第24話 そうだ、パン屋に行こう
「きりーつ、れーい、着席―」
「お昼だー」
時鐘と共に生徒が各々の配置に着く。
さて。
「霊美ちゃん、購買行こ」
「すみれさん、待っていてくれてもいいのよ?」
「ううん、今日は私も買いに行くから」
「なら、一緒に行きましょうか」
「うん」
『ワイワイガヤガヤ』
「⋯なんだか今日はいつもより人が多いわね」
「うーんなんでだろ⋯あ!」
生徒の足元の隙間、目新しいボードに指さす。
「新商品入荷、カツサンド⋯成程」
代わり映えのしない購買のメニューに
新商品というだけでも人が
寄ってるくるだろうに、
カツサンドとなれば殺到するのも分かる。
けどどうしよう。
「この人数がはけるまでに、
お昼休みが残っているかしら」
「食べる時間くらいは欲しいよね」
数分待つが、はける様子はない。
「自販機でジュースでも買って、
帰りに何か買って帰る?」
「そうしましょう、
放課後デートと洒落こみながら」
「へへ」
「ちょっとそこの、仲のよろしいお二人さん」
「「ん?」」
仲がいいと言われて、
振り返らずにはいられなかった。
おそらくの声の主は、顔の知らない、
リボンの赤から見るにおそらく二年生の人。
中肉中背、茶髪で短髪、少しの化粧。
何かを後ろ手に持っている。
「もしかしてお昼ご飯で困ってたりしてます?」
そしてやや関西弁?。
「ええ、まあ」
素直に答えちゃう可愛い霊美ちゃん。
「でしたらこれ、いります?」
後ろ手に持っていたものが差し出される。
それは二袋分のカツサンドだった。
「くれるんですか?」
素直に聞いちゃう霊美ちゃん。
「ただでとは、そんなそんな⋯
こちらも商売でやらせてもらっているので」
「おいくらですか?」
「一つ五百円です」
ボードを一瞥すると、カツサンドは一つ三百円。
「元より二百円高いじゃないですか?
ソレって転売ですよね」
「酷いなあそんな言い方、
私も授業が終わる五分前くらいに
仮病使ってここにスタンバってたのに。
ちょっとはお気持ちを
貰わんとやっていけません」
「なら遠慮しておきます、私たち別に
カツサンドが食べたくて来た訳じゃないので。
いこ、霊美ちゃん」
「え、ええ」
「あらそう、では、おおきに〜。
あ、そこのお姉さん⋯」
まだやってる。
「ああいう人も世の中にはいるんだね」
「⋯」
「どうしたの霊美ちゃん?」
「いえその、
カツサンドを今まで食べたことないから⋯」
霊美ちゃんは惜しそうに群衆を一瞥した。
「ッ〜放課後食べに行こ!」
「ええ!」
駅前。
お腹を空かせながら大きめのパン屋に着いた。
「もしかしたら、
こういう本格的なパン屋さんに
来るのも初めてかもしれないわ」
「そうなんだ」
パン屋にさん付け⋯可愛い。
「入ってもいいかしら?」
「うん、入ろう」
扉を開けると、
雰囲気のある喫茶店に
設置されているようなドアベルが鳴る。
「いらっしゃいませー」
霊美ちゃんが遊園地にでも
来たみたいに辺りを見回す。
「いい匂い⋯」
「そうだね〜」
焼きたてのパンのいい匂いが鼻をくすぐる。
『『グゥー』』
腹の虫が二匹喚いた。
「ご、ごめんなさい、私ったら⋯」
「え?霊美ちゃんも?」
「すみれさんも?⋯ふふ」
「へへ」
なんて微笑んではいるが、
お互い目端でパンを自然と吟味している。
滅茶苦茶お腹空いた。
「えっと⋯これを使うのかしら」
霊美ちゃんがトングとプレートを指差した。
「えーと、カツサンドだけじゃ足りないだろうし、
使おっか、やってみる?」
「ええ!」
嬉々としてトングをカチカチさせている。
だがしかし、
プレートが水平にならずおぼつかない。
「私がプレート持つよ」
「ありがとう、
欲しいものを遠慮なく言って頂戴ね」
「うん、じゃあまずそこのメロンパン取って」
「了解」
お腹が減って色んなものに目移りしてしまい、
その度にお腹が減る。
あっという間にプレートが
パンの山になってしまった。
「後はカツサンド二人分、手で持ってて」
「わかったわ」
そしてレジで会計する。
「合計で三千六百七十円になります」
良心的価格設定で
三千円越えをたたき出してしまった。
「一旦私が払うわ」
「お願い」
霊美ちゃんが大きなお札を出して会計する。
包むパンが多い上に先に言われてしまったので、
お願いしてしまった。
臨時収入があったとはいえ、
私の方がお金持ちなのに。
⋯多分。
「よいしょ」
「あら」
「いいのいいの」
「なら⋯あそこに座りましょう」
陽の光が差し込むテーブル席を指さす。
「いいね⋯よっこいしょ」
トレーをテーブルに置いて対面に座り、
パンの山を均しながら財布を開く。
そして代金の半額を握る。
「はい霊美ちゃん」
「あら、後でいいのに」
やり取りが終わって、
二人の間にあるパンを鑑賞する。
「どれから食べようかな」
イチャイチャ除霊 百合unlimited 甘頃 @amagoro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。イチャイチャ除霊 百合unlimited の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます