エピソードVIII エンデュランス・ホール強襲夜行作戦 前編

超深部採掘用巨大空間、ホール。この世の中にはインディバル・パーシュート社の掘った、メリウェザー・ホール、パーシヴァル社の掘った、ペイルニア・ホール、

そしてサイクロン社の掘った、エンデュランス・ホールがある。すべて深さ七千五百メートル以上を誇り、アームドスーツのジェネレータを作るうえで欠かせない物質や、鋼鉄などが採れる。

もしそのホールがなくなれば、企業側としては大打撃となる。しかし、そのホールの周りには計り知れぬほどに強固な防御線と、膨大な設備がある。よって破壊は困難である。

しかし、そのホールが破壊される兆しが表れる。そう、あの四人に。


帰りのキャリアーに運ばれて、支部についた。ブリッツの無残な残骸が輸送されてきた。中にはまだトラファルガーが乗っているようだ。

「トラファルガーにお悔やみ申し上げます。」

その支部の管理代表が言葉をかけてくれた。

「ありがとう。」

「こちらで処理させていただきますがよろしいでしょうか?」

「うちのトラファルガーをよろしく頼む。」

そのまま彼は敬礼し、戻っていった。

「それでよかったのか?」

アルテミスは横から私の肩に手を乗せて聞いた。

「今は泣く余裕がない。」

「そうだな。」

そして彼は左目に眼帯を外した。そこには深い傷が残っていた。

「昔やられた時があって、その時にこの傷を負った。三本のスタビライザーが顔に直撃したんだ。」

そのまま彼は続けた。

「その時、私にこの眼帯を渡したのはトラファルガーだったんだ。」

そうだったのか。私も知らない話だ。

「確か夜行作戦の時だったよな。」

「そうだ。満天の星が輝くいい夜だった。だがそれがこんな日になっちゃあ、笑えないよ。」

そしてそのまま彼は管理人のもとに歩き去ってしまった。さて、ここからまた逆転の一手を打たなっければ、奴らは必ず追ってくる。

私は今のうちに機体の整備をしなくては。左腕はしばらくは破損したままになりそうだ。モジュール式だから右腕部だけを外し、別の機体のものに取り換えた。

以前私が使っていたパーシュート三型のものだ。白に赤色というだけでも違和感の塊だが、何よりも形も相当違うし、適正保証最大射程距離と、近距離戦闘適性が全く違う。ブリッツは総合して高いが、

パーシュート三型は射撃に全振りした構造のせいで、左はライフルだけの運用になりそうだ。トラファルガー。お前がいたら何ていうだろうな。いつも横でちまちま手伝ってくれたのは彼だった。

「エース、取り付け中申し訳ないが、トラファルガーの愛機の左手はどうだ?」

管理人が戻ったようだ。私の機体にトラファルガーの機体の左手を付けるというのか?

「彼の機体は摩耗が激しい。部品の再利用が限界なんだ。せめて使ってやってくれないか?」

私はトラファルガーの機体を見た。ボロボロでほとんど黒くなっていたが、全部洗えばきれいになりそうなくらいだ。しかし、腰のジェネレーターはかなり厳しい状態だ。

そりゃあ、それはそうなって当然だろう。

「分かった。使ってみる。」

「ああ。チューニングは任せてくれ。」

そういって管理人はトラファルガーの機体に走っていった。

「トラファルガー…」

私は自分の機体のハンガーから降りた。そして自分の機体を見た。欠損した左腕は少し悲しい雰囲気だった。

ああ、もしあの時に動ければ…

”また自分を攻めるのか?”

ローマの言葉が頭の中を駆け巡る。

そうだ。また終わる日までは進み続けよう。トラファルガー。いつか絶対に終わらせてみせる。

「ブリッツは移動になりそうだ。この支部では調整も含めてそちらの機体に合わせるための分野がない。

。次のミッションではエンデュランス・ホールを強襲してもらう。そのため、支部も移動になる。

つまり、君たちとはここでお別れだ。」

管理人が後ろからやってきてこう言った。

「そうか。次はどこらへんだ?」

「第四支部だ。ローマ、マーキュリーが務めている場所だ。」

「了解した。」

そのまま私は航空機及びキャリアー乗り場に向かって歩き出した。

「もう行くのか。まあ私は機体で後から追うがな。」

「そうか。アルテミス。じゃあ現地で合おう。」

さて私は支部においてあるドラグーン型戦闘機で飛び立つとしよう。私はそのままコックピットに乗ろうとした。その時だ。

「エース!」

管理人だ。右手にはトラファルガーがずっと身に着けてたネックレスがあった。

「トラファルガーからの”遺言”がここにある。持ってけ。」

そういって銀色のネックレスをこちらに投げた。美しい光を放って、私の持っていた金色のネックレスと重なった。

「そうか。ありがとう。行ってくる。」

そういって管理人は私を見守った。

「こちらドラグーンバイエース。出発する。」

『管制塔了解。電磁カタパルトアンロック。システムオールクリア。射角上障害物なし。発信まで残り十秒。トランスミッションを巡行に移行せよ。』

「了解。」

そのままスロットルを吹かした。行くぞっ。

『発射!!』

次の瞬間、マッハで射出された。あとはこのまま第四支部にい行くだけだ。

さて、あと数十分くらいだろう。オートパイロットにして待つとするか。

そして巡行していると、森の上空に入った。その時だ。何か輝くものが見えた。

「何だあれは…」

私は手動操舵でそのまま森の上空にから下に降りて確認しに行くことにした。一応ここは安全が確認されているゾーンのはず。

そしてそのままホバリング飛行で降下して、地面に着陸した。それにしてもうっそうとした森だ。ここ以外に着陸できないほどだ。

そして先ほどのものがあると思われる場所に行った。そしてそのままアサルトライフルを肩にかけて歩いていった。いくつも穴があったり、木の根っこが絡み合う。

そんな中進み続けて一キロ程度進むと、例のところについた。小さなコンテナに旧式のハッチがついていた。おそらく放棄された研究実験施設だろう。あのハッチの構造からしてうちの会社みたいだ。

なら変なものが仕掛けてある可能性は低いが、侮れない。何せ今はすべての地域が戦場だからな。下手したらこれも罠かもしれない。

さて、ハッチのロックを解除して中に入ってみよう。

そして中に入ると衝撃的なものがあった。

旧式のアームドスーツだ。おそらく第五等級ものだが、足がおかしい。三機しか報告されていないブレード脚の機体のどれにも属さない。

第四のブレード脚の機体。

ありえない。また、装甲部もアウトレイジと全く同じ光沢を放っている。

私は動揺したが、息を深く大きく吸った。

そしていろいろな書類や、アクセスできるコンピューターを探したが、ほとんどがいかれてしまっている。

しかしそんな中、興味深いレポートを発見した。

『新物質利用及びブレード脚型対近接戦闘試作機体フロストバイトについて。

新機体を現在計画しているが、全くうまくいきそうにない。ストラディヴァリウスもまもなくできるというのに、この研究をする意味はあるのだろうか。

まあいい。そんなことは置いておいて今回見つけた新物質についてだ。こいつは白い光沢を放ち、恐ろしい強度だが、加工がなぜかしやすい。

あとさっき間違えてバッテリーと細いその元素を使ったパイプを接触したら、収縮したことから、収縮性もある。ただ、ここで取れる量は極めて少ない。

これをブレード部に使用しよう。装甲部にも薄くコーティング程度に貼ってみよう。』

まさか新物質ではなかったのか。仮に新物質だとしたら同じ性質を持つ別の物質…

続きを読もう。

『さて、そのことはいいとしよう。今回の機体のコンセプトは近接戦闘のみに焦点を当てた機体だったはずだ。そのため、頭部を冷却版にして、冷却効率を高めたうえ、

ボディーを背部スラスターと一体にした。さらには反動制御を捨てた代わりに恐ろしい適合力を得た腕部に、積載量を極限まで削ったことで、軽量長型中間逆関節ブレード脚にすることに成功した。

ただ、あまりにも近接すぎる。これでは適合パイロットがいないかもしれない。』

そんないかれた機体は初めて聞いた。そしてそのレポートをもとのところにしまおうとしたとき、何かを踏んでしまった。

これはまたレポートのようだが、ひどく破れている。

読んでみよう。

『導きの…いて

これはすごい。こんなのは初めてだ…物資が共鳴して…さか、今日の月の周…関係が?黄金の三日月が光…ってから数十分は共鳴が確認され…らには…ロットは死人に…という。

この時間帯か…数時間はすさまじい出力…になっていた。こ…を導きの月光と…称する。』

これはとんでもないものを見つけてしまったようだ。急いでありったけの書類とレポート、データディスクを引っこ抜き、近くの箱にすべて詰めた。

そしたらドラグーンには乗らない量になってしまった。どうすんだこれ?

