第17話 非公式ファンサイトのおかげで好発進!しかし、新たな問題が……
良々塊社長に会ってから10日後の今日、すなわち今日が大会の開始日だった。
私は所属事務所
私のイメージディレクターを務める
そして、その時間は突然訪れた。
21:30―――
「GRASNOW側からお題が発表されました!」
デスクの社員さんが声を張り上げた。
「最初のお題は―――――――SNSファン人気投票です! ええと、期間は1週間、この大会に参加している歌い手の中から1人好きな人を選び投票する。投票はGRASNOWの公式Xのリンクからして欲しいとのことです!」
そう来たか! それが率直な感想だった。
「アリサ! 今すぐSNSでファンに投票の呼び掛けをしろ! YouTubeやX、Instagramでの告知も忘れずにな!」
事務所の社長が的確に指示を出す。慌てて私は自身のSNSを更新しようと、スマホをポケットから取り出した。
「てか、マズいですよねこれ。だってアリサちゃん……、まだファンクラブないですから」
後ろで社員さん同士がヒソヒソ声で喋り合っている。聞こえてるけどね。でも、確かにそうだ。
ずっと面倒で作ってなかったファンクラブ。ファンクラブがあれば集客もさることながら、私を応援してくれるファンの方々を1ヶ所に集めることができる。しかし、残念ながら私はそういうのを持ってないので一歩出遅れた形になる。
私は最近有名になったものの、知名度的にはあの4人に劣る。さらに4人とも既にファンクラブが存在するので投票を呼び掛けやすい。一般参加者側にも油断できない猛者達がいる。
てっきり私は歌の課題が来ると思い込んでいたのだが、認識が甘かったようだ。
これは考え直さないといけないかもしれない。
状況を打破したいが、急には動けない。だから、今出来ることを全力でやろう。そう思い直していると、
「すみません。これ、見て下さい!」
社員さんの1人が叫んだ。
一同その社員さんのパソコンを覗き込むと、そこには衝撃的な光景が映し出されていた。それは……、
「え? これは何?」
「アリサのファンクラブ? え? 何であるの?」
皆混乱していた。そりゃそうだ。私ですらびっくりしているのだから。目線の先には、非常にクオリティーの高い私のファンサイトがあった。
「どうやら……、誰かは分からないですが、有志の方が作ったと思われます。でもこれ凄いですよ。作り込みが! このイラストとか見て下さい!」
「ほほう、アリサのイラストか。誰かは分かんないけど描いた人才能があるねぇ。私の弟子にしたいぐらいだ」
私のイメージディレクターでイラストを描いてくれているCHEGEBARAさんもこのサイトの出来に唸った。
「えっ……、どういうこと?」
私は分からなかった。
なぜファンクラブがあるのか。なぜ突如としてこんないいタイミングで現れたのか。疑問が渦を巻く。
そして、私はあることを思い出した。それは彼の一言。
『ファンクラブを作りませんか!』
まさか……、増田さん?
彼だ。彼しかいない。
「見て下さい! どんどんアリサの投票数が伸びています! Xでも話題になってますよ! クオリティー高過ぎって!」
「うおおおー! どこの誰か知らんが本当にありがたい! 後でサイト運営者に掛け合ってサイト購入できないか検討しよう! さっそく会議だ!」
「アリサはSNSの更新怠るなよ! これはアリサを羽ばたかせるビッグチャンスだ! 絶対に手離すな!」
事務所に活気が溢れる。社員さん達は突然吹いた追い風に戸惑いながらも素直に感謝し、社長さんはこの機会を活かすべく行動を開始した。
皆の動きが円滑になる。全部、彼のおかけだ。私があんな事言ってしまったけど……、約束を果たすことが出来なかったけど……、私のために一生懸命作ってくれたんだね。
「増田さん……ありがとう」
心に閉まってあった気持ちがついポロリと口から出てしまった。これがまずかった。
「ちょっとアリサ、今何て?」
「え?」
「増田? 増田って誰よアリサ……」
事務所中の視線が私に集まるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます