第4話 カラオケが盛り上がったので打ち上げをすることにした!
3時間のカラオケを終えて意気投合した俺達は近くのお洒落なカフェでプチ二次会をすることにした。
まあ、俺自身コンパに参加したことないからこれが二次会というものに定義されるのかは知ったことではないが。
ともかく、カラオケだけでは不完全燃焼なのでお互いのボカロ愛をもっと語り尽くすべく今ここにいるという訳だ。
端から見たらデートしているとでも思われているのかな? クラスの奴らに見られていたら恥ずかしいなぁ。
まあ、そんなことはどうでもいいが。
席について話に夢中になっていると、店員さんが注文した飲み物を持ってきた。成人しているならお酒を飲みたかったが、如何せん2人とも未成年(17歳)。大人しくオレンジジュースとジンジャーエールで乾杯した。
「いやー、お疲れ様でした! 久しぶりにカラオケできて楽しかったです!」
「こちらこそ! 新藤さんみたいに可愛い人と一緒に歌えてとても楽しかったです!」
「えっ……、可愛い……?」
新藤さんは頬を紅潮とさせた。それを見て俺もさっきの発言の無自覚さに気付いた。
「あーーっ! 違いますそういう意味じゃなくて新藤さんの歌っている姿があまりにも魅力的だったというか。惹き付けられたというか……、そのプロレベルに上手くてびっくりしたというか」
「お褒めの言葉ありがとうございます! 実は私歌い手を目指していて、ボイトレにも通ってるんです! ゆくゆくはテレビに出たり、ドームでライブできたらなーなんて」
屈託のない笑顔、夢に向かってただひた向きに走っているその純粋な目、甘くて溶けてしまいそうな可愛い声、それら全てが眩しくてただ輝かしい。
きっとその夢は……、
「叶うと思いますよ。初めて新藤さんの歌声を聞いた時驚いた。まるで歌姫のように圧倒的で他とは違う何かを感じました。もしかしたら、新藤さんは日本では収まらないかもしれない。ゆくゆくは世界に……、あっ、すみません、つい」
熱くなると収拾がつかないのが俺の悪い癖だ。さすがに今の発言は大げさすぎたかもしれない……、
だばーーーーー!
新藤さんが漫画みたいに目をうるうるさせて号泣していた。噴水が溢れんばかりの流量だ。
「えっ、どうしたんですか?俺変なこと言っちゃいました?」
「いえ、違うんです。人からこんな風に言ってもらったの始めてて、嬉しくて。つい、ごめんなさい。ありがとう、幸一さん!」
突然、下の名前を呼ばれた。胸が締め付けられるようにドキッとした。顔が火照り心拍数が上がる。"好き"が溢れる。心が決壊する。小刻みに呼吸が増えそうになる。何とかそれを抑えて平静を保つ。
ああ……、なんてあざといんだろう。そんな風にされて落ちない男はいない。でも、それが彼女の魅力であり、長所なんだろうな。
「そんな! 思ったことを言ったまでですよ」
俺と新藤さんの間は照れくささが混じった何ともいえない雰囲気に満たされる。ヤバイ、柄にもなくキザなセリフ言っちゃって、時間差で恥ずかしくなってきた。何とか話題を変えないと……。
「あっ……、そう言えば新藤さん。俺最近めちゃくちゃドハまりしている歌い手さんがいまして……」
「えっ? 誰ですか」
おっ、食い付いてくれた。ラッキー。でも、何だか必死そうに見えるのは何でだろう。まあいいか。
「神童アリサっていう人です。ほらこのチャンネル。知ってますか?」
俺はスマホの画面を新藤さんに見せた。新藤さんは食い入るように画面を見て、しばらくすると顔を真っ赤にしながら震え始めた。
「えっ……嘘それワタsh「知ってるんですか? さすが新藤さん見る目がありますね!今は、はやふぶさやカオスブレイクが大ヒットしてるんですけど! この人4年前からボカロ歌ってみたを投稿してくれているんですよ~。それも俺の好きな曲ばかり! ほら。これとかこれめちゃくちゃ好きなんですよ。歌声とか雰囲気の作り方が……!」
「ああ……そっ……そうですねぇ~~。彼女スゴいデスネー」
「何かカタコトになってますよ! あっ、今気付いたんですけど新藤さんと神童アリサって何か名前の響き似てますね! 新藤愛華と神童アリサって!」
そう言うと新藤さんはとてもびっくりしたような表情を見せた。さっきから挙動不審だけどどうしたんだろう。まあ可愛いからいいや。
「ボソッ……、それはその文字っただけという、ああ~~~何でもないですぅ! 確かに似てるって周りから言われますけど」
新藤さんは必死に言葉を紡ぐ。
「でも神童アリサって顔出ししてないんだよなぁ~。一体どんな顔してるんでしょうね? でも声可愛いし、きっとリアルもスッゴイ可愛いんだろうな~」
そう言うと新藤さんの頭からじゅわ~っと湯気が立ち上った。本当にさっきからどうしたんだろう。
「ちょっ、増田さん褒めす……ああ~、うんうんワタシもカワイイと思いマスヨー」
「あっ、そういえばカラオケで新藤さんの声誰かに似てると思ったんですよ。神童アリサに似てる気がしたんですよね~」
「ブーーーーーーー!」
突然、新藤さんがオレンジジュースを吹き出した。喉に詰まったのか、苦しそうに咳き込んだ。
「ちょっ……、大丈夫ですか?」
「はい……、ごめんなさい、服かかりませんでした?」
「いや、俺は大丈夫です。新藤さんこそ大丈夫ですか? それよりも、さっきから様子が変ですけど、どうしたんですか?」
「いっ……いえ……、キッ……気のせいデスヨー。それよりさっきの話、多分別人ですよ。似てるとは周りから言われますけど」
やっぱり変だなぁ。何でそんなに挙動不審なんだろう。何か俺おかしいこと言ったっけ? でも、神童アリサの話をし始めてからそうなってったような……。
ん……?
まさか……?
「新藤さん……、
もしかしてあなたって――――――――」
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