あっ、

私はドラグーンをもとの支部に戻らせ、私は機体をいただくことにした。幸いにもプロテクターとアンロックキーは機体の整備用具の中にあった。

私はラダーをのぼり、腰の後ろ部分に荷物を詰め込んだが、ぎりぎりだった。そしてコックピットに入ってみると…

「なんじゃこりゃ…」

そう、私のブリッツの前にもともと乗ってた機体よりもさらに古いのだ。だからディスプレイはまだしも、操作系が全く整理されてないため、そこら中に主要パイプがある。

おまけに狭いったらない。計器類までもデジタルではなく、必要最低限のものしかない。とりあえず設定を探すが、どうにもデータディスクを出さなければならないようだ。

まあいい。ここに来るやつなんぞいまい。またコックピットを降りて、頭部にあるデータディスクを抜き取り、降りて近くのパソコンにつなげた。

なんだこれ?本当にアームドスーツか?

リフレクターはおろか、姿勢安定用バランサーもない。おまけに出力調整は三段階。限界不可能力すらわからない。なんだよこれ…

とりあえず、自分の知ってる限りの調整を行った。ただ、この機体は近接以外の必要なものがない。無論、射撃管制システムもない。

近接のブレードアシストはあるくせに何だよ。なんでつけなかった?

私は頭を抱えて足を投げ出した。そして機体を見ると異変に気付く。

は?

腕に衝撃吸収用ダンパーとスタビライザーに当たるパーツがない…

どうなっているんだ…

付ける穴も見当たらない。多分これは設計ミスだろう。さすがに旧式だからこういうこともあるんじゃないのか?

プログラムを保存して、設計図面を開く。するとびっくりするような事実がそこにはあった。

設計ミスじゃない…

そうだ!!最初からない!!なんて潔いのだろう!!こんな機体は初めてだ!!やったね!!

…なんて言ってられない。これは相当まずい。まともに銃撃てないぞ?あんな設計をするなんて、行かれた技師がいたもんだ。

もういいや。なんでもよくなってきた。

そうやってまたプログラムを組むこと十分…何とか組みあがった。ラダーをのぼり、頭部にディスクをはめ込む。そうすれば完成だ。

そしてまた少し降りてコックピットに乗り込んだ。やっぱり狭い。いったいどうなってるんだこいつは?

今年で私も三十過ぎだが、こんだけ狭いコックピットは初めてだ。スタビライザーと肩がぴったりだ。とは言えども操縦できることに変わりない。この機体がいかれていなければだが。

その後、キーを入れてエンジンスロットルの回転数を合わせると、ジェネレーターからの力強い響きがコックピットを走った。

こいつはすごい。ブリッツよりも強い唸りだ。まるで獣だ。

その後、ハンガーデッキに搭載してある武器を自動取り付けした。

四つの武器があるらしいが、どれも近接武器だ。舐めてる?戦闘を?

両手にに特大物理パルス高レーザーブレード「櫻炎」。こいつは簡単に言うと、相手を切るのではなく、相手を大型物理ブレードで殴って装甲を壊して、壊した瞬間強烈なパルスにより相手を内部ごと壊す。

いわゆる“狂武器”だ。さらに両肩には短距離優先ニードルランチャー「月光蝶」がついていた。こいつはひも付きのニードルを飛ばして対象にさしてそのままウィンチを巻いて近接する補助武器だ。

これ大丈夫か?不安以外の何物でもないのだが?

まあいいでしょう。とりあえず飛び立つとしよう。

頼むぞフロストバイト!!行くぞ!!

