エピソードXII 悪魔の日 後編
もともと三社はそれぞれ異なる名前だった。インディバル・パーシュート社は企業共同開発機構、パーシヴァル社はナイツ社、そしてサイクロン社はエアアロー・テクノロジーズだった。
各企業はそれぞれヨーロッパ州、アジア圏、欧米にあり、各企業が団結したことにより、全世界をスムーズに攻撃、侵攻ができた。
また、積極的に兵器開発のメンツを飲み込んでいったことにより、より多くのエリートやアーキテクトを確保することに成功。その結果、アームドスーツが誕生するに至った。
そして各企業ではそれぞれのパイロットの特色に合わせた機体を提供していた。企業共同開発機構は安定性、耐久性を重視。エアアロー・テクノロジーズは総合的性能を重視。ナイツ社は機動力を重視していた。
『おはよう!起きろ!』
眠い目をこすって起きると、薄い日当たりが機体を照らしていた。
「おはよう。もう行くか。」
『だな。』
ブリッツの中で軽く伸びをして、機体操作盤に手をかけた。ショルダーセーフティースタビライザーを下ろし、ジェネレーターの諸機能をすべて起動し、いつでも出発できるようにした。
森の中から歩き始め、外気のおいしい空気を吸いながら、森の外を目指した。ここでスラスターは使えない。スラスターを吹化したことによって熱くなった高温の冷却版が触れて森林に火が付いたらたまったもんじゃない。
しばらくは歩くしかないのだ。
『エース、突くとしたら警備が鈍る夜あたりの方がいい。そんなに急がなくともいい。』
「そうか。なら少し待つとするか。」
近くに岩場が見えたから、そこに止めるとしよう。
私は先に岩場に機体を座らせるために、太刀を地面にさし、岩に腰かけた。一方のローマは正面の岩に腰を掛けた。
そして、コックピットから降りようとした時…
ヒュイン!!
刀が共鳴して、急に浮き始めた。
今度は何だ!?急いでジェネレーターを起動させて、ブリッツを動けるようにした。
『いったいどうなってるんだ?!』
「分かるか!!」
鞘を拾って背中に回した。すると刀は向きを変えて、私の横の岩場に刺さった。何だ?
「刀があの岩刺さった。何があるんだ?きっと意味があるはずだ。」
『そうだな。まあ、ないかもしれないが、アウトレイジが起こすなぞには必ず何か理由がある。』
刺さった岩に向かい、その岩に刺さった真改を抜いた。全く困った奴だ。鞘に納めてその岩場を見てみた。刀の刺さったところからひびが入り、その日々がだんだん深くなる。だが、割れそうにない。
そこで、その刺さった後からブリッツで岩をどけていった。バラバラと崩れながらきれいに割れる。何があるのだろうか。
そして、また岩を出すと何やら白いものが見える。これは一体?
続けて岩を崩していると、中からまた刀が出てきた。すさまじく美しい刀だ。アームドスーツ用であるのは間違いない。柄を見ると、刀の名前が書いてあった。
"神刀・天弦”
それが刀の名前だ。
美しいしなりが効いている。
その刀を真改の隣にさしたが抜きづらい。そのため、腿の横の取り付け用の金具につけて、侍のようにした。
この刀は何でできているのだろうか。全くサビていないし、浸食も刃こぼれもない。しかしそれ以前にこの刀は不思議なものだ。岩の下から出てくるとは。いったいどうしてああなったんだ?
全く見当もつかない。
さらに、もっと謎なこともあり、太刀とこの刀を一緒にしてから機体の様子が少しおかしいのだ。
機体の出力が大幅に上がっているのだ。出力メーターを見ると、ざっと普段の二倍にはなっている。
いったい何があったというのだろうか。とうとうスラスター系統がいかれたか?一応自己診断システムを何度も何度もしているが、全く異常がないどころか、良好な状態に戻っている。
何じゃこりゃあ?
