第3話 意外と好きなことを打ち明けるのも悪くないかもね!
ああ、きっと幻滅されただろうなぁ……。ショックで動けずにいると、
「あのう……、もしかして無理されていますか?」
「え?」
「ごめんなさい、あまり歌い慣れてなさそうだったのでつい……」
「あっ……、それはそのぅ……」
何て言おう。カッコつけてたなんて口が割けても言えないし……。
どう弁明しようか迷っていると、
「私は相席させて貰ってる身なので増田さんの好きな歌、歌っていただいても構いませんよ」
と、俺を気遣ってか優しい言葉をかけてくれた。
「ほっ……本当ですか?」
「はい! それで増田さんは普段何を聴いてるんですか?」
「ああ……、ええとその……」
正直に言うべきかどうか悩ましいが、嘘を付くのもいけないと思うので、一旦本当の事を打ち明けてみるか。
「……………ボカロとかアニソンとか聞いてます」
思い切った。言った。さあ、反応や如何に?
―――――――沈黙が流れた。
ああ……、やっぱり知らないのかなぁ……。落胆しかけたその時、
「えっ! 増田さんってボカロ聞かれるんですか?嬉しいです! 私もボカロ大好きなんですよ!」
新藤さんは一際高い声でそう言った。明らかに気分が高ぶり、表情豊かになったように感じる。
「えっ! マジですか!?」
「そうなんですよ! 特に蜂の『茄子の惑星』とか、
「まじですか! まじですか! 俺の好きな曲ばかりだ。こんなことが!」
「ちなみに増田さんは何が一番好きですか?」
「俺はぢん(人類の敵P)の『ウスバカゲロウ
「わぁ~~、私の好きな曲ばかりです! よければ、もっと好きな曲教えてください!」
「もちろんです!」
その後も俺達は会話が弾んだ。
出会った時のたどたどしさは当になく、気付けば熱心なボカロファンの友達が出来たという感覚で盛り上がった。
お互い私生活でボカロについて話し合える人がいなかったようで、今まで溜め込んできたものが一気に放出されるように語り続けた。
そして一区切りついた所で新藤さんが、
「じゃあ! 一緒にボカロ歌いませんか?」
「いいですね! 是非是非」
こんな美少女とセッションなんて願ったり叶ったりだ。
そして俺達はおDeco広17の『
そして歌っている途中に気付いたけど、新藤さんめっちゃ歌上手い! それもプロレベルに。もう人前で歌ってお金取れるんじゃないか……なんてレベルだ。
「いやー、新藤さん歌めちゃくちゃ上手いですね! 周りからそう言われません?」
「ありがとうございます! でも、最近忙しくて誰かとカラオケ行くなんて5年振りなんですよ……! 増田さんもさっきとは比べ物にならないくらいお上手ですね!」
「うっ……、それは言わないでぇ……」
最後の最後で、塞がりかけた傷が再び開いたのであった。
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