そうしてスラスターを吹かした。すると、さらに甲高い音がコックピットを暴れまわる。後ろからの力強い押しは、普通では考えられないものだった。

推力、軽さ、すべてが未知のものだった。ただ、ブリッツと違うのは別に安心感も、安定感も、乗り心地もいいわけではない。何ならガラクタみたいで壊れそうだ。

でもすっごく楽しい!!この加速と反応はたまらない。体のように動くのではない。機械らしく、すべてが重なり合うような感触だ。素晴らしい。

こいつにトラファルガーが乗ったらあいつ、喜んだだろうな…

さて一気に加速してみよう。

私はスロットルを全開に開いた。その時だ。

前回にした瞬間に一気に後ろの推力が強くなり、まるで弾丸のようだ。

パイロット保護機能すらないから強烈なGが私を襲ったが、運がいいことに、物理エネルギー吸収ダンパーはついていたようで、失神せずに済んだ。

それにしてもこの反応の仕方は異常だが、扱いきれれば最狂になる。何よりもこの機体に乗る感触を私は気に入った。ブリッツはしばらく腕部調整などで居なくなる。

その間は別機体になる予定だったが、私はこいつに乗る。

現在の速度はマッハ5だ。ブリッツでさえもマッハ3.5が限界だから、速度の差は明らかである。これもまた技術発展の要ともいえる抵抗力反転装置のおかげだ。

いくら速度を出してもこの装置により、その一定以上の抵抗をいなして、機体そのものに大きなダメージを負わないようにそらす装置のおかげだろう。

そしてまたスロットルを戻し、通常巡行に入った。しかしその時、レーダーに敵影が映った。おそらく熱源から推測するに第四等級一機と第一等級四体だろう。

肩慣らしにちょうどいい。蹴散らすとしよう。相手の部隊の識別はうちのものではない。上空から機体を目視で確認すると、おそらくサイクロン社のハリケーン七型だ。

重量機で、高火力をたたき出せる機体だ。しかも射程も長い。また、その護衛機はアーリー・パーシヴァルMk,VIだ。こいつらもまた遠距離支援用みたいだな。

じゃあ、行きますか。トラファルガーの敵ついででもあるからな。

まずは無線をジャッカルした。

『上官、昇進おめでとうございます!!』

『ありがとな。これからも頑張らなければいけないな。君たちを生き残らせるのが俺の役目だ。』

相手は上官か。捕虜にでもすれば大きな戦果だ。こちら側が知らないことも話してくれるだろう。

それじゃあ参ろうか。スロットルハーフオープン!フラップ展開!急降下!

『レーダーに敵影です!!』

『どうやらお客さんみたいだな。弾丸でもてなすぞ。』

やれるもんならやってみろ。このフロストバイトを使うのは初めてだが、行ける!こいつにはその才能がある!!

「すまんな。私は君たちを排除しなければならない。世知辛いがこれも戦争だ。あとのことは体に聞くとしようか。」

『俺の部下は絶対に渡さないぞ。おまえらなんぞにはな!!』

言ってくれる。昇進する理由もわからなくないが、やらなきゃいけない。

そう思っているうちに金の閃光が私に飛び交う。ただ、圧倒的ともいえるクイックブーストの速さだ。当たらない。

さてと無機反転!一気に着地!!

そして一気に地面に着地し、そのまま横へクイックブーストした。

近場にいる雑魚にワイヤーを刺した。

『何だ!!あの武器は!?』

そして一気に接敵、背後に回ってブレードをお見舞いした。

するととんでもない。当たったところにはもうすでにクレーターができている。

『うわぁ!!』

『脱出しろ!!くそっ、相性が悪いか。』

どんどん銃弾が飛んでくるが、間合いを詰めつつクイックブーストで避ける。

ダンッ、ダンッと響き渡るクイックブーストはまるで獲物を借る虎のように鋭いものだった。来る弾丸をブレードで薙ぎ払い、そのままブレードをチャージ!!

ガタン!!と音を立てて一気にブレードが伸びる。そしてブレードの周りには放電によって生じた雷がバチバチしている。

その状態で固まっているところに近づき、一気にブレードを横に振った。

ザン!!!!

まっすぐで弧を書くように金色の斬撃が響き渡る。

一気に相手の部下を蹴散らした。残るは上官だ!!

『よくも俺の部下をっ!!なんて強いんだ!!化け物か?』

そのまま一気に間合いを寄せる。

『だがやらなきゃならない!俺の部下の仇を取るために!!』

そして相手もクイックブーストにプラズマランチャーで間合いを取った。

いったん私は後ろに引くとそこにはブレードを構えて、突撃する上官の姿があった。

何とも力強かった。

信念を感じる。

『チェェェストォォォォォォ!!!!!!』

その突撃は速かった。ただ、一瞬のスキがあった。

すまないが、これで畳む。

一気に後ろ手クイックブーストで切り返して、ブレードの薙ぎ払う。

右手切上…

左手切下…

右手横居合切!!

