第13話 先ずは面倒なのを処分しておくか
まあ当然加減はしておいた。
さっきの連中のとは違い、大司教の死なんてものは大事になる。
最悪の場合、姫様にも禍が及びかねないからな。
これでも護衛対象は大切にするんだよ。
「き、き、き、き、貴様……」
「クラム殿! これは一体!」
「だ、大司教……様? 今、姫様に何を……」
誰も理由が分からないようだが、俺も分からん。ただ明らかに殺意のこもった目だったからやった。
ただ状況の説明は面倒だな。その前の不自然さは俺にも説明できないし。
大体、それどころじゃない。
「駄メイド、今度こそ姫様を守れ。大司教は放置しておいていい。どのみち殺すわけにはいかない相手だ」
「クラム殿は!?」
しかしメイドが改めて俺を見た時、既に視界にはいない。
――昼間見た連中より腕は上だな。
ローブ付きの
いや、自在に曲がる事を考えれば先端が尖った光のロープと言うべきか。当然の様に聖典に繋がっている。
広い場所なら厄介だが、よほど地形を把握していなければここでは上手くは扱えまい。
お気の毒だが俺を完全に把握できていないし、肝心な魔法も木に当たるばかりだ。これでは相手にもならないな。
それにこいつらは、大司教と違って生かしておく必要が無い。
悪いが、ここで全員消えてもらうとしよう。
暗闇の森に響く叫び声、悲鳴、たまに輝く光の筋と断末魔の叫び。
それは当事者にとっては僅かの間であり、見守る――いや、ただ結果を待つものにとってはとても長い時間だった。
だがそれも、何かが倒れる音がして唐突に終わる。
そして――静寂が訪れた。
「終わったの?」
「ク、クラム殿? 生きておいで……ですか?」
「それはまあ、あの程度相手に後れを取る事はございませんよ」
「「きゃああああああああああああ!」」
二人同時に上げる絹を裂くような悲鳴。
参った。聴覚強化のスキルを使いっぱなしだったから気を失いそうになった。
「いやいや、安心してくださいませ。自分でございますよ、クラムです」
「ふう、良かった」
「でもどうして」
色々な意味があって、返答に少し困るが――、
「それは何と言いますか、普通は警戒するでしょう。そもそも、ここに来るのは極秘だった訳ですよね? ですから護衛は最小限。兵を配置しなかった理由も、もう分かっておりました。石碑の位置を可能な限り秘匿する為といったところですか」
「……確かにそうです。すみません、先ほどは言い出せずに」
まあ大体は予想通りか。
森を踏み固め、小枝を払ったのはおそらく先程の連中だろうな。靴跡からして間違いはあるまい。
当初の護衛が知っていたかは知らないが、主体は聖教関係者か。
「それは構いません。けど、それでも襲撃されたわけです。1回襲われた以上、それ以降も警戒を怠ってはいけません。最初の襲撃者はどうやら滅ぼされた国か貴族の残党だった様子でしたが、さて連中はどうやって今日という日を知ったのでしょう? 協力者の可能性は否定できません。もちろん自分たちで調べた可能性も無いわけではございませんが、そう簡単な物でもありますまい。その場合は専門の部隊がいると考えられます。そういった警戒は常に考えませんと」
「ですが、なぜ大司教様がセネニア姫様を⁉」
「それはこれから聞きましょう。実は森の中で気配は感じていたのです。ですが殺気は全くなかったですし、血の匂いもしなかった。さて何者かとは考えていましたが、待っていたのは大神官様と儀式です。普通に考えれば儀式を円滑に進めるための護衛でしょう。しかし結果は見ての通り。自分も知りたいところですので……そんな訳でさ、教えてくれんかね、じいさん」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます