空中やったらええやろう?

クライングフリーマン

空中やったらええやろう?

 空中やったらええやろう?


 小学校低学年の時。その頃はまだ机は長机式だった。1つの机に対して2脚の椅子が並び、2人の生徒が座るのである。

 そんな馬鹿な!と平成令和生まれの人は思うかも知れないが、本当の事である。恐らくは、テーブルをイメージするだろうが、まるで違う。

 長机の下方には、収納部分があり、2人は1つの机を共用し、机の上に教科書やノート、筆箱を広げる。下方には、ランドセルや鞄から出したものを一時的に収納する。

 完全に個別の席になったのがいつかは、よく分からない。ただ、中学高校は個別だった記憶がある。

 大学時代、もっと長い机(テーブルと呼んでいた)だったが、小学校時代の事があるから抵抗はなかった。

 問題は、共用はしていても、はっきりとした区切り線は無かったことである。

 ある日。私の隣の席の子(長机の協同利用者)が、自分の教科書等を必要以上に広げてきた。

 境界線は、初めは無く、先輩達が不便だから、と釘で適当に切れ目を入れていた。物差し等で測った訳ではないから、当然、机に寄ってはどちらかの『領地』が広く他方は狭い。

 彼はその境界線を越えてくるので、ノートも書きづらい。私が不満を言うと、消しゴムを戦闘機に見立てて「空中やったらええやろう?」と言って、自分の消しゴムを私の領地に着陸させるのである。

「領空侵犯」した挙げ句の越境である。困った私は先生に言ったら、先生に注意した。

 だが、暫くすると、また始まった。今で言う「構ってちゃん」だったに違い無い。

 たまりかねた私は、校門の隙間から、道路に飛び出した。

 キーーーーーーー!!トラックは急ブレーキをかけ、私は轢かれ無かった。

 後を追い、目撃した同級生が先生に直訴した。

 彼は、延々と説教された。

「席替え」は、シーズンにしか行わないので、お互いに、気に入らなくても我慢するしかない。彼は完全に拗ねてしまい、体を斜めに向け、自分の教科書ノートを広げた。

 学年が上がり、やっと彼から解放された。

 彼の名前も顔も忘れた。先生に直訴してくれた同級生は顔も名前も覚えている。

 自分の人生を振りかえると、似たような事は何度かあったが、今で言う「ソーシャルディスタンス」でしか対応出来なかった。

 そして、この類いの人間を嫌うようになった。

 世間では、マスコミを「ますごみ」と揶揄するようになった。

 それは、この類いの人間の集団だからだ。私は最近、「枡屑」と呼ばせて頂いている。

「ゴミとは何だー!」と言うのだから、「くず」ならよろしいのではないか?

 揶揄されるのは、前出の男の子のように、ズルイからである。一方的なルールを作り、それを死守する。自分達の気に言ったニュースあるいは「片栗粉」で練った妄想を事実の上からコーティングする。

「取材」をせず、ニュースソースは「こたつ記事」だから、簡単に作り上げる怠け者。

 だから、世間は背を向け始めた。枡屑の言うことの9割は割り引く。知恵ある者はスタンスを変えた。

 権力者に媚び、疲れた自称記者達は、SNSで「あらし」や「ひやかし」を行い、平然としている。

「腐っている」「死んでいる」と言われるが、「構ってちゃん」は、性格だと私は思っている。

 他人が浮気したら不倫、自分の浮気はラブロマンス。

 私達は、いつになったら、「席替え」して貰えるのだろうか?

 ―完―



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空中やったらええやろう? クライングフリーマン @dansan01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る