最後に締めだ!!

一気にキックで相手の足をつぶしてそのまま、腕部と頭部を薙ぎ払った。

とどめを刺そうと思った時、無線に耳が留まる。

『済まない…お前ら…俺がもっと強かったら…』

何だ?この感覚は?

この時、私はどうしようもなかった。この上官を殺すことは私にはなぜかできない。そしてどこか自分と重なり合う。

『済まない...』

その声がコックピットに響く。私はとどめを刺そうと思った櫻炎を下ろした。

「申し訳ないが、私があなたを殺すことができない。済まない…」

『いやいいんだ。俺が弱かったから彼らは死んだ。』

『でもいつかは敵を取るっ!!俺がたとえ死んででも!!絶対に強くなったらこの手でお前を殺す!!』

衝撃的だ。強い信念と、威嚇を感じる…

『絶対にだ!!』

最後の一言は最も鋭い刃だった。

私はそのまま背を向けて、また元の軌道に戻った。

“俺がもっと強かったら”か…

同じことサンダース隊長が亡くなった時に思った。

自分の強さが足らなくて、一歩踏み出せなかったあの後悔と屈辱、無力感は痛いほどわかる。だが、それでも努力しようとする姿勢…

上官にふさわしい。

またスロットルを開けて私は基地に急いだ。

ただ、何かが私を引っ張る。何だろうか。

だが、急がなければならない。行こう。

スラスターを吹かし、いち早く基地に向かった、この後の大作戦のために。

「こちらエース、新機体での着陸の許可が欲しい。」

『こちら管制塔。許可する。当初の予定と大きく違うようだが、一体何に乗ている?』

「第二世代ブレード脚機に乗っている。」

そのままカタパルトに着陸する予定だったが、どうやらその装備はなさそうだ。おそらくこのままブレードごと着陸するのだろう。いったい誰がこんな鬼才な設計にしたんだ?

ブレードと金属が削りあう。一気に着陸した。

『途中、敵勢力との交戦があったようだな。単機ではあまり挑むな。お前が死んだらどうしようもない。』

「そうですね。次からは気を付けます。」

予備支部に機体を駐機させ、ブリーフィングに向かう。するとそこには見慣れた姿があった。

「おおっ!エース!よく来たな。トラファルガーは残念だったな…」

「もうその話はしないでくれ。ローマ。」

「二人ともしょげてないでとっととブリーフィングに向かおう。勝手からトラファルガーの話はしよう…私も残念とは思う。」

「そうだな。行こうか。」

私達はブリーフィングをする会議室に急いだ。今回の作戦の規模は全く違う。相手の主要施設の一つをつぶす戦いだ。かなり苦しい試合にはなると思うが、やるだけの価値はある。

それに、トラファルガーの仇でもある。取るものはしっかり取らなければな。それに、今ブリッツは改修に入ったようだ。しばらくはこのフロストバイトで頑張るとしよう。

そして、ブリーフィング室にて多くの部隊とともに、ここの支部の社長の言うことに耳を傾ける。

「では、ブリーフィングを始める。今回はサイクロン社の掘ったエンデュランス・ホールを破壊する。これまでとは規模が違う作戦だ。それぞれが奮闘し、破壊することを祈る。

今回は三日に分けて行う。初めに、防衛部隊の掃討、および敵の広域バリアの破壊だ。そして次にファルコンズには内部に入り、施設の稼働するために必要なジェネレーター、変圧器、熱交換室

を破壊してもらう。また、同日にホール上部の隔壁や防壁はもちろん、相手の鉱山道も破壊してもらう。そして三日目。ここが重要でかつ最も難しい地点だ。全部隊で下まで潜り、対空防御装置をすべて破壊してもらう。

ここでなぜ難しいかというと、この周囲は彼らにとって最重要区画ともいえるエリアになっている。それを守るための手段だ。簡単には突破させてくれない。第五等級がざらにいる可能性すらある。

そして制圧が完了次第、核爆弾を投下する。厳しい戦いになるが、これをやり抜けばこちらの勝利は近くなる。がんばるぞ。」

さらに今回はどうやら警備兵以外を全員出動させるようだ。陽動作戦に加えて夜間に行うこの作戦、失敗はできない。

ブリーフィングが終えると、ホークモン、サム、フォーデンの三人と一応何をするかを確認した。

「君たちは私たちが後方で蹴散らしている間に、ほかの重要な守備部隊を壊滅させてほしい。」

「わかりました。そう伝えておきます。」

「気を付けてかかれよ。多分あいつら何か仕掛けてくるぞ。」

分かっているさ。それも加味しておいた上での話さ。どうにかする。

私はフロストバイトへ急いだ。そして全員と合流し、雑談した。今回の初日はブリッツではなく、フロストバイトで行くしかなさそうだ。

どうにも改修が間に合っていないらしい。どうにかできればいいんだが。そうにもいかないようだ。間に合わないだろう。

「エースの代わりの機体はだいぶすごいことになっているようだな。なんだよあれ、ブレード脚の別タイプで、第二世代機なんて。とんだいかれた機体だな。」

「そうだな。マーキュリー。乗ってみたところは機動力と近接の鬼だ。ただ、最悪なことに、こいつ、射撃武器を搭載する予定はさらさらないようだ。」

「とんだいかれ方だなコンチキショウが。ちょっと乗ってみたいもんだな。」

「死ねるぞ。」

そしてとりとめのない話をしていると、支部長が来た。なんだろうか。

「支部長、どうされましたか?」

「ブリッツの件だが、トラファルガーは本当に残念だった。あの機体はリサイクルに回す。今後、ブリッツMk.Ⅱにすることを予定しているようなんだ。今回の作戦はそのデータ集めみたいなもののようだ。

がんばってくれよ。」

「そ、そんな事初めて知りました!いつの予定なんですか?」

「おそらくあと三か月後だ。遅れる可能性も十分あるが、急ピッチで進める。」

「了解しました!」

「そうだ、あと、アウトレイジについて分かったことがあればよろしく頼む。」

ん?待てよ、私はさっきフロストバイトで帰る前にデータディスクと書類入れたよな?

あちゃーっ…出し忘れた…

ハードディスクは無事かな?…

「し、支部長、あのさっきあの機体を改修するときに、おそらくアウトレイジについてと思われる資料とハードディスクをもつけたんです。しかし渡し忘れていたので、今渡してもいいですか?」

「もちろんだ。失敗は誰にでもある。次に生かしたらいいさ。」

「ありがとうございます。ではすぐに持ってきますので、少し待っててください。」

「分かった。」

猛ダッシュで機体に上り、そのままトランクを開けて箱を下ろす。そして中の書類等があるかをすべて確認し、再び猛ダッシュで支部長のもとへ向かった。ギネス記録出せるかな?

「こちらです。」

「お疲れさん。ありがとう。こちらで分析させてもらう。」

「よろしくお願いします。」

それにしてもすごい機体だ。何の計画によって作られたんだ?全くわからない。

私はまた機体を見た。シルバーがかったボディーは美しく、ブレードのしなりが効いている。謎だが美しい。

さて、作戦に備えるとしよう。私はまたデッキに行き、支部にある道具を集めて調整を行った。ベストな調整は存在するはずだが、まだ見つからない。前のパーシュート三型も見つけるのに三年かかった。

それくらい奥深く、何通りもあるのだ。

そして数時間が経ち、出撃に備える時間となった。月光の明るく光る夜だ。いったい何が始まるんだ?

『各ファイターに次ぐ。次の作戦にて出撃する部隊はハイパーカタパルトへ移動せよ。』

とうとう来たか。三番デッキからカタパルトにアクセスしてそのまま行く。上層に上がり、カタパルトのセッティングを済ませた。

そしてまた風となって夜空をかける。光沢を出しているボディーはまるで弾丸だ。

「アルテミス、キャノンの準備はいいか?」

『任せておけ。ばっちり威力は最大にしてる。』

『こっちもだ。割り込んですまんな。』

「いや問題ない。マーキュリーはどうした?」

『先行隊でさっさと防衛部隊を破壊してるさ。彼のことだ。なんとかなる。』

『ブリッツは明日のために今改修中だってな。まあ先に言うが、オプション装備は外れて、その代わりにガトリング砲十六門を搭載するとさ。』

「は?」

『マジだ。』

何だよ十六門のガトリングって。聞いたことがない。まあいい。あの出力なら何とかなるだろう。

そうしているうちに戦いの火が見えてきた。ストラディヴァリウスの純白のボディーとソーラーナイトのパルスブレード、コーマットのライトアップカメラアイがまぶしい。

そしてその前方にはマーキュリーが近接で制圧をしていた。とても順調に見える。

『遅かったな。花火はもうそろそろ終わるぞ?』

「また打ち上げればいいのさ。やるぞ。」

すさまじい大群で全部第四か第五等級の機体だ。なんてこった。なんだこの地獄は?