『お前は刀二本を腰に挿して侍みたいだな。まあ、似合うからいいんじゃないか。それになんか機体から虹色の筋が出てないか?』
「ホントか?」
コックピットを開けると、確かに筋が出ている。どうなっているのかさっぱりわからない。
純度百パーセントの刃を持つ太刀と、太刀が刺さったところにあった刀。絶対この二つのせいだろう。
『ところで、その刀って斬れるのか?年月が経ってガラクタになってたら困るからな。近くの岩でも切ってたらどうだ?』
「それもそうだな。斬れなきゃ刃物じゃなくて鈍器だからな。」
近くにある大岩をその刀で切ってみることにした。
刀を抜く。
鈍い青色の光とともに出てきた刀身は美しい。
そしてあたり方を確かめるために、少し岩に刀を入れた時…
スッ…
『エース!岩がもう切れてるぞ!』
「は!?試しに当てただけだぞ?」
急いで刀を上げると、そこには切れ目があった。確かにさっきはなかった。しかし、アクチュエーターを使っていないのに切れた?そんな事初めてだ。
だが、もし仮に出力が強く、前のつもりで使っていて斬りすぎた可能性は大いにある。
ということで今度は出力を十分の一にして刀をゆっくりおろしていった。すると…
スーーッ…
紙を切るように真っ二つになった。恐ろしい刀だ。当てただけで切れるとは。
そこで、まさかとはと思い、自分のダブルエッジドレーザーブレードを久しぶりに出してみた。そして、刀に当てると…
きれいにレーザーまでも切れた。切れ目を出力口に向けると、二つにレーザーが分かれた。おっそろしいなこれ。
『とんだ化け物拾っちまったな。』
「ホントだな。」
私はさやに刀を収め、太刀を抜いて、普通の切れ味というものを体感しようとした。しかし…
スッ…
また岩が力を入れずとも切れた。どうなっているんだ?切れ味が急によくなった、いや、何でも切れるようになった。
「真改の切れ味も上がってる…どういうことだ?」
『すまないが、もう謎としか言えない。』
そうだろうな。もしかするとこのアウトレイジこそが、次の世界を切り開くための解決策なのかもしれない。
『ま、謎は置いておいてもう昼時だ。そろそろ時間的にはいい。着くのに計算だと八時間はかかる。今から一時間後に出撃すればちょうどいいだろう。』
「もうそんな時間か。」
さっさと荷物をまとめて、刀の謎は放っておくことにした。考えるのも無駄だ。分からんことは今ここで考えても分からん!
「それじゃあ、いつでもいけるから、そろそろ森から出ますか。」
『出るのに三十分はかかるからな。だいぶ奥地に来ちまったな。』
「その分敵に見つかりづらいだろう。ちなみにだが、本部は大丈夫なのか?」
『分からない。だがあれだけ豪華な護衛部隊だ。どうにかなるさ。』
「それもそうだな。じゃあローマ、行くか。」
『そうだな。行こう!』
再び足を進め、森から出ることを目指した。だいぶ奥地に来てしまったため、簡単には出られない。
また、痕跡が残っても問題ないように、あえて険しい道を選んでいる。これで出力も、基礎運動能力もない機体は簡単には突破できない。
丘を越えて、洞窟をぶち破り、崖を降りて、地雷原を踏み散らかし、森林のより深いところを歩くこと一時間。なんとか森から出ることができた。幸いにも地雷は一個も踏まずに終わった。
超ラッキーだ。普通じゃ有り得んからな。
「やっと森から出たな。それじゃあ飛ばしていきますか!」
『当ったり前よぉ!!』
快くスラスターを展開し、大空にかけた。太陽はすでに真上にない。
その後、敵にも出くわさずに、スムーズに進んだ。大空をしばらく飛んでいると、海に出た。おそらく太平洋だろう。さあ、ここから長旅の始まりだ。
それにしても心地いい。風がなくとも風を感じる。
大きな雲の下で泳ぐように飛ぶのは楽しい。
しばらく楽しんでいると、前方に海上移動要塞が見えた。形から見てキング型海上移動要塞だと思われる。
落としにかかるとしようか。
「ローマ!行くぞ!!」
『分かった!』
一気に高度を落とし、強襲しようとした。
しかし、攻撃してこない。どういうことだ?
