第27話 人気投票終了、そして増田はある意味奇跡の再会?
SNS人気投票が始まってから6日と23時間56分。つまりあと4分で最初の順位が発表される。上位5名に残れるかどうかで明暗が分かれるが、果たしてどうだろうか。神童アリサの運命や如何に?
そして、発表の時間がやって来た。
さて、結果はどうだ。俺はパソコンからGRASNOWの公式SNSに飛び、投票結果発表のURLをクリックした。
「神様、仏様、お願いします!」
そう言って一思いにマウスをクリックする。
次の瞬間、目の前に順位表が映し出される。
「神童アリサは……、よしランクインしてる! 2位だ! やった!」
俺は喜びを噛み締めガッツポーズをした。良かったぁ。俺達が必死の思いで作ったファンサイトが功を奏したな。ああ、そのファンサイトなんだけど今凄い事になっている。
俺達が作ったファンサイトは株式会社MADMAXに売却し、本当にオフィシャルファンサイトとなった。
俺達にはたんまりとお金が入ってきた訳だが、京田は大学の学費に向けて貯金、芦屋さんは画材や絵を描くためのタブレットとパソコン、残ったお金で両親や弟にプレゼントを買ったらしい。2人共堅実で優しいお金の使い方だ。
俺はというともちろん神童アリサ推し活の活動資金とさせていただきます。なぁに、粗●じゃあるまいし、株とか公営ギャンブルに注ぎ込まない限りはなくならない額が手に入ったから当分は困らない。バイトもする必要無さそうだ。
話を戻そう。どれどれ一応全体の順位も確認して傾向を掴んでみようか。
1位は……、戌威メラ。
「やっぱりかぁ……、そりゃ当事者の俺らから見ても相当カッコ良かったもんなぁ……」
実はあの水族館の出来事がまるでダークヒーローのようだとネットで話題となり、歌って踊って殴れる歌い手として一躍有名になった。SNSも彼女の関連トレンドで埋め尽くされていた。それが投票に影響したのか2位の神童アリサとほぼダブルスコアの差をつけていた。やっぱり、話題性がある人に投票は集まりやすいと勉強になった。
以下が順位及び獲得ポイント(投票数をすごーく賢い計算式でポイント数に換算したもの)一覧である。
1位
2位
3位 こすもテスラ【330】
4位 RISHA【325】
5位
6位
7位 ピリオド
8位 GUMIGUMI【152】
9位
10位
ランキング圏外
ほほう、まあ特別招待枠の5人は順当にランクインしてるな。流石、ここで落ちるような人はいないか。どれ、他の人はというと。
6位の宍戸七瀬は最近人気が出始めた有望若手株か。どうやら15歳らしい。神童アリサと同じく顔出ししてない、正体不明のシンガーソングライターだ。
7位のピリオド野田は芸人だ。ネタはともかく彼女は芸能界の中でも屈指の歌唱力を誇っている。舐めていたら足元を掬われるぞ。
8位のGUMIGUMIはVTuberか。大手VTuber事務所メメント・モリ所属の一番人気は油断出来ないな。ファンも多いし歌唱力も中々。心を掴むのが上手そうだ。
9位の青椒肉絲は歌い手だな。この人も昔から知ってるだけにランキングに入っているのは感慨深いが、今回は神童アリサを応援させて貰おう。
10位は……、って誰だよ! 何だぁこのふざけた名前! いやいや歌が意外に上手かったりして……、っていやめっちゃ下手じゃん。どーいう事だってばよ。
ネットでその名を調べるとその答えが分かった。
5ちゃんねるにこんなスレが立っていた。
『歌い手の大会、人気投票で珍毛棒棒1位にして特別招待枠ファン泣かそうぜ』
ふざけるなぁぁぁ。クソニートどもが。どんだけ暇なんだよ。こちらとらファンサイト運営してまで命懸けでやってんだよ。なのにこんなふざけた名前とふざけた奴らに負けてたまるか。てか運営に通報してやる。首を洗って待ってろよ。
俺はさっそくそのスレを運営に通報、京田に頼んでサイトで注意喚起を行ってもらうことにした。
新藤さんはというと……、ランキング圏外か。まだこれからチャンスがあるのかもしれない。頑張ればまだ挽回出来るかもしれないので引き続き応援したい。神童アリサに勝つのは流石に厳しそうだけどね。でも、新藤さんもトップ5とまでは行かずとも、10位以内に入ってくれたら嬉しいなぁ。
さて早ければ明日の午前9時に2つ目のお題発表である。さぁ次はどんなのが来る?
まあ考え事は後にして外に出るか。今日は見たい映画があるんだ。
俺が見たい映画『世紀の大決戦~肉弾頭大村vsキャリーケース中村~』が今日から上映開始なんだ。
俺はウキウキで家を出て自転車を漕ぎ、地元の映画館にやって来た。チケットを買い、ポップコーンとジュースも買う。そして上映開始10分前になったので中に入る。
しかし案内された4番スクリーンに入ると人っ子1人いなかった。
うそぉ! こんなに面白そうなのに何で1人もいないの?
俺は悲しい気持ちになりながら映画●棒のCMを見ていると、
「お隣よろしいかしら」
聞き覚えのある女の人の声がした。
「いいですけど、こんなに席空いてるのにわざわざ隣に……って! あなたは、あのときの!」
「お財布救出ガールで~すフリフリ」
そう言って俺の席の隣に腰掛ける眼鏡の美少女はあの日、新藤さんと再びカラオケの約束をした日、俺の財布を拾ってくれた恩人だ。見ないうちに髪型を変えたのか、黒髪に緑色のメッシュが入っている。
「どうしてここが……」
「たまたま見かけたんですよ、映画館に向かうあなたを……さて」
そう言うと眼鏡の美少女は俺の顎に滑らかな手を伸ばしてきた。
「ひっ、何ですか」
眼鏡の美少女は手を顎から喉仏付近までスライドさせ、優しく撫でながら薄ら笑いを浮かべた。
「必ずお礼させて下さいって言ってましたよね? 忘れたとは言わせませんよニッコリ」
「はっ……はひぃ……」
どうやら簡単に口約束はしてはいけないらしい。そのせいで俺は全く映画に集中出来なかった。
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