ブレードを変形し、ひたすらに低い姿勢で相手のジェネレーターを切り刻んでいった。

そしてまた戦闘をしていると何年か前に聞いたことのある声を聴いた。

『くそっ!!サイクロン社の機体がここまであっけなくやられるとはっ!あの頃の若い大差を思い出すな!』

『そうね。今のインディバル・パーシュート社はすさまじいからね。あの白い死神とか特にね。』

『言ってないで急がないとやられちゃうよ!お姉さんがサイクロン社で行方不明になったらしいから心配だなぁ。』

『行ってられる時間が今はない!!とりあえずやるぞ!!』

あの運動祭で会ったガロー二、セレヴェ、そしてエリシアじゃないか!?全勢力で守らなければならないほどに重要な施設だからな。エンデュランス・ホール。消えたらおしまいだ。

まあでも彼らには思い出がある。エリシアの無線をジャッカルしてみようか。

「エリシア!!こちらエースだ!覚えてるか?」

『え、エース!?あの運動祭であったあの人!?ハーバリヴィアはどこか知ってる?』

「ああ、内の部隊に入ったよ。説得したらこっちに来たよ。君たちはどうだい?うちに来るか?」

『それは良かったです。でも、今は敵同士ですから。仕方ありませんよ。』

「一人を捨て駒と同然に使う企業に居たいならそれでいいと思う。だが、君はそこに居るべきではない。もっと大切にされるべきだろう。」

ほかの機体を制圧し、残りは彼女らだけになった。さあ、交渉の時間としよう。ほかの機体には攻撃中止の指示は出した。

『それは企業の侮辱になりかねませんよ。エースさん。』

『ま、まさか、お前、エースか?』

「そうだよガローニ。久しいな。」

『トラファルガーさんはどうしましたか!?』

「セレヴェ、まだ気にしていたようだな。残念だが、ある作戦で国家解体戦争の遺産にやられてしまった。この話はしたくない。私のせいでもある。」

『そうでしたか…』

『エース、頼むから引いてくれ。頼む。』

ガローニは祈るように私に言うが、それはすまないができない。

「すまない。引くわけにもいかない。トラファルガーのためにもこれを終わらせなければいけないんだ。」

『…そうか。』

そして話し合いが進む中、コーマットが歩み寄ってくる。そして私の肩にメカメカしい金属の音を立てて手を置いた。そして無線をつないだ。ベテランは何かが違う。

『すまないな。皆の衆。割り込ませていただくが、君たちが思う以上にインディバル・パーシュート社は居心地がいい。サイクロン社のような捨て駒扱いもなく、パーシヴァル社のような量産至高でもない。

戦績至高主義だ。君たちにとっては伸びがいのある会社だろう。それに機体も充実しているし、何より飯もうまい。何年も過ごして移動してきた身として言わせてもらうが、インディバル・パーシュート社にきたまえ。

みんな歓迎してくれるさ。』

『あなたは…!?幻のパイロットホークモン!?なぜここに!?』

『聞きたきゃうちに来い。耳が腫れるほど話してあげよう。』

『それはできませんよ。だって…』

そしてエリシアが言う中をホークモンは断ち切って入った。

『大事にされず、思い出も残らずにいつ斬られるかわからない戦場をかけるか?私にはそれは耐えられない。大事にされながらも時に厳しく、優しく、紆余曲折を味わい、戦場に出るほうが断然いいだろう。

あなたはどっちを選ぶ?』

『…分かりました。そこまで言うなら。いいでしょう。そちらにつかせていただきます。』

『分かった。私も行くとしよう。』

『そうね。こんな機会だもの。行くしかないでしょう。』

『分かりがよくて助かる。それでは私はこの型を護衛する。君たちは残りの護衛部隊を頼んだ。』

「了解。」

ミッションを推力重視二:二:四に振り分け。久しぶりにやるなこの操作。ブリッツは常にベストな振り分けにしてくれるからこのギアがない。

さて、残りも続けるとしようか。

夜の月光が輝く中、シルバーの機体は照らされ、青く光る。

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