一応甲板に着陸して見ると、多くの民間人が出てきて、私たちの足元に押し寄せた。
「ローマ、これどういうことだ?」
『きっと逃げてきたんだろう。二社連盟の政策にあきれてな。』
「ああ、まれに言う漂流民間人か。」
私はコックピットから顔を出すと、中から代表のものが出てきた。
「どうか、あなた様方の企業へ行かせてほしい!あなたたちはインディバル・パーシュート社なのでしょう?」
私は大佐として、あるべき行動をとった。海洋司令部に条件付きで民間輸送船舶の申請を行ったのだ。これで今日中には来るだろう。
「そうですが、あなた方を今連れていくことは見ての通りできません。申し訳ございません。ですがご安心ください。この後海洋司令部の方々があなた方を迎えに来ます。それまでこの場所で待機していてください!」
「おお!ありがとうございます!ありがとうございます!」
『これでいいのか?本当に。』
「ああ、通信機器の貸し出しや、連絡は絶対に取らせないことを言っておいた。仮にスパイだったとしても問題ない。海洋司令部は司令部の中でも最高レベルの警備だ。生半可な連中に負けるほどやわじゃない。」
『だといいがな。』
そうして私たちは再び、長い道のりに戻り、旅を続けた。
すでに日が暮れ始め、真っ赤な太陽が沈んでいった。
延々と続く青く透き通った海を上を飛び、雨に降られることもなく、荒い波に差から羅うようにして飛んだ。ちなみに、なぜわざわざこれだけ遠い道を行くかというと、大西洋側の防衛はかなり厚いからだ。
さすがに死んでしまう。それでは困る。ということで、わざわざ絶対にありえないと思っているルートで行っているわけだ。
しばらく今のうちに遺書でも書いてブラックボックスに入れておこう。
「ローマ、今のうちに遺書でも書いとけ。万が一死んだときのことを考えれば書いておいた方がいい。」
『大丈夫さ。死なずに帰れば問題ない。だがフラグにもなりかねないから書いておくよ。ま、死ぬときに口頭で言う。』
「へっ、そうか。なかなかな気合があるな。」
私はメモ帳をちぎり、数文字書いたものを遺書としてブラックボックスに入れた。
機体の最終自己診断をして、異常がないことを確認した。さあ、これから最も大変であろう仕事の始まりだ。まもなく大陸に侵入する。
火が完全に暮れて月が現れた時、例の現象が発生した。
そう、機体がうっすら光りだしたのだ。
「ローマ!これがあいつの言ってたアウトレイジの発光じゃないか?」
『言われてみれば光ってるな!まさか明日がその日なんじゃないのか?』
「そうだよな!」
少しうれしいニュースが流れた時、海岸線が見えてきた。もう宇宙港はすぐ近くだ。ここまで来たらイグニッション・スラスターで侵入するとしよう。
ローマは先にハイパーパーパスで飛んで行かせる。
「もうすぐそこだ。先にハイパーパーパスで飛んで行ってくれ。」
『分かった!それじゃあ先に行く!!』
彼は真っ青な青い炎と波動を放って飛んで行った。
さあぶっ飛ぶとしようか。イグニッション・スラスター出力リミッター解除!最大出力!!
スロットルを一気に開けた。
ドゴーン!!
ビックバンのような音と共に空を裂き、空をゆがめて突っ込んだ。極めて光に近い速度だった。
次の瞬間、もう宇宙港が目の前にあった。ローマがすでに宇宙開発用の設備を破壊していた。私も急いで太刀と刀を抜き、一気にイグニッション・スラスターで加速した。
居合切りでひたすらに護衛システムを真っ二つに両断しながら施設も破壊する。完璧だ。
「ローマ!先に地下設備の破壊をしててくれ!あとから行く!!」
『分かった!』
彼は近くの地下の入り口から地下へ行った。スラスターの唸りが響いてよく聞こえる。
残りの設備はひたすらみじん切りにしていった。敵も、施設も、何もかもを切り刻んだ。さらには、弾薬保管庫も見つけたため、ここもぶっ壊した。しばらくは弾不足になるだろう。
しばらく続けていると、引火したファイアリングが爆発し、あたり一帯が吹き飛んだ。これで地上は終わったな。さあ、地下に行こうか。
ローマの入ったところから地下に入り進んでいった。先にある施設もすべて破壊されていて、もうやることはほとんどない。
長い通路を轟音を散らしながら進んでいると、宇宙港の中央出発着陸用デッキがあった。
隔壁はもう開いていたため、中に入ろうと隔壁から地面を見下ろすと驚きの光景が広がっていた。
倒れて腕がもげたローマのブリッツMK.IIが下に倒れていた。少し右を見るとそれを見下すように大型の機体が立っていた。
だが待てよ?あの機体はまさか…!例の化け物か!
