第14話
香織と涼介は真城拓真に再度接触し、より詳細な話を聞くことに決めた。彼らは、真城の行動に不審な点が多いことを確信し、彼の動機や背景を掘り下げることで事件の真相に迫る必要があった。
真城拓真のオフィスに到着すると、彼はやや緊張した様子で二人を迎え入れた。香織は穏やかな笑顔で話し始めた。「真城さん、先ほどお話しした内容について、もう少し詳しく教えていただけますか?」
真城は一瞬ためらったが、やがて口を開いた。「ええ、もちろんです。昨夜のことですが…」
「氷室玲奈さんに対して、あなたが尊敬の念を抱いていることは理解できます。しかし、最近の行動には少し不審な点が見受けられます。例えば、玲奈さんの仕事を覗き込んだり、残業中に話しかけたりしていたことについて、どうしてそのような行動を取ったのですか?」涼介が直接的に尋ねた。
真城は一瞬目を伏せ、深いため息をついた。「実は…氷室さんには特別な感情を抱いていました。彼女の仕事ぶりに感銘を受け、彼女のようになりたいと思っていました。しかし、それだけではなく…彼女に対する気持ちは、ただの尊敬以上のものでした。」
香織は真城の言葉に耳を傾けながら、その表情を注意深く観察した。「特別な感情、つまり恋愛感情ということでしょうか?」
真城はうなずき、苦笑いを浮かべた。「はい、そうです。でも、彼女にその気持ちを伝える勇気はありませんでした。ただ彼女の近くにいたい、それだけだったんです。」
「その感情が、昨夜の行動に繋がったということでしょうか?」涼介が続けて尋ねた。
「そうかもしれません。でも、処方箋の盗難には関係ありません。私はただ、彼女の仕事に興味があっただけです。」真城の声には真実味が感じられたが、完全に疑いを晴らすには不十分だった。
「わかりました。真城さん、協力していただいてありがとうございます。」香織は礼を言い、真城と別れた。
---
次に、香織と涼介は内科医の永井浩一について調査を進めることにした。過去に不正行為の疑惑が持たれていた彼の行動も、不審な点が多かった。
二人は永井のオフィスに向かい、彼と再度話をすることにした。永井は冷静な表情で二人を迎え入れたが、その瞳にはどこか緊張の色が見え隠れしていた。
「永井先生、もう少しお話を伺いたいことがあります。特に、過去に不正行為の疑惑があったと聞きました。その件について教えていただけますか?」香織が慎重に尋ねた。
永井は一瞬目を閉じ、深いため息をついた。「そうですね、その件についてはお話しします。過去に、患者さんの治療に関するデータを改ざんした疑惑がありました。しかし、それは誤解でした。最終的には何も問題はなかったと結論づけられました。」
「その疑惑が晴れた後も、あなたの行動には注意が払われていたのでしょうか?」涼介が続けて尋ねた。
「はい、もちろんです。それ以降は一切の不正行為はしていません。昨夜のことも、ただ患者さんのために必要な薬を取りに行っただけです。」永井の言葉には一貫性があり、その表情からは真摯さが感じられた。
「わかりました。ありがとうございます。」香織は礼を言い、永井と別れた。
---
香織と涼介は、真城と永井の証言を元に、さらに調査を進めることにした。二人の行動には不審な点が多いが、まだ決定的な証拠は見つかっていない。
「真城拓真の感情と行動、そして永井浩一の過去の疑惑、どちらも怪しいけれど、まだ全てが繋がっていない。」香織は考えを巡らせながら言った。
「そうだね。もう少し掘り下げて調べる必要がある。特に、真城の行動に関する証拠を見つけることが重要だ。」涼介は同意した。
二人は再び防犯カメラの映像を確認し、病院内の出入り記録を詳しく調べることにした。次第に明らかになる陰謀と、氷室玲奈の過去に隠された秘密が、彼らの前に立ちはだかるのだった。
彼らの調査は次第に核心に迫りつつあった。真城拓真と永井浩一、どちらも怪しいが、真実を明らかにするためにはさらに深い調査が必要だ。香織と涼介は、事件の真相を解明するために全力を尽くし続ける決意を新たにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます