第37話 それぞれのやるべき事

 ———時間魔法。

 世の厨二病患者ならば1度は必ず欲しいと願ったであろう最強の魔法。

 時間を止め、加速させたり鈍化させたり、未来を見たり、過去に戻ったりなどなど……数々のチート能力の礎たる力。


 ただ、一言で例えるなら———俺の様な純粋な剣士にとって最も相性の悪い魔法とも言える。


 加速、鈍化、未来視は対処出来るよ。

 時間停止? 何それ対処無理やん。

 時間止められたら俺、動けん。

  

 そうなったら相手が魔法を発動させる前に対処するしかない……のだが、そこで未来視とかいうチート能力が輝く。

 不意打ちも未来視でバレるのだ。

 後はもう不意打ち気味の超広範囲攻撃による一撃で殺すしかない。

 まぁ時間魔法士は半ば不死みたいなもんだから殺すのも厳しいが、ゴリ押せばなんとかなる。



 つまり———結局はパワー。



「魔法少女は結局その時間魔法の使い手を倒せるまでに至った……ってことは無さそうだな」

「えぇ、間違いなく1対1……いえ、全魔法少女が1度に戦っても勝てないわねぇ」

 

 残念なことに、と肩をすくめる母さん。

 まぁ基本時間魔法に対抗出来るのは時間魔法と一部の極まった空間魔法のみ、という前提が…………待てよ?


 そこで1つ妙案を思い付く……と同時にレイも俺の袖を引っ張った。


「……対処法。思い付いた、かも?」

「奇遇だな。実は俺もだ」

「えっ、2人とも何か思い付いたの? 私達研究者がどれだけ考えても思い付かなかったのに?」


 母さんが、したり顔で笑みを浮かべる俺とレイの姿に驚いた様に瞬きを繰り返す。

 そんな母さんに、俺は幾つか質問をすることにした。


「母さん、時間魔法の時間停止を使えば世界の時間が止まる? それとも一定範囲内の制約とかある? ついでに時間魔法の系統も分かるなら教えてくれ」

「えっと……一応時間魔法を使えば世界の時間が止まるわ。一応世界の理に干渉する魔法って聞いてるけど……」


 戸惑った様子で俺の質問に答える母さん。

 ただ、その言葉を聞いた俺とレイは更に笑みを深めた。


 いける……時間魔法の原理がソレなら十分に勝算があるぞ……。


 俺は未だ困惑の表紙を浮かべる母さんに告げた。


「母さん、対処法が分かった。これがハマれば勝てる」

「ほ、本当に!? 一体どんな方法?」




「「———たちが新たな世界の創造主になればいい」」



 因みにこの話の間、佳奈はずっと頭の上に疑問符を浮かべており、最後には考えるのを諦めたのかニコニコ笑みを浮かべていた。

 可愛い。









「———この作戦は、佳奈以外の、魔法少女の力も必要」

「そうだな……いや、下手したらそれだけじゃ足りないかもしれん」

「それが魔力不足だって考えてるなら……問題ないわよ。魔法少女は研究所の魔力をほぼ無尽蔵に使えるから」


 それはありがたい。

 異常なまでの膨大な魔力量がこの作戦のネックな部分の1つだったからな。


 俺達の作戦———【世界創造作戦】は、簡単に言えば、時間魔法が干渉できない完全に此方が支配した現実世界と見た目が同じな別空間にその魔法使いに気付かれない様に移動させる、という作戦だ。

 後は中に俺も入ってぶっ殺す。


 ただ、この作戦には……魔力量以前の問題が幾つかある。


「でも、お兄ちゃん……魔法使い達は協力してくれるかな? 私の他の魔法少女達……皆んな我が強いよ?」


 ソレだ。

 魔法使いもだが……この計画に欠かせない魔法少女に協力を仰がなければならない。

 まぁ存在理由を倒すのだから協力はしてくれるだろうと考えてたが……佳奈の言葉で一気に不安になってきたな。


「それは、私と佳奈で何とかするから気にしないでちょうだい」

「ありがとう、母さん」


 そう言ったものの……他にも、どの様に敵を俺達が作った世界に移動させるか、だ。

 いや、方法がないこともないんだが……。


「レイ、お前は転移系の術は使えるのか?」

「……ふっ、勿論———使えない」

「使えないんかい」


 何故か出来ないのにむんっと胸を張ってドヤ顔を浮かべるレイに、呆れた様に目を向ける俺だったが、レイがチッチッチッ……っと人差し指を揺らして言った。


「今後も使えない、とは言ってない」

「ん?? なら使える様になるのか?」

「私は、天才。1ヶ月あれば、極めれる」

「マジかよ……」


 空間系の術は全部の術の中でもトップクラスに難しいって渚沙が言ってたんだけどな。

 確か……天才と名高い三条静香は2年も掛かったとか何とか。


 もう1度言おう、だ。


 それをレイは僅か1ヶ月で習得どころか極められると言うのだ。


 改めて、目の前の白髪の美少女が如何に規格外かが分かる。

 彼方の世界にいたなら、間違いなくどんな敵より厄介な存在となっていただろう。

 ただ、レイが努力をするなら……。



「……俺も、努力しないとな……」



 邪神と戦って分かった。

 俺は、剣聖の力を使い熟せていない。

 多分剣聖なら、数回斬り結ぶだけで大技を使わずとも勝っていただろう。

 毎日剣は振るっているが……多分それだけでは足りないのだ。


 俺も、使える様にならなければならない。

 クルーエル剣術とは別———剣聖だけのために作られた剣術を。


 

 不死をも斬り裂く一撃を———。



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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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