国家解体戦争末期に開発された最強の有人機、アーリータイガー。しかも改修が進んでいたという噂通りだ。すべての装甲、武装が強化されている。
それにその噂ではブリッツの小隊をわずか一機で破壊したようだ。だが、まだ有人機設計された奴だ。友人であることを考えられずに設計されたプロトタイプが、今どこかにあるのだろうか。
だがただ事ではない。ローマを助けなければ。無線をジャッカルして、上空から奇襲をかけた。
しかし、よけられた。あのスピードをよけるとは。
『…!?なんだ!貴様は!まさか、あの悪魔の機体か!やってくれたな!わが社の部隊をよくも!』
「すまんがここで果ててもらおう。私はこいつを助けなきゃいけねぇ。」
『そうか。ならいいだろう!貴様が私を倒せればそいつを助けてもいいとしよう。だが、負けたら死んでもらう。』
「上等だ!」
太刀と刀それぞれを構え、敵の胸元に向けた。相手も回収された大型エネルギーキャノンを私に向けて構えた。
『じゃあ、始めるとしようか!』
相手は発射体制に入った。その間に一気に右から回った。イグニッション・スラスターの加速についてはさすがにこれまい。避けるのが精いっぱいだろう。
高出力な青い閃光が私の背中をかすりそうでかすらずに通過した。
しかし極めて出力が高い。当たれば致命傷だろう。
ただ、相手の武器は長銃身だ。切れそうだな。
次に撃とうとした瞬間に、一気にイグニッション・スラスターで加速し、敵の懐に潜り込んだ。
シャッ!!
刀で敵の銃身を斬った。また加速し、今度は太刀で勝負をかけた。
相手のレーザーに向けて刀を入れると、そのままレーザーを切って、敵の肩から一気に胴体に切れ目を入れた。
しかし、次の瞬間、妙な違和感と音とともに右腕の肩をレーザーが通った。
ザン!!
くそっ!!復元性能は相手の方が上かっ!!
そのまま太刀を構えていた右腕は零れ落ちた。さらには、右のイグニッションスラスターがいかれた。
『まさか自分から近接に飛び込むとはな。まあ、それしかなければ仕方ないだろう。』
「ああ、それしかない。だがそれに関してはこっちの方が得意だ!それに、次は同じことにはならない。」
『そうか。それじゃあまだやろうか!』
彼はリミッター解除とともに、機体の出力を大幅に上げてきた。そして速度に任せて突進してきた。
くそっ!左手でシールドに展開し、それを防ぐ。だが、このままではまずい…!出力で負ける!
待てよ、落ち着け!
シールドから一気に出力を放てば距離をとれる。その間に太刀が取れれば。
よし、やってみよう。
オーバードライブ起動!!出力メインに振り切り!!シールドヴァッシュ!!
一気にシールドから衝撃波を出して、相手がひるんだ隙に生きているイグニッション・スラスターで加速し、そのまま太刀を取った。
左手がうなりを上げてるが、耐えてくれ!!ブリッツ!!
また相手は突進してくる…!ならば…
一気にサーベルを振りかざしてくるところをクイックブーストで右に避ける!
今だ!!隙ができた!!
横から胴体に向かって刃を振るった。
ザシン!!
一気に相手の胴体と腕を切断したが、こちらも足の腿のメインサスペンションにサーベルが食い込んだ。潤滑オイルが漏れだしてきた。
それでも落ち着いて、最後の一言を放った。
「終止…」
これで敵を仕留めた。きっとローマとも戦っていて摩耗してたであろうはずなのに、これほどの力を誇るとは。
驚きしかない。
『さすがだな…貴様がさっき言ったとおり…そいつを助けていいぞ…』
息絶えたようだ。
よし、急いでローマを助け出そう。
足のアクチュエーターが死んで、左手しかないブリッツでローマの機体のコックピットがある胴体を担ぎ、上昇して出口から地上に出た。
破壊された宇宙港を前に、私はコックピットから降りて、緊急外部アクセスバーからアクセスし、ロックを無理やり解除してローマのコックピットをこじ開けた。
中には血だらけのローマがいた。
「おお…エース…助けてくれてありがとよ…負けちまったよ…」
私は同じ過ちを犯さぬように、最も出血しているところから順に止血していった。
今度こそ助ける。
「今度こそ助ける!ローマ!耐えろっ!」
「すまねぇ…捕虜にならないために毒を飲んだ…もうそろそろ死ぬ…遺書はブラックボックスの中にある…そして一つ言わせてくれ…」
おい、そんな終わり方はなしだぞ?ローマ!そんな馬鹿なことが許されてたまるか!
「今本部が攻撃を受けている…急いで向かってくれ…言わせてもらうが…死ぬなよ…!」
彼はこっくりと息絶えた。非常に和やかな顔だ。だが、強い思いも感じる。
ローマ…!
涙が止まらない。
だが、進まなければ。私の命が危うい。
ローマ…!
死んでいった奴らのために絶対に何があってもあいつらは…
許さないっ…!
いかなる手段をもってしてでも根絶してやる…!
まずは本部に行かなければ…!
涙を薙ぎ払い、決心した。
そしてコックピットに戻り、苦しそうなブリッツとともに呼吸を合わせた。右手はなく、左足の損傷も激しく、歩けるものではない。さらにはイグニッション・スラスターの右の一番、二番がいかれた。
かなりまずい状況だ。ジェネレーターに出力が逆流すればまずい事態になりかねない。
仕方なく私は右腕、右胴体スラスターのユニットを丸ごとパージし、もう左だけを残した。
もうやるしかない。
頼んだぞ、ブリッツ。
それにこたえるように、スラスターを開けると、いい反応を見せた。
ただバランスをとるためにオートマチックミッションが使えない。久しぶりのマニュアル変速が必要だ。
緊急用の設定画面からマニュアルに変更し、変速した。脚部推力を上部のスラスターに預け、残りはメイン左に振った。
さあ頼んだ。
イグニッションキー解錠。手動操舵よし。ミッションよし。
じゃあ行こう。
座標入力による指定着陸もできない。だが計算機能と管制タイマーは生きている。また、出力速度表も使えるため、それも使った。
この出力から出せるのはおそらくマッハ21.5。それなら大体1.17から1.18秒の噴射でいい。
誤差は許されない。
だが計算上では問題はい。
方角、角度もよし。
その場で高度を上げて、十分なところまできた。それでは行こう。
そしてブリッツを信じて一気にスラスターを開けた。リミッターも死んでるからもちろんフル出力だ。
出力が一気に解き放たれ、そのまま身を任せた。
空を裂く音ともに一気に飛んだ。しかし、ここでまた思わぬ事態にぶつかった。
出力がシャットダウンされ、一気に減速し始めたのだ。
このままでは不時着だ。
緊急予備電力に切り替え。全セーフティーロック!
フラップをかけて、一気に減速する。
見えた!!本部だ!!
地平線の向こうに見える基地の管制塔が見えた。しかし、様子がおかしい。すでに戦闘は終わったようだ。
誰も戦っていない。
その後、左足を犠牲に一気に着陸した。潤滑オイルがどんどん漏れてきている。が、少し経つとそれももう止まった。
よくやってくれた。
私は急いで本部のデッキへ走った。真夜中だった。
がむしゃらに走り、デッキへ急いだ。
もうこれからどうすればいいのだろう。
みんなの気配がない。そんな残酷な…
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