て、再び戻ってきました。その間、誰も彼が何をしていたのか確認できなかったのです。」中村は心配そうに答えた。
「ありがとうございます、中村さん。この情報は非常に重要です。」香織は感謝の意を表し、次のステップに進むことにした。
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次に、香織と涼介は、病院内の監視カメラ映像を再度確認することに決めた。特に嶋田啓介が薬剤を取り扱っていた時間帯の映像を細かくチェックすることにした。
「涼介、ここに注目して。嶋田が薬剤を持ち出してから戻ってくるまでの時間が不自然に長い。」香織がモニターを指さしながら言った。
「確かに、この間に何かをした可能性があります。」涼介は映像を巻き戻しながら同意した。
二人はさらに映像を分析し、嶋田が薬剤を持ち出した後、監視カメラの死角に消える様子を確認した。その後、再び現れたときには薬剤のボトルのラベルが微妙に変わっていることに気づいた。
「これが証拠です。嶋田は薬剤を持ち出し、何かをした後で戻している。」香織は確信を持って言った。
「しかし、何をしたのかを突き止めなければなりません。次は彼のオフィスを調べる必要があります。」涼介も同意した。
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その夜、香織と涼介は病院が静まった後、嶋田のオフィスに忍び込むことにした。二人は慎重にオフィスのドアを開け、内部を調査し始めた。
「涼介、ここを見て。薬剤のボトルが並んでいる。」香織が棚を指さした。
「この中に証拠があるはずです。すぐに調べましょう。」涼介は手早くボトルを調べ始めた。
その中に、疑惑の薬剤ボトルが見つかった。ラベルには微妙な変更が加えられており、内容物が異なっている可能性が高かった。
「これが美咲さんに投与された薬剤だ。間違いない。」香織はボトルを慎重に手に取り、涼介に見せた。
「これを元に、さらに証拠を集めましょう。これで嶋田の行為を公にできるはずです。」涼介は確信を持って答えた。
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次の日、香織と涼介は集めた証拠をもとに、嶋田啓介と対峙することを決意した。彼の行為を明らかにし、美咲の死の真相を突き止めるために。
「嶋田部長、私たちはすでに多くの証拠を手に入れました。あなたが薬剤を改ざんしたことは明らかです。」香織が強い口調で言った。
「証拠?そんなものはありません。私は何もしていない。」嶋田は冷静に答えたが、その目には動揺が見えた。
「この映像を見てください。あなたが薬剤を持ち出し、戻した後でラベルが変わっているのがわかります。」涼介が証拠映像を見せながら言った。
「それに、このボトルです。これは美咲さんに投与された薬剤で、内容物が異なっています。」香織がボトルを示した。
「私は…」嶋田は一瞬言葉を失い、その後深いため息をついた。「確かに、私は薬剤を取り違えました。しかし、それは故意ではありませんでした。」
「しかし、隠蔽工作を行ったことは事実です。美咲さんの命を奪った責任を取るべきです。」涼介が強く言った。
嶋田は頭を垂れ、静かに言った。「わかりました。全てを認めます。彼女の死は私の責任です。」
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こうして、香織と涼介は嶋田啓介の関与を明らかにし、真実を突き止めることに成功した。美咲の命を奪った医療ミスの真相が明らかになり、遺族に真実を伝えることができた。
「香織、涼介、本当にありがとう。美咲の無念を晴らすことができた。」石川隆は涙を浮かべながら感謝の意を伝えた。
「これからも、真実を追い求め続けます。美咲さんのような犠牲者が二度と出ないように。」香織は力強く答えた。
「私たちは常にあなたの味方です。」涼介も同意し、笑顔を見せた。
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香織と涼介の調査はまだ終わらない。次なる真実を追い求めるために、二人は新たな一歩を踏み出した。真実を追い求める彼らの旅は、まだ続いていく。
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