第16話 サイトの人気爆発!?思いがけないサプライズ
「うーーーん」
まじまじとスマホを見つめる男、増田。
「うーーーーーーん」
どうする? どうすればいい?
「うーーーーーーーーーん」
やっぱり出来ないーー!
京田の家から帰った俺はベットの上でスマホをいじっていた。
そして芦屋さんと京田のアドバイス通り新藤さんに連絡しようとしていたのだが……、
「だーー! 無理無理無理無理ーー! だって怖いもん! 今さら連絡して何て言われるか!
増田さんって薄情なのねって言われたらどうしよーー!」
俺は新藤さんに連絡出来ずにいた。そりゃせっかく掴んだチャンス、ものにしたいのが男だ。だが、今さら連絡したところで俺の評価は上がらないだろう。最適解はあの時、即座に言うべきだったのだ。
『それでも俺は新藤さんと会いたいと!』
昔から人の言葉を真に受けすぎるのが俺の悪い癖でもある。
くっそーー、何たることだ。もっと即座に対応できる能力が欲しいよー。なぜ俺はそういう力がないのだろうか、つくづく情けない。
しかし、今の状態では連絡出来そうにないなー。ようし、YouTube見よーっと。
紛れもない現実逃避であった。
さて、あの歌い手の大会の情報は更新されてるだろうか。歌唱絶姫決定戦。一体どういう大会になるのか未知数で楽しみである。各メディアも一斉に報道し、全国的にも話題に上がっている。Xのトレンドにも常に上位を占めており、その話題性の高さが伺える。
てか、眠くなってきたな。俺は急激に睡魔に襲われた。そりゃそうか、考えてみればここ1週間、非公式ファンサイトを作るために夜鍋していたのだから。
「今日はもう遅いし寝るか」
俺はスマホを握りながら寝落ちした。
―――――――――――――――――――
朝になった。ふとスマホを見てみると鬼のように通知が来ていた。
「ん? 何だこれ?」
寝起きだったことも相まって、すぐに状況を把握できなかった。ぼやけた目でLINEアイコンをタップする。友達の少ない俺にもこんなに通知が来るのかと遠い目になった。ほとんどは京田からのものだった。
どうやらファンサイトのアクセス数が増加しているらしい。そのせいで盛り上がってスタ連してしまったのだという。嫌、マジでやめてくれ、そういうのと思ったのは内緒だ。
てか、サイト運営者はそういうの閲覧できるんだね。さて、連絡しないと通知が止まらなさそうなので、俺は京田に電話をかける。
すると、ワンコール以内に京田が出た。
『もしもし、凄いぞ増田。アクセス数が凄い勢いで伸びている。道理で夜中にスマホの通知が鳴りやまなかったぐらいだ』
「え? そんなすぐにか? 確かに嬉しいけど……、皆がサイトの存在に気付くの早すぎない?」
それは京田も同じことを思っていたようで、何か知らないかと聞かれた。分からないと答えるとそれ以上追及はなかったが、不審に思った俺は電話を切った後、神童アリサチャンネルを見てみることにした。
案の定、大会についての情報が更新されていた。それも昨日の夜。
「くっそー、昨日眠くて見逃したのか、最悪」
そう思いながらコミュニティを開くと、
『歌唱絶姫決定戦、最初のお題はーー!
SNS人気投票です。期間は1週間! 皆投票してねーー!
投票先のリンクはここから! 以下URL』
なるほど、そう来たか。歌い手の大会だから課題曲みたいなものが出るんだとばかり思っていたが最初はこういうのから始まるのか。悪くないかもしれない。
ん? 待てよ? もしかして……、SNS人気投票と非公式ファンサイトのアクセス数増加って何か関係あったりする?
そう思ってXを開いて見てみると、
「え?」
話題のニュース欄に衝撃的な事が書いてあった。それは、
『まるで本物?神童アリサ非公式ファンサイト』
俺は慌てて画面をタップする。
『#神童アリサ非公式ファンサイト、今朝のトレンド1位!』
「え? 1位……?」
「え? 1位……?」
「えっ……、えっ……、ええええーーーーーーっ!」
大事な事なので3回言った。
俺はハッシュタグをタップし、そこに出てきた最新のポストをスクロールして見る。
『神童アリサファンクラブ作ってくれた人。控え目に言って神です!イラストもクオリティー高くて最高!』
『すげぇよ。ホントすげぇよ。どこの誰が作ったのか知らねーけど、この完成度ヤバすぎだろ……』
『もうこれが公式でいいんじゃね?』
『SNSとか歌とか最新情報とか詳しくまとめられていてサイコー!有志で作ってくれた人ありがとう!』
『神童アリサ、こうなる事を見越してファンクラブを作ってなかった説wこれはいい宣伝になるぞー』
『SNS投票、神童アリサがぶっちぎり1位だ!スゲー!』
俺は投稿全てに目を通した。そして、俺達が苦労して作り上げたファンサイトと神童アリサの人気投票1位が繋がっているということを知った。
「やったぁァァァァァァーーーーーー!」
俺は勝利の雄叫びを上げた。
まさかたまたま作ったファンクラブがこういう形で役に立つとは思わなかった。マジかよ、これってかなり神童アリサに貢献出来たのでは……。
俺は芦屋さんと京田に連絡する。
2人とも『やったーーーーーー!』と涙ながらに喜んでいた。そりゃそうか、8割ぐらい2人が頑張って作ってくれたもんな。
感傷に浸っていると、また電話がかかってきた。
「全く、いい所だったのに何だよ――って、新藤さん!」
まさかの向こうから電話がかかってきたのであった。
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