第2章 剣聖と退魔連盟

第14話 早速身バレ

 ———レイと一緒に過ごすようになって1週間が経った。


 あれから特に何かが起きた……何てことはなかった。

 例のヤバい奴にもあのとき以来出会っていないし、幽霊を見掛けたりもしていない。

 

 ただ唯一不思議なのは……学校を色々ぶっ壊したはずなのに、次の日行けばまるで何事もなかったかの様に綺麗になっていたことだろうか。

 これには、俺もレイも首を傾げるのみであった。


 そしてレイだが……彼女は結局俺の家に居候(?)している。

 始めは俺の家に来ただけでおっかなびっくりしていたレイだったが……。


「———起きろ」

「…………後15分」

「ダメ。剣人、寝すぎ」

「お兄ちゃん、起きろーっ!」


 今では佳奈と一緒に朝6時半くらいに無理矢理起こしてくるほどの慣れ具合である。

 何なら普段は佳奈と一緒に寝ていて、佳奈は佳奈でお姉ちゃん的存在が出来て嬉しそうだった。

 

 因みに、何故佳奈に幽霊であるレイが見えるのかは不明だ。

 ただ、レイが言うには『子供は霊的存在を見やすい』との事らしい。

 それにしても恐ろしい順応性であるが。

 俺は佳奈の将来が不安だよ。


 何て考えていたその時———俺の腹に強烈な衝撃が襲ってきた。

 見れば、頬をぷくーっと膨らませた佳奈が俺の腹に乗っているではないか。


「お兄ちゃん! 起きて起きて起きて起きてっ!」

「か、佳奈……俺の上にジャンプして乗るのはやめてって……」

「お兄ちゃんが起きないのが悪いのっ! ねー、レイお姉ちゃんっ」

「ん。全部、剣人が悪い」

「理不尽だなおい」


 6時半に起きる高校生は少ないだろ……。

 でも、まぁ……レイも佳奈も楽しそうで何よりだよ。

 

 俺は、巫女姿のレイに抱き着いて頬ずりしている佳奈の姿を眺めながら、そう思うのだった。







「———おはよう、剣人、レイ!」

「はよー、透」

「おはよう」


 学校に着くと、教室で1人おっかなびっくりした様子で席に座っていた透が、俺達を見つけた途端満面の笑みを浮かべて近付いてきた。


 因みに透もレイの姿が見えている者の1人だ。

 始めはビビり散らかしていたのだが……持ち前の厨二病が恐怖を呑み込んだらしい。

 最近ではレイとも極自然に会話できているので、取り敢えず一安心だ。

 

「いやぁ〜本当に2人が居なくて超気まずかったぞ」

「もう3ヶ月以上過ごしてる教室で気まずいは重症だろ」

「そんなことはないぞ? だって陽キャに限って教室に早く来るんだ……あいつらと目が合った瞬間の気まずさと言ったら半端じゃないんだぞ!」


 それを見た目陽キャなお前が言うのな。

 ホント神様は完璧を嫌うらしい。

 この陰キャ気質と厨二病を治したら完璧なのに。


 俺は、透の相変わらずな残念イケメン具合に小さくため息を吐く。

 かくいうレイも、すっかり透の本性に気付いたらしく、雑に扱う程度が丁度良いと分かったのか、特に反応しなくなった。

 可哀想な透。


 俺が透に哀憫な瞳を向けていると……何か思い出したかのように、透が俺の方に顔を向けた。

 

「ところで剣人……」

「ん?」

「休みの日にレイさんを連れて行くって言ってたけど……何処に行くんだ?」

「あー、そのことなぁ」


 そう、俺はレイに良い所に連れて行ってあげると約束したのだ。

 今の所は映画館か遊園地、ショッピングモールなどを考えているが……。


 俺はチラッとレイを見る。

 レイは一見興味なさそうにしているが、頻りに此方にチラチラ目線を向けているし、何なら若干寄ってきている。

 これの何処か興味なさそうなのだろうか。


「聞きたいなら素直にそう言えよな」

「聞きたい」


 レイが俺の顔の後数センチの所までぐいっと顔を近付けてくる。

 太陽の光を反射した白髪がキラキラ輝く。

 また、普段はハイライトがあまり入っていない淡い碧眼がこれでもかと輝いていた。

 

「お、おお……今度は素直過ぎるな……」


 突然目の前に超絶整ったレイの顔が現れて俺は思わず狼狽する。

 動揺を隠そうと俺がレイから目を逸らした時……廊下で明らかに此方をガン見している1人の美少女をバッチリ目が合う。


 姫カットの腰まである漆黒の艶やかな髪。

 髪と同じ漆黒の瞳。

 大変整った顔立ちは可愛いというより綺麗という言葉が似合う。


 そして俺は相手を認識した瞬間———これでもかと思いっ切り顔を引き攣らせた。


 おいおい……アイツがこの学校にいるだなんて聞いてないぞ……!

 しかもめっちゃレイを見てるやんか。


 そんな俺と俺の斜め上を見たヤバい女が目を見開いて零した。


「あ、貴方は……朝山剣人!?」

「や、ヤバい女……」

「ちょっ、何がヤバい女よ!?」

 

 俺が近くでも聞こえないくらい小さく零した言葉に反応してきたヤバい女。

 お前は地獄耳も持ってるのか。

 

 そうげんなりする俺だったが……何やら物凄い注目を浴びていることに気付く。


「あ、あの人って……」

「あ、あぁ……三条渚沙なぎさだぜ……何でこのクラスに……しかも朝山剣人って……一体どんな関係が……」

「三条渚沙!? あの50人連続告白を全てフッたあの!?」


 いや50人連続告白って何だよ。

 どういう状況なんだ……ちょっと見てみたい気がする。

 まぁとにかく。



「……い、嫌な予感しかしないんだが……」

 

 

 俺は此方にズカズカと歩いてくるヤバい女改め三条渚沙を見ながら大きなため息を吐いた。

 

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 ここまで読んで下さり、ありがとうございます。

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