第3章 剣聖と魔法使い

第28話 お出掛け①(改)

「———ここが、遊園地……!!」

「わぁーい! 遊園地ーーっ!!」

「クククッ……精々我を楽しませてみよ……遊園地エンド・オブ・ゲーム!!」

「2人とも凄いテンションだな……あと、透は遊園地に変なルビを付けるな。もはや遊園地の『ゆ』の字もないじゃねぇか!」

「そう言えば遊園地って久し振りね……」


 レイとの約束をした土曜日。

 俺は、レイ、佳奈、透、渚沙の4人と共に遊園地にやって来ていた。

 遊園地を提案してきたのは、佳奈とレイの2人で……まぁ恐らくは佳奈が行きたいがためにレイに推したのだろう。

 正直渚沙以外皆んな自由人過ぎて収拾がつかなくなる気がして若干怖いが……ここはお兄ちゃんとして妹とレイのお願いを叶えてやることにした。


「大変そうね、剣人」

「あぁ、渚沙か……そうだな。もう疲れて来た気がするな。てか、お前だけが頼りだ。頼むから3人の面倒を見るのを手伝ってくれ」


 はしゃぐ3人から少し離れた場所で3人を眺めていた俺に、同じく3人に視線を向けながら苦笑する渚沙が近付いてくる。

 渚沙は黒曜石のような姫カットの黒髪を後ろで束ねてポニーテールにしており、白のTシャツにデニムのカーゴパンツと結構カジュアルな服装だった。

 俺は制服姿か巫女装束姿の渚沙しか見たことなかったので、今っぽいコーデの渚沙が非常に新鮮で思わず目を奪われる。


 ……美少女は何でも似合うってのは本当なんだなぁ。

 俺みたいなそこそこの人間は必死こいて服を選ばないといけないのに、何でも似合うとかズルすぎる。

 多分美少女はジャージ姿でも可愛いんだろうな。


「あ、あの……そんなに見ないで欲しいのだけれど……」

「あ、あぁ、悪い」

「べ、別に責めてるわけじゃないわ。ただ、友達と遊びに行く用の服しかなかったからあまりジロジロ見てほしくないのよ……」


 そう言って恥ずかしそうに頬を少し赤く染めながら目を逸らす渚沙。

 ただ、俺は彼女の表情よりも気になった事があった。


 友達と遊びに行く用の服……?

 何それ……女子って行く人によってそんな服変えるのか?

 なら男子も変える……いや俺はデートなんかしたこと無いから分かんないわ。


 俺が衝撃的な話を聞いてショックを受けていたところ、渚沙が仲良さげにしている3人を眺めながら零した。


「……私、本当にこのメンツの中に入って良かったの?」

「ん? 別に良いだろ。透なんかお前が来るって言った時には空飛んでたぞ」


 寧ろ渚沙が来ると聞いて嫌だという人間は居ないと思う。

 始めはヤバイ女かと思っていたが……いざ接してみれば普通に常識人だし、人付き合いも上手くて何より美少女だからな。

 

「私は、来てくれて嬉しい」

「お前いつからここにいた?」


 俺はいつの間にか俺の真隣にいたレイに顔を向ける。

 するとレイは、目を見開く俺と渚沙をジトーっとした目で見てきた。


「……2人が見つめ合ってたところ」

「見つめっ———!?」

「待て。語弊がある。それだとまるで恋人じゃないか。お前も知ってる通り俺達は断じて恋人じゃない……」


 自分で言っていて悲しくなってきたな。


 瞳から涙が零れ落ちそうになる俺に、これまたいつの間にか俺の横に立っていた透が俺と同じ様に瞳に涙を浮かべ、慰めるように肩に手を置いた。


「同士よ、我らは強く生きような……」

「透……」


 その言葉に、俺は不覚にも感動してしまった。







「———それにしても……人多いな」

「そうね。新しく出来たからかしら?」


 昼となり、ベンチで休む俺と渚沙は、朝より増えた来場客の様子を眺めながら呟いた。


 この遊園地はつい数年前に出来たばかりでそれなりに人気らしく……周りに他の遊園地がなくて設備が新しいのも人気の理由なのかもしれない。

 ただ、佳奈なんかはまだまだ身長が小さく一瞬でもはぐれれば迷子確定なので、目を離さない様にしないといけなさそうだ。


 因みにレイと透は既に行方不明なので入れていない。

 まぁ2人ともそれぞれ楽しんでいることだろう、多分。

 それはそうとして……。


「渚沙、退魔連盟はどんな感じだ?」


 俺は少し声を潜めて尋ねる。

 そう言えば経過を聞いていなかったことを思い出したのだ。


「そうね……取り敢えず表立って貴方を取り込もうとする人間は居ないわ。後、絶対に剣人の家族とか大切な人には手を出さない取り決めもされたわね」

「そりゃ良かった。……三芳銀牙は?」


 どうやら俺の本命がこれだと分かっていたらしい渚沙が、口角を上げる。


「さぁね。もうアイツを気にすることはやめることにしたの」

「……そうか」


 どうやら、完璧に吹っ切れた様だな。

 

 俺は『ふんっ、いい気味よ!』と鼻を鳴らしてニヤリと笑みを浮かべる渚沙を見て、そう思った。


「お兄ちゃーん!」


 タイミング良く、佳奈がチュロスを手に持ちながら走ってくる。

 もう数時間もいるというのに未だ元気にツインテールをぴょこぴょこと弾ませた佳奈がいつも通り俺の服を引っ張って来た。

 そして何処かを指差しながらキラキラした瞳で俺を見上げる。


「かな、あれ乗りたい!」

「どれどれ……」


 俺は佳奈の視線に合わせて指差す方に視線を送る。

 そんな俺と佳奈の直線には———高さ100メートルはありそうなジェットコースターが聳え立っていた。


 ……え、佳奈はコレに乗りたいのか……?

 でもこういうのって多分身長制限とかある気が……。

 一応その横に観覧車があるが……まぁこれは無いだろうな、うん。


 俺は速攻で観覧車を選択肢から外し、恐る恐る瞳を輝かせた佳奈へと問い掛けた。


「か、佳奈……もしかしてジェットコースターに乗りたいのか?」

「うんっ! かな、高いところ大丈夫だもん! いいでしょ、お兄ちゃん……っ?」

 

 先程とは一転。

 佳奈はもじもじと胸の前で人差し指同士をくっつけながら、うるうると瞳を濡らして上目遣いで俺を見てくる。



「———任せろ、佳奈。俺が何をしてでも佳奈を乗させてあげるからな」

「ちょっと剣人!? 貴方が1番突っ走ってどうするのよ!?」

「レッツゴーお兄ちゃんっ!!」

 

 

 俺は佳奈を抱っこして、後ろから追い掛けてくる渚沙を横目にジェットコースターへと歩みを進めた。








「———ごめんね、お兄ちゃん。こんな危ないところに連れてきて……。でも、ここに行かなくちゃいけなかったの……」


 そう言った佳奈の視線の先には———此方を監視するような人影が居た。


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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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