第19話 計画通り?芦屋さんと京田の策謀
私は安堵しながら電話を切った。この前あんな事言った手前、自分から誘うのは勇気がいったけど、増田さんが乗り気になってくれて良かった。しかし、電話中ずっと峰田さんの機嫌が悪かった。何回か割り込まれそうになったし……。
溜め息を吐きながら後ろを見ると、メラメラと赤黒い炎のオーラを纏った峰田さんの姿があった。その姿、まるで鬼神の如き。
「あの、峰田さん? どうしたんですか?」
「許さない……、許さない……、許さない……、ウチのアリサを誑かしやがって……、許せない! 増田ァ!」
「ひっ! ポケ●ン株式会社のチーフ・クリエイティブ・フェローみたいな呼び方しないで!」
「アリサ、当日は計画通り行うわよ? いいわね?」
「はっ……、はい……」
やばい。完全に峰田さんが豹変している。こうなってしまったら私はおろか、事務所の社長さんですら止められない。荒ぶる峰田さんは無敵なのだ。
「ごめんなさい、増田さん。どうやら大変なことになりそうです……」
―――――――――――――――――――
2日後、俺達は待ち合わせ場所の駅に来ていた。え? 何で複数形かだって? それは……
「よっ、増田! 今日はよろしくなー!」
「増田ちゃんの彼女、早く来ないかなー!」
京田に芦屋さんが悪ふざけでWデートしようとか言ったからなんだよ!
思い返せば、あの時から全ては始まっていたのかもしれない。
俺の記憶は新藤さんと水族館デートの約束をした直後まで遡る。
―――――――――――――――――――
電話を切った俺は満塁ホームランを打った野球選手くらい雄叫びを上げた。
「よっしゃ! 水族館デートだぁぁ! 勝ち組! 勝ち組! 勝ち組! いつも手にするのは勝利の女神様! ヤ●ダ電機!」
言うてる場合か! これはあれだな。誰かに自慢せずにはいられない感情だ。そ~~だ! 京田君に電話をかけてやろう。アイツが俺に勝ってるのは学歴と人柄だけだからなあ。俺が水族館デートに行くと言えば。びっくり仰天してそのまま昇天してしまうかもしれない。あ、韻踏んじゃった。ラップの才能あるぅ~俺!
ウキウキの気分で俺は京田に電話をかけた。
『もしもし、どうかした? サイトの運営は順調だぞ』
「そーかそーか! それは何よりだ。ところで京田君よ~。俺天才かもしれないよ」
「へー世も末だな。何かあった?」
「ふっふーん! よくぞ聞いてくれた! 私は恋の神様に愛された男、増田。何と新藤さんと水族館デートに行くことになったぞ! どうだ! 俺はやってのけたんだ! これで臆病者の汚名は返上させてもらう!」
「な~るほど、そーいう事ね。良かったじゃん」
あまりに淡々とした京田の返答に俺は違和感を感じた。
「え? 何か思ってた反応と違うんだけど……」
『いや、充分びっくりしてるよ。でもさ、まさか向こうからかけてくるとは思わなかったな……』
「え? 何で新藤から電話かかってきたって、知ってるの? 俺一回も言ってないし、何ならさっきの事だし……。え……? どういう事?」
『え、そりゃお前のスマホ、ハッキングしてるからな。全部筒抜けだぞ』
俺は京田の言っている意味が分からなかった。そうしてだんだんと、事の重大さに気付いた。
「は? はぁ? はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?」
『はぁの三段活用か! てか気付いてなかったのか』
「気付く気付かない以前にテメー! 犯罪だろ! 普通に! プライバシーの侵害だ! 親しき仲にも礼儀ありだ! お前はやってはいけないことをやった! 裁くのは俺のス●ンドだーー!」
『いや、先にやらかしたのお前だから。お前あの日コーラを俺にぶっかけたよな? だが、水没したのは俺だけでなく俺が毎日必死に育成したゲームソフトが入ったカセットを台無しにしやがって! この恨み、末代まで呪ってやる!』
どうやらあの時のコーラが引き金になっているようだ。でもそれは不可抗力だし、俺だって京田に金渡したのに、まだ根に持っているのかとびっくりした。
「なっ! それはゴメンだけど、お前に金払っただろ! 何が不満なんだ!」
『ゲーマーにとってソフトのデータが飛ぶのは死よりも辛い。一生をかけて償うんだ! もし反抗しようとしたら、お前が検索したエロ動画の履歴全部言ってくぞ!』
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ! やめてくれぇぇぇ! 精神がぁぁぁぁ!」
『まあ、それはどうでもいいから置いといて。お前土曜日に意中の子と会うんだろ? 俺と芦屋さんも協力するから、その子に会わせてくれよ!
「なっ! お前そういうのに興味あったのか! てか芦屋さんまで! というか邪魔するなよ! 俺達の恋路(一方通行)を」
『まだ付き合ってないんだろ? 俺と芦屋さんが彼氏彼女のふりをして色々サポートするって提案してあげてるっつーのに、何だその態度は? ようしじゃあお前のLINE操作してお前の親にエロ動画のリンクを……』
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ! それだけはぁぁぁぁ! やめてくれぇぇぇ! わかった! 言う事聞くからぁ!」
『あ、間違えてお前のLINEから新藤さんにWデートの誘い打っちゃった』
京田の爆弾発言に俺は発狂した。
「どぅえーーーーーー! 何やってんだ、お前!」
『あ、でも返事帰ってきたよ。全然大丈夫です! 面白そうですねだって』
「え? 認めたの? くそぅ、本当だぁ!」
認めたくはなかったが、新藤さんがノリノリだった。くそう、せっかく2人であんな事やこんな事したかったのにぃぃぃ!
『と、言うわけで当日はよろしく!』
「うわあああああん! せっかくの休日がー!」
貴重な休日が京田の策謀によって潰されたのであった。
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