第7話

### プロローグ


その夜、門司港の静かな探偵事務所には、テレビの野球中継の熱気が満ち溢れていた。三田村香織はソファに深く腰を下ろし、目を輝かせながら画面を見つめていた。テレビには、日本からアメリカに渡りメジャーリーグで活躍する若きピッチャー、光田竜一が映っていた。彼の力強い投球と冷静な表情が、香織の心を掴んで離さなかった。


「涼介、見てよ!光田のこのフォーム。完璧じゃない?」香織は興奮を抑えきれず、隣に座る藤田涼介に声をかけた。


涼介は微笑みながら、「本当にすごいな。彼のピッチングはまさに芸術だ。」と答えた。


香織は一瞬考え込んだ後、突然立ち上がり、「決めたわ、涼介。私たち、アメリカに行くの!」と宣言した。


「え?アメリカ?」涼介は驚きながら香織を見つめた。「どうして急に?」


「どうしても光田の生のプレーを見たいの。彼の試合を直接観戦するなんて、一生に一度のチャンスかもしれないわ。」香織の目は熱い情熱で輝いていた。


涼介はしばらく考えた後、「まあ、ちょうど仕事も一段落したし、少し休みを取るのも悪くないかもしれないな。」と頷いた。


「よし、決まりね!」香織は満面の笑みを浮かべた。「早速、チケットを手配しなきゃ。」


その数日後、香織と涼介はアメリカ行きの飛行機に乗り込んだ。サンフランシスコ行きのフライトは、期待と興奮でいっぱいだった。香織は窓の外を見つめながら、心の中で光田竜一のプレーを見る日を夢見ていた。


「涼介、アメリカに着いたらまずは何をする?」香織は楽しげに話しかけた。


「まずはホテルにチェックインして、少し休もう。その後、試合の前にスタジアムの周りを見て回るのもいいかもしれないな。」涼介は冷静に答えた。


「うん、そうね。でも、一番楽しみなのはやっぱり試合よ。」香織は心からの笑顔を浮かべた。


サンフランシスコに到着した二人は、空港からホテルへと向かった。街の賑やかな雰囲気に包まれながら、香織はますます興奮を感じていた。


「涼介、明日が楽しみね。」香織はホテルの窓から外を見下ろしながら言った。


「そうだな。アメリカでの新しい冒険が待っている。」涼介も同じく期待を胸に秘めていた。


こうして香織と涼介は、光田竜一の試合を観戦するためにアメリカへと旅立った。彼らの探偵としての冒険は、ここサンフランシスコの地で新たな幕を開けようとしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る