第7話 顔見知りでなければ見物したかな

 などと懐かしい思い出を考える暇もなく、状況は普通に進むよなあ。


「へへへ。メイドの心配より、自分の心配をするんだな」


「それが例の姫ですかい」


「ああ。だが先ずは色々と調べねえとなあ」


「やめなさ――ぐあ!」


 倒れたまま制止を叫んだメイドが蹴り飛ばされる。


「隊長、こっちは良いんですよね?」


「まあ焦るな。場合によってはこっちが使えるんだぞ」


「そりゃ楽しみだ」


 やっぱりあれがリーダーか。隊長って事は、やはり軍属の様だな。

 しかし小太りといい蛮族の様な髭といい品の無い顔といい、野党ですと言われた方が納得できる感じか。


「な、なんの話ですか」


「お前が処女じゃないなら、俺たちが使ってからでも良いだろう」


「へっへっへ」


「ひっひっひ」


 強さの割にはまるでチンピラだな。

 というか、中身はやっぱ盗賊なんじゃないかと思い始めたぞ。


「いや! やめなさい! 今ならまだ許して差し上げます!」


「おやおや、お前を守って転がった護衛に聞かせてやりたいな。お前達を殺しても、自分が無事ならお姫様は許してくれるそうだぜ」


 どっと笑いが起きる。

 なるほど、森の中には少なくとも12人か。しかしまだ気配があるな。

 やはりそこらの盗賊の規模じゃない。

 もっともここは王都に隣接する森。しかも結構な数の魔法使いがいる時点でその可能性は最初からないよな。

 それにターゲットが誰かを知っている様子だ。

 単独犯? その可能性は無いな。


「貴方がたには、人の心が無いのですか!」


「そんなものは町を焼かれ仲間も家族も殺された時に捨てて来たよ」


 長い金髪を掴んで腹に一発。

 体がくの字に曲がって声も出せなくなるが、ダメージはさほど入っていない。

 さすが王家のお姫様。6女とはいえ、レベルは200を超えている。

 というか、そのレベルまで上げられるのは俺が働いていた店くらいなものだ。そんな訳で彼女のレベルを上げたときに俺も手伝っている。


 それに対してあの隊長はレベル70を少し超えたくらいだろうか。

 十分に人外クラスだしスキルも鍛錬しているか。


「さて、身体検査の時間だぜ」


「へっへー、待ってました」


「俺たちにも見せてくださいよ」


「いや、やめて! いやあー!」


 押し倒されて一気に高価そうなドレスの上半身が引き裂かれる。

 水色のドレスの下にあった純白の下着も一発で引き裂かれ、ささやかな白い双丘が顕わになった。


「いいぞいいぞー」


「俺達をのけ者ってのは無しにしてくださいよ」


 もう警戒の必要は無いと見たのだろう。森からゾロゾロと出てくる。

 数は15人。魔法使いが7人か。やっぱりまだいたな。

 しかしこれはちょっと面倒だ。取りあえず、小石も拾っておくか。

 これで馬車の周りで戦っていたうち、生きているのか死んでいるのか分からない戦力外が4人。まあ死んでいるか。他に元気なのが15人。森から出てきたのを合わせれば戦力は30人か。


「さあ次はこっちだ」


「いやぁ! やめて、やめてください」


 ドレスのスカートが引き裂かれ、これで真っ白なパンツだけか。

 さっきも殴られたし乱暴な扱いだが、体には傷一つ付かない。さすがのレベル差だ。投げ飛ばされ蹴り飛ばされただけで傷だらけのメイドとはさすがに格が違う。


「さて、いよいよ御開帳だ」


「出来れば経験済みを期待しますね」


「焦るな焦るな。どうせ交渉次第じゃ使うんだからよ」


「い、いや……いやあ……」


 ふう、姫様はレベル200以上、メイドも60は超えているな。

 抵抗しようと思えばもう少しできそうだが、姫様は恐怖でまるで力を発揮できていない。

 兵士がダメだったのにメイド単体で立ち向かえるはずもない。

 はあ、ダメだな。所詮は養殖か。


「そういやノイスの奴はどうしたんだ」


「アイツ“だけ”来てねえな」


「こういう時、真っ先に飛んできそうなんだけどな」


 おバカさんで助かった。

 これでもう森から魔法や矢が飛んでくる心配はないか。

 もっとも、そんな事を気にしている時には既に一人の心臓を背後から貫いていた。

 俺も損な性分だねえ。

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