第17話

香織と涼介は、田中静子から提供された情報を基に、詐欺師の正体を突き止めるための調査を開始した。フェスティバルの賑わいの中でも、二人の探偵としての鋭い感覚は研ぎ澄まされていた。


まずは、静子が受け取ったメッセージや写真を詳細に分析することから始めた。静子のスマートフォンには、詐欺師と思われる男性からの甘い言葉が並んでいた。


「このメッセージ、まるでテンプレートみたいね。」香織は画面を見ながら言った。


「確かに。感情を揺さぶるための巧妙な文章だ。」涼介も同意しながら、メッセージのパターンを読み取った。


二人は、メッセージに使われたフレーズや言い回しが他の詐欺事件と共通していることに気づいた。それは、詐欺グループが同じ手口を使っていることを示唆していた。


「これをもとに、彼らの背後にある組織を探る必要があるわ。」香織は決意を新たにした。


古城内でのフェスティバルの合間に、二人は他の参加者たちと話をする機会を増やし、情報を収集することにした。彼らは、特に静子と同じように詐欺に遭った可能性のある人々に注目した。


ある日、香織と涼介はフェスティバルの中庭で、同じく日本から来た女性、山本由美子と出会った。彼女は静子と同様に、インターネットで知り合った男性に大金を送金してしまったという。


「こんにちは、山本さん。私たちは三田村香織と藤田涼介です。田中静子さんからお話を伺いました。」香織は優しく声をかけた。


「こんにちは。静子さんから聞きました。お二人は探偵なんですね。」由美子は少し緊張した様子で答えた。


「そうです。もしよろしければ、あなたのお話も聞かせていただけますか?お力になれるかもしれません。」涼介は丁寧に頼んだ。


由美子はためらいながらも、彼女の経験を語り始めた。彼女もまた、インターネットで知り合った男性に心を許し、大金を送金してしまったが、その後連絡が途絶えたという。


「彼の名前やプロフィール、写真はどうですか?」香織は尋ねた。


由美子は静子と同様に、スマートフォンを取り出して見せた。驚いたことに、その男性の写真やメッセージの内容は静子が受け取ったものとほとんど同じだった。


「これは同じ詐欺師の仕業ね。」香織は確信を持って言った。


「そうだな。これは大規模な詐欺グループの可能性がある。」涼介も同意した。


さらに調査を進めると、他の参加者たちも同様の手口で騙されていることが次々と判明した。フェスティバルに参加している人々の中には、多くの被害者が潜んでいたのだ。


「これは思った以上に大きな問題だわ。」香織は眉をひそめながら言った。


「まずは被害者たちから情報を集め、詐欺グループの手がかりを掴もう。」涼介は冷静に指示を出した。


香織と涼介は、被害者たちと連絡を取り合い、彼らが受け取ったメッセージや写真、送金先の情報を集めた。その中には、詐欺師たちが使っている銀行口座や、インターネット上のアカウントの手がかりが含まれていた。


「この銀行口座、ヨーロッパ内の複数の国で使われているわ。」香織は情報を整理しながら言った。


「つまり、詐欺師たちは国際的に活動しているということか。」涼介は驚きつつも冷静に分析した。


二人はさらに情報を深掘りし、詐欺グループの背後にいる人物を突き止めるための手がかりを探した。そして、ついに一つの決定的な証拠にたどり着いた。


「このメールアドレス、複数の被害者に使われているわ。」香織はスクリーンに映し出されたメールアドレスを指さした。


「それなら、彼らの拠点を特定できるかもしれない。」涼介は頷いた。


香織と涼介は、詐欺グループの拠点を突き止めるために、古城内の秘密の部屋や地下室を探索し始めた。彼らは古城の管理者に協力を依頼し、過去の所有者が残した隠し部屋や通路の情報を手に入れた。


「ここだわ。過去の所有者が使っていた秘密の部屋。」香織は古い地図を見ながら言った。


「この部屋に詐欺グループの手がかりがあるはずだ。」涼介は確信を持って答えた。


二人は古城の奥深くにある隠し部屋に向かい、そこに隠された手がかりを探し始めた。暗い通路を進み、やがて秘密の部屋にたどり着いた。部屋の中には、古い家具や書類が散乱していた。


「ここに何かあるはずだわ。」香織は懐中電灯で部屋を照らしながら言った。


涼介は書類の山を調べ、ついに重要な手がかりを見つけた。「香織、これを見てくれ。」


涼介が手に取ったのは、詐欺グループが使っていた偽造の身分証明書や送金記録だった。そこには、詐欺師たちの実際の名前や写真も含まれていた。


「これで彼らの正体がわかったわ。」香織は興奮を抑えきれずに言った。


「これを警察に提供しよう。これで詐欺師たちを捕まえることができる。」涼介も同意した。


香織と涼介はすぐに警察に連絡し、集めた証拠を提供した。警察は迅速に動き、詐欺師たちの逮捕に向けた準備を進めた。


「これで一歩前進したわね。」香織は涼介に微笑みかけた。


「そうだな。でも、まだ終わっていない。次は彼らを捕まえることが大切だ。」涼介は真剣な表情で答えた。


フェスティバルの最終日、香織と涼介は詐欺師たちを追い詰めるための最後の計画を立てた。彼らの探偵としてのスキルと決意が、再び試される時が来たのだった。

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