第15話 話し合い?
「———何であの時逃げたのか、聞いていいかしら?」
「…………」
場所は変わって空き教室。
無造作に机と椅子が重ねられて置かれ、体育祭か何かで使いそうな籠があったりと完全に倉庫として使われている。
そんな空き教室の一角に椅子と机を並べて、俺、透が隣に座り、俺の膝にレイが乗って対面に三条渚沙が座っていた。
因みに今は、俺への詰問の時間だ。
三条渚沙から責めるようなジトッとした視線をこれでもかと向けられ、俺はそっと目を逸らす。
そんな俺達の様子に、レイと透は首を傾げていた。
「ねぇ、聞いているのだけれど」
「……こんなヤバい女がいる組織は絶対ヤバいと思って逃げた」
「だから何で私がヤバい女認定なのよ!?」
いやぁ、ねぇ……?
「……初手で攻撃してきたろ、お前」
「うっ……」
「しかも禄に顔も確認せずに、森の中で炎まで使って」
「…………」
今度は俺が彼女にジトッとした視線を向けて言うと、三条渚沙が気まずそうに視線を彷徨わせた後……スッと目を逸らした。
ほら、自分でヤバイ奴認定したじゃん。
やっぱりそんなお前が所属してそうな組織もヤバそうにしか思えないね。
「……と、ところで! 玲奈様はどうしてここにいらっしゃるのですか?」
「あ、話題変えた」
「そこ、静かに!」
「はい!!」
折角勇気を出して口を開いた透だったが……誤魔化すような三条渚沙の鋭い返答に一瞬で萎縮してしまった。
何ならちょっと泣きそうになっている。
……お前は良く頑張った。
今回は相手とタイミングが悪かっただけだ。
俺はあまりにも憐れな透の背中を擦って上げながら、首を傾げる。
「玲奈様って誰のことだ? もしかしてレイ?」
「レイ!? 貴方、玲奈様のことをそんな軽々しく呼ぶなんて不敬よ!?」
いや知らんがな。
何ならレイの本名が玲奈って今知ったし。
「……剣人と透はいい。2人は、友達」
「だってよ。どうやらお前より俺等の方が友好値が高いみたいだぞ」
「う、五月蝿いわね……そんなこと分かっているわよ! その姿を見せつけられたらね!?」
「「……??」」
俺とレイはお互いに目を合わせ……首を傾げる。
今は確かに俺の膝にレイが乗っているが……それ以外特に何もしていない。
そしてこの体勢も、毎授業中にしているので彼女がこれほど取り乱す意味が分からなかった。
「お前、何をそんなに動揺してんだよ」
「深呼吸。落ち着いて」
「いやいやいや何でさも当たり前の様に玲奈様は彼の膝の上に座っているのですか!?」
「定位置だから」
レイがぼーっとした淡い碧眼を三条渚沙に向けて言う。
ただ、心做しか誇らしげに聞こえるのは本当にちょっと意味が分からない。
微妙な反応をする俺とは別に、三条渚沙が驚き過ぎて目を縦横無尽に彷徨わせた後、俺をキッと睨んでくる。
これは本当に意味分からん。
「定位置!? 朝山剣人、貴方……一体玲奈様に何をしたの!?」
「いや何も? 俺の妹がやってたの見てやり始めたらしい」
「ん。佳奈が、最高って言ってた」
いやだからレイさん?
そんな自慢げに言わないで?
俺が恥ずかしいから。
『むんっ』と言う効果音が付きそうな程のドヤ顔でほぼほぼない薄い胸を張るレイに俺は羞恥から目を逸らす。
そんな俺達を三条渚沙がどこか羨ましそうに見つめていた。
おい。
そんなぐっだぐだな俺達に、先程からずっと黙っていた透が恐る恐ると言った感じで呟いた。
「えっと……そ、それで、三条さんは何故僕達の所に?」
透のその言葉は、まさにこのぐだぐだな状況を変える神の一手だった。
最高だよ、透。
流石俺の親友。
「ご、ごほんっ! そうね……すっかり話が逸れてしまったわね」
主にお前のせいでな。
俺とレイ、透のジト目の集中攻撃を食らった三条渚沙が、気まずそうに何度も咳をして誤魔化そうとする。
「ごほんっ、ごほんっ! それで、貴方達を呼んだ理由なのだけれど……三条悠真、この名前を聞いたとのないかしら?」
「……」
……ここでアイツの名前が出てくるのか。
まぁ確かに苗字が同じだし……遠い親戚なのかもしれない。
「……あぁ、知ってる。てかレイがいる時点で俺が知ってるのは分かってたんだろ?」
「え、えぇ……まぁそうね。あとレイじゃなくて玲奈様ね」
「お断りだ。それで……ソイツがどうしたんだ? まさか斃したらいけなかったか?」
「!? や、やっぱり貴方が斃したのね!?」
三条渚沙が突然椅子から立ち上がり、ぐいっと顔を近付けてくる。
ふわっと良い香りがすると同時に、俺の視界が美少女の顔で埋め尽くされた。
くっ……レイとは段違いの破壊力だ。
同級生と言うだけでこんなにも違うものなのか……!?
俺の好みの顔と言うだけあって、レイの時とは段違いの破壊力に、思わず狼狽して視線を彷徨わせる。
視界の端でジト目を向けてくるレイの姿が見えた気がしたが、きっと気のせいだろう。
「……剣人、変態」
「風評被害だ。男子高校生なら寧ろもっとヤバい」
「えぇ……ま、まぁ良いわ。朝山剣人、どうか私と退魔連盟に来てくれないかしら!?」
そう言ってすべすべしっとりな手で俺の手をギュッと握ってくる三条渚沙。
お、おい手!
そう易々と男の手を握るな!
勘違いするだろうが!
そんな内心慌てふためく俺だったが……それよりも凄いのが直ぐ隣にいた。
「———退魔連盟……退魔といえば……退魔師か! つまり退魔師がこの世にいると言うことか……ッッ!? フハハハハハハ素晴らしい……素晴らしいぞ!! 三条渚沙、是非この漆黒の堕天者たる我に詳しく教えてくれないかッッ!?」
厨二病が通ります。
者共、道を開けろ。
人が変わった様に三条渚沙へと質問責めを開始する透を見て、これは長時間コースだなぁ……と俺とレイは苦笑するのだった。